真夏のおくりもの
街からそんな離れていない山の中腹にそのカフェはあった。大通りから小さな脇道に入り狭い道を登っていく。
砂利だらけの駐車場に車を置き矢印の看板の方向に向かうと小さな門がある。かなり体を屈めて門を通り抜けるとその先は曲がりくねった坂道があった。ちょっとした山登り気分である。
そこにいくにはいろいろイベントがあるんだなと思いながらサンダルで来たことを後悔した。
坂を登り畑をぬけると飲み物を売る屋台がある。そこで飲み物を買い、さらに奥に向かうと、木々の向こう側にいきなり海が現れるのである。てっきり森の中のカフェかと思っていたので一面の海はものすごいサプライズである。
お好きな気分でお好きな所へどうぞというオーナーの思いが伝わってくる席の自由度がすごい。ブランコ、テラス風の席、ハンモック、木陰、パラソルの下。ラッキーなことにお客は誰もいなかったので、席は選びたい放題だった。
木陰の少し高台の席に陣取る。しばらくするとお店の方が 蚊大丈夫ですか?と蚊取り線香を持ってきてくれた。懐かしい蚊取り線香の匂いを感じながら すぐ隣で泣く蝉と眼下に広がる海を屋台で買ったアイスコーヒーで楽しむ。
真夏の日差しが海に反射してキラキラしている。海からなのか山からなのかわからない涼しい気持ちのいい風が吹き抜けていく。
今度 あの人を連れてこようとか 変な企みだけが浮かんでくる。 きっと気にいるはずだ。
余計なことを何も考えなくてもいい真っ白な時間が動いていく。