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きみのぬくもりで春になる

日々、狂気を演じることが始まった

きみは少し成長した笑顔で僕に甘える
そして身体のどこか一部をくっつける

ぬくい

一部がぬくい

おとうさん、あのね、と中身がないのに全てある声で内部がぬくい

あぐらの中にすわるきみは
せなかごしで僕の両手を抱きしめる
おもちゃはレゴだけでいい
とか
ジョージの世界で生きたい
とか
切実です

誕生日はローラーブレードが欲しいそうだ

近所のゴミを2人で拾って歩く
きみの提案だ
僕は拾うより捨てるほうが好きだという
なんで?

汚いからと言う前に、ゴミになる前は欲しかったものだったり大切なものだったり、したのかもな、と考えてみたりした

きみはお金を拾いたいという
一円拾えた
僕は拾ったらゴミもお金も一緒だねという
きみはゴミは捨てるけどお金は捨てないよという

お金は使うからモノに変わる
ゴミは捨てたら何になる?

退屈になるときみは僕の背中にしがみつく
僕はきみを揺らして遊ぶ
きみはしっかりと背中におさまる

とてもぬくい

寝坊のきみをほっといて洗濯機を回し、インスタントコーヒーを淹れる

鏡で鏡の中の僕を眺め、ヒゲを剃ろうか考えていたら、おいっときみは呼んだ

ちゃんと起きてえらいね、と応えた

数日前に描いたたくさんの絵を絵本にしよう
字を書くよ
考えて
お話を?
そうだよ、お父さんから考えて

今日はいい天気だね
鳥さんはいいました
今日はいい天気だね

きみが続きを考えて字を書いた

あそこのきにとまろう

朝いっしょに寝坊した時に僕はきみにお願いした
僕をあっためてくれよ
きみは僕の身体に乗っかって
ふとんだよ
ぬくい布団だと抱きしめた

えへへと笑って僕の身体の上でまっすぐになった

あまりのあたたかさに

きみのぬくもりで春になった

また狂気を演じるには
ぬくいよ
ぬくすぎるよ

僕は幸せなのだ

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