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『わたしの兄の本』と他3冊を読んで、モーリス・センダックに迫る

昨日の絵本を借りる際に、センダック最後の作品となった本も一緒に借りてきました。

モーリス・センダックが絵本作家になったきっかけが、児童文学作家だった兄ジャック・センダックの2作品に挿絵を描いたことだそう。その後『かいじゅうたちのいるところ』でコルデット賞を受賞し、日本でも有名に。


『わたしの兄の本』は亡き兄ジャックとの再会を希う想いの最後の表明といわれるおとぎ話らしいのですが…まずはモーリスの絵本2冊と、兄との共著『とてもとてもサーカスなフロラ』を読みました。


少しあらすじと感想を。
『まよなかのだいどころ』

さく/モーリス・センダック
やく/じんぐう てるお
発行所/冨山房(1982年)

男の子ミッキーの真夜中の不思議な体験?!NYの街並みのような台所でパン職人たちが作る明日の朝のケーキ作りのお手伝い。ポスターのような四コマ漫画のような楽しい絵。


『ピエールとライオン』
ためになるおはなし はじまりのうたといつつのまき

さく/モーリス・センダック
やく/じんぐう てるお
発行所/冨山房(1986年)

何を言っても尋ねても「ぼく、知らない!」そんな時期の男の子の話。「はい!わかりました」と言えるまでに何があった?!読みやすい大きな文字と可愛いイラスト。本書を含めた豆本4冊のセットもあり。


『とてもとてもサーカスなフロラ』

文/ジャック・センダック
絵/モーリス・センダック
訳/江國香織
発行所/集英社(2017年)

サーカスの中で生まれ育った女の子フロラ。サーカスを見に来るお客さんがいつも外ではどんななのか気になりサーカスのみんなに聞くのですが、フロラがみた恐ろしい夢について確かめるため一人で初めてサーカスの外へ。
諦めて帰ろうとした所に真実を知りサーカスの仕事により意欲的になります。サーカスの外でもやっぱりとてもとてもサーカスなフロラなのが可愛い。
幻想的でカッコいいモーリスの絵が、兄ジャックの物語(フロラの気持ち、サーカスの世界観)を引き立てています。



さて、彼の遺作となる
『わたしの兄の本』

著/モーリス・センダック
訳/柴田元幸
出版所/集英社(2017年)



すごく抽象的で幻想的な絵と、詩のような文章。
今まで見てきた絵本とはまったく違いました。

表紙カバー裏の解説、序文からして難解です…。
とりあえず、センダックがシェイクスピアの『冬物語』に影響を受けていることが分かったので、ウィキってみました。(知らんのかい笑、これまた面白そうな喜劇)

さらに集英社さんのHPによると、

一目見ればわかるとおり、この絵本の作者としてのセンダックは、18世紀の大幻視家ウィリアム・ブレイクの直系の子孫である。兄に、長年の伴侶に、そして世界に別れを告げるにあたって、センダックが同時に、何のてらいもなくブレイクへの敬意を示したことが、僕にはとても嬉しい。――――柴田元幸

「ならば地獄へ行け! 」と熊が吠え、空は翳り、つむじ風がとどろき、世界は大きく冬の側に傾く―――――モーリス・センダック、正真正銘の遺作!

兄ジャックを亡くし、最愛の人も亡くし、自身の死をも意識したセンダックが、魂を昇華させ紡いだ美しいイメージ! ジャックとガイ、兄弟の生と死が交錯する物語が、鮮やかな色彩と言葉によって描かれる。死去する4日前まで、病床で校正紙を何度も推敲し、ようやくOKを出したとされる、センダック最期の一冊。柴田元幸の名訳も必見!

集英社HPより


詩人であり画家であるウイリアム・ブレイク(これも無知なものでウィキる)の子孫といわれると、この本での表現にそのルーツが窺えるような気がしました。そしてもう一度読み返すと、断片的に『冬物語』が絵としてイメージとしてこの本に取り込まれ、組み込まれている感じも納得でした。


ことばにならない愛する人への想い
生と死を意識した魂のメッセージ

それによってこの作品が出来上がったような気がします。

晩年のセンダックは絵本作家ではなく、詩人・画家として命を削って作られた作品を別れの詩として残されたんだなぁと感じました。







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