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OEDO[1-5]ラスボスは民衆

自分の給料・収入が下がれば少額でも大騒ぎなのに、いつのまにか徴収される税金には無頓着。この心理的矛盾が、防衛費増額の背景には隠れています。もし時給が100円でも、月収が1万円でも下がれば大騒ぎなのに、増税に関しては不満を抱えつつもいつの間にか受け入れてしまう──。

資本家と政治家をやり玉にあげて、軍備解体を阻む障害とその堅牢さをこれまで論じてきましたが、最後に残る大ボスとなるのが、国民です。ラスボスは民衆。手強い相手になりますので2ターンに分けて戦うことになります。今回はその前半戦です。

さも上から目線で「古い価値観から抜け出せない」「感情に動かされやすい」などと論断してきた民衆ですが、かく言う僕もその一人。古くて、感情的で、よく分かっていません。特に税金、年金、保険料──とにかく難しくて。いくら払っているのか、いくら還元さるのか、まったく把握できていません。

しかし、こう言い表したらどうでしょう。毎年少なくとも2ヶ月分はタダ働きをしているのだと。消費税だけで10%。収入全部を消費に回したとしたら年収の1.2ヶ月分を払っていることになります。つまり消費税がなかったら、年に1.2ヶ月休んでも、同じ生活レベルを維持できるということです。その他にも所得税、住民税、自動車税、固定資産税──名前も知らない税金もいつの間にか徴取されています。

しかも課税対象は個人だけに限りません。法人税から関税・とん税に至るまで、企業や業者が支払う分も、結局は給与から天引きされたり、商品価格に上乗せされたりしているのです。こうなるともう計算不可能。優秀な経済学者や国税局職員であっても、自らの納税額を1円単位まで把握できる人は皆無でしょう。

昨年度の話になりますが、国民負担率が47.5%にも達する見込みであることが財務省により発表されました。SNSでは「五公五民だ!」との騒ぎも起こった、まさに江戸幕府の生かさず殺さず政策です。やはりどんなに少なく見積もっても、4〜5ヶ月分はタダ働きしているんじゃないですか。お国のために。

休暇と言えば、GWに10連休を取れたりする優良企業の社員が羨ましがられもします。しかし本来ならば日本人全員が2ヶ月に渡るバカンスだって夢じゃないのかもしれません。欧州人のように──。でも無理でしょう。一度膨れ上がり組み上がってしまったシステムは、元に戻すことが至難の技となるからです。

その経緯はパーキンソンの汎用法則──所謂「支出は収入額に達するまで膨張する」で説明できるかもしれません。政治家や官僚がたとえ誠実に仕事をしたとしても、それは新たな法制度を作り、行政をまわし、税金をせっせと消費することに他なりません。彼らが誠実に働けば働くほど税を消費します。

もちろんそれにより弱者が救済されたり、地方や産業が潤ったりする効用もあるのですが、同時に政権与党との癒着も強くしてしまいます。長期政権が続けばそれは既得権益となって固定化されてしまうので、いくら野党が素晴らしいマニフェストを打ち出したとしても、票を集めることはできません。

ウクライナ侵攻によるインフレ下、さすがに増税は難しいと悟った内閣は、東日本大震災の復興費を軍備にまわすと言い出しました。しかし復興特別所得税もれっきとした税金です。その増額分は2037年まで徴収されることになっています。震災を知らない未来の世代にも負担を強いる魂胆です。

話はそれだけでは終わりません。今回の防衛費増額により、岸田政権はさらに20年延長して復興費を徴収しようと検討しています。2011年の震災なのに2057年まで。南海トラフが来る確率でいうと80%超え。次の復興費も必要となる頃です。国民は延々と徴税が続く無間地獄から抜け出せなくなります。

こんな状況を、「社会のルールは頭のいいやつの都合のいいように作られているんだ。逆に、都合の悪いところは分からないようにうまく隠している」と批判しても始まりません。東大にも行けなかった一庶民である僕が、このルール、システムの全てを変えることは不可能です。

しかし、震災費用を防衛費にすり変えることが可能なら、その逆もまた可能なのではないでしょうか。防衛費を災害対策、人命救助、平和のためにすり変えるのです。システムはそのままに、防衛費をスライドさせる逆転の発想。それが「地球防衛隊」構想になります。


※最後までお読み頂きありがとうございます。この「地球防衛隊」全体の構想は最初の投稿「OEDO[0-0]地球防衛隊法案──概論」にまとめています。それ以降の章は、この章も含めて、その詳細を小分けして説明する内容になっております。

第一部[1-1]〜[1-9]では「戦争観のアップデート」について。第二部[2-1]〜[2-9]では「地球防衛隊の活動と効用」について。第三部[3-1]〜[3-9]では「予想される反論への返答」について。第四部[4-1]〜[4-9]では「地球防衛隊に至る思想的背景」についてを綴って行く予定です。

敢えて辛辣に、挑発的に書いている箇所もありますが、真剣に日本の未来を危惧し、明るいものに変えて行きたいとの願いで執筆に励んでいます。「スキ♡」「フォロー」や拡散のほど、お願いいたします。

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