OEDO[2-6] 人命救助のベネフィット
命に価格はつけられません。「人の命は地球より重い」と言った首相もいたほどです。それはさすがに言い過ぎだとしても、1千万、1億円などと具体的な金額は設定できません。既に亡くなった方に賠償金額が後付けされることはあっても、今を生きる人の命はpricelessです。
防衛費の増額に反対する勢力はいつの時代にもいるものですが、防災費・人命救助費の増額に反対するのは困難でしょう。人の命、国民の命を救う法案に反対する理由は付けにくいものです。これが年5兆円かけている自衛隊費を減額せずに「地球防衛隊」費へ横滑りさせる根拠になります。
しかも人命救助のテクノロジーは、国への経済効果も生み出します。我が国の軍事テクノロジーは、少なからず「武器製造法」や「防衛装備移転三原則(武器輸出三原則)」の制限を受けていますし、国際法的には「武器貿易条約」や「ワッセナー・アレンジメント」により規制されています。
町工場で自由に武器を作って、自由に売って、自由に輸出するなんてことは出来ません。個人が自宅でレールガンを試作してもお縄を頂戴することになります。製造に入る前段階、研究レベルでも日本学術会議「軍事的安全保障研究に関する声明」などで禁じ手にされています。
学者というのは正しいことを言おうとします。憲法学者は自衛隊や安保法を「違憲だ」と正直に言ってしまいますし、弁護士連合会なども追随します。会議のメンバーから降ろされ、自分の立場を危うくしても「学者生命」とやらを賭けて正しいことを主張してしまう非常識な人たちです。困ったものです。
その点、有識者会議のメンバーは、常識を持ち合わせています。常に自分の利益と保身を考えて行動してくれます。安心です。しかもそのメンツは恣意的に選べますから、厄介な学術会議もそのものも「有識者」に選出させようという案が出てきたくらいです(‘23/4/18現在)。
ところが「地球防衛隊」の人命救助テクノロジーとなると、これにストップをかける人はいません。学術会議も反対しませんし、抗議もしません。「デュアルユース(軍民両用)研究」なんて無理な詭弁を弄せずとも、おおっぴらに研究できますし、製造もできます。逮捕されることもありません。
繰り返しますが、日本は地震、火山、水害、放射能汚染などの研究を進めるには絶好の環境にあります。2発も原子爆弾を落とされた上に、自国の原子炉がメルトダウンした国なんて他に例を見ません。核なぞ保有せずとも、原子力は立派に日本のアイデンティティーに成り得ています。
これで「廃炉20年延長」なんて言い出したら、記憶力がニワトリ以下じゃないかと他国にバカにされるところですが、逆にそんな日本が国を挙げて原子力事故の救助や放射能除染の研究を極めたら、国際的な説得力も生まれます。かろうじて世界最高水準を保っているロボット技術も活かせます。
いや、それこそ公費・民費のデュアルスタディーで研究を進めることも出来るのです。世界トップのテクノロジー王国に返り咲くことも可能でしょう。時折「戦争が科学を進化させてきた」ことが、戦争の数少ない功績として讃えられたりしますが、これからは人命救助が科学を進歩させるのです。
もちろん戦争のように捕虜にペスト菌や炭疽菌を接種し、血管に空気を注射するような人体実験はできません。しかし人命救助である以上、医学的には貢献できるはずです。人の命を弄び、無駄に殺しまくる戦争の人体実験より、「地球防衛隊」下の人命救助の方が医学的には有用でしょう。
さらには水害、土砂災害、暴風、豪雪などの過酷な状況で活躍する大型作業機械から、火災、炭鉱、放射能などで人が立ち入ることの困難な環境にアクセスする人型ロボットやドローンまで──。瓦礫の下の命を救う災害救助犬を訓練、育てる部隊も必要になりますね。
有人・無人の人命救助テクノロジーに有犬(?)の訓練技術──温暖化により世界的に災害が増加していくと予測される未来、技術立国日本としての注目を取り戻すチャンスが目の前にぶら下がっています。制限かかりまくりの武器を開発・製造するよりも、人命救助テクノロジーの方がはるかにずっとお得です。
人間というものは忘れた頃にやってくる災害の後になって、防災意識が高まるものです。今後、世界の各地で災害が起こるたび、日本の技術を輸入したがる国が増えるでしょう。時代遅れの軍事開発には今さら中国や北朝鮮が躍起になっていますが、人命救助にはブルーオーシャンが広がっています。
このビジネスチャンスを逃す手はありません。衰退する我が国の産業に、一縷の光を与えてくれるのは「地球防衛隊」以外にあり得ません。日本の周囲には遅れた武力帝国ばかりが連なりますが、我が国は先んじて科学王国へと進化するのです。そそるぜっ、これは!
※最後までお読み頂きありがとうございます。この「地球防衛隊」全体の構想は最初の投稿「OEDO[0-0]地球防衛隊法案──概論」にまとめています。それ以降の章は、この章も含めて、その詳細を小分けして説明する内容になっております。
第一部[1-1]〜[1-9]では「戦争観のアップデート」について。第二部[2-1]〜[2-9]では「地球防衛隊の活動と効用」について。第三部[3-1]〜[3-9]では「予想される反論への返答」について。第四部[4-1]〜[4-9]では「地球防衛隊に至る思想的背景」についてを綴って行く予定です。
敢えて辛辣に、挑発的に書いている箇所もありますが、真剣に日本の未来を危惧し、明るいものに変えたいとの願いで執筆に励んでいます。「スキ♡」「フォロー」や拡散のほど、お願いいたします。批判、反論のコメントも大歓迎です。