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花散る雨、里に恋しなりゆく(1)【短編】
壱. はるうららサクラサクラ
はらはら、と舞う桜は美しいと、人は言う。澄んだ青空の下、日だまりに包まれながら、名残惜しそうに散ってゆく儚い姿こそが、日本の春の情景だと、更に大人は言うだろう。
――咲くのは一瞬、終わるのも一瞬。吹雪いて一息ではなく、雨に打たれ続け……散り逝く。そんな刹那的な花が、今のサクラだ。
古都、京の春。雪解けが終わりを迎え、陽射しが強くなり、冷えきった空気が過ぎ去
夏の星々(140字小説コンテスト第4期)応募作 part7
季節ごとの課題の文字を使ったコンテストです(春・夏・秋・冬の年4回開催)。
夏の文字 「遠」
選考 ほしおさなえ(小説家)・星々事務局
「夏の星々」の応募期間は7月31日をもって終了しました!
(part1~のリンクも文頭・文末にありますので、作品の未掲載などがありましたらお知らせください)
受賞作の速報はnoteやTwitterでお伝えするほか、星々マガジンをフォローしていただくと更新のお
夏の星々(140字小説コンテスト第4期)応募作 part6
季節ごとの課題の文字を使ったコンテストです(春・夏・秋・冬の年4回開催)。
夏の文字 「遠」
選考 ほしおさなえ(小説家)・星々事務局
7月31日(月)までご応募受付中です!
(応募方法や賞品、過去の受賞作などは以下のリンクをご覧ください)
受賞作の速報はnoteやTwitterでお伝えするほか、星々マガジンをフォローしていただくと更新のお知らせが通知されます。
優秀作(入選〜予選通過の全
花散る雨、里に恋しなりゆく(3)(完)【短編】
終.はなちるさとで永久に
「……また、話しても、ええの?」
――……いや、もう声はかけられない。そもそも、今回は本当に特例だ
「……そ、か」
こうなるかもしれないと、どこかで覚悟はしていたが、どうしようもない名残惜しさ、寂しさがわき上がり、ちりちり、と胸の奥を痛ませる。
――そんな顔をするな。姿は見えないだろうが、私はいつもこの辺りに居る
「……桜の事はもう願わへんけど……話し
花散る雨、里に恋しなりゆく(2)【短編】
弐.あめあられ桜雨
忘れたくなくて、少しでも思い出に関わっていたかったのだ。唯一の理解者がいなくなった現実の受け入れ方、どんな風に心を落ち着かせたらいいのか、今でもわからない……
「おばあちゃん……ほんま急やったんよ。元気そうやったのに…… 病気が見つかった時は、もう手遅れやった……」
自分自身でもずっと操り切れなかった何かが、口にしていく度に暴れ出す。小さな心の中に収まり切らないモノ
七夕前夜(3)(完)【短編】
終夜 彼らの反旗
『誕生日おめでとう。今年は直接会って祝えなくてすみません。残念です。
これからどうなっていくか分からない、相変わらずの毎日ですね。それでも、こんな俺と繋がっていたいと思ってくれてて、本当に嬉しいです。
お陰でしんどい時も頑張れてます。ありがとう。詩織が、好きです。』
何度も書き直したような、下書きの跡だらけの便箋に綴られた、数行のメッセージ。
彼の想い全てが、目から頭
七夕前夜(2) 【短編】
第三夜 移り変わる努々(ゆめゆめ)
『久しぶりです。っていうのもおかしいか。毎日、暑すぎますね。
実は、この前の通話で言いそびれたけど、少し前に用事で降りた駅で、初めて二人で会ったカフェの前を通りました。
今の状況が落ち着いたら、また一緒に行きたいですね。』
――覚えてて、くれてた……
この前言ってくれたら良かったのに……と少し思ったが、照れ臭くて顔を見ては言い出せなかったのだろうか…
朽ちぬ花嫁 【短編】
あらすじ
序幕 ~ 夢幻泡影
――“咲き誇った後に散るからこそ、花は、儚くも美しい”
誰からともなく、古来から語られ継いだ常套句。だが、時に畏怖を為され、忌まわしき対象と化した時代があった。
次に崇め奉られ、また無情に散るのも、力弱くも懸命に生きる、咲いて間もない、美しい生命だったのである………
サクラ
……あれは、十になる年の春だったでしょうか。幼い頃の朧気な記憶の中で、一番鮮