🇧🇹桃源郷プナカ

ブータンの首都ティンプーからドチュラ峠を抜けて古都プナカへ向かう。
車酔いしやすい僕にとってブータンでの移動はなかなかつらいものがある。
街を移動する場合は大抵山を越えなければならないからだ。
ぐねぐねとうねる道の連続に僕の救世主センパアも完全に酔いを抑え込むことができない。

この道に慣れているブータン人にとって車酔いという概念がないのだろうか、グロッキーな僕に構わず話かけてくる。
でもごめん、全然頭に入ってこないよ。

車に乗って4~5時間ほど経ったころだろうか、窓に体を預けて目をつむっていると、

「ここからプナカエリアですよ」

ガイドさんがそう声をかけてくれる。
重たい瞼をあげると酔いも吹っ飛ぶ景色が飛び込んできた。
渓谷にどこまでも伸びる青々とした美しい棚田。
谷間に流れる生命の川。
手に取れそうなほど近くに感じる入道雲。

「プナカは、ブータンのトロピカルなエリアです。標高も1,400mしかありません。」

これまで見てきたブータンの景色とは全く違う。
他のブータンの景色ももちろん美しい。
だけどなんというかプナカは僕の思い描く桃源郷に近い。
桃源郷があったならきっとこんな場所だと思う。

現実になった心象風景に僕の心はほどけていった。