おまえはとくべつ

建物に囲まれた広場
僕のために鐘が鳴る
それなのに
見物人はひとりもいない
断頭台で聞こえるのは
処刑人の呼吸だけだ

あなたからメッセージが届く
ずっと待っていたんだ
縛られた手でかざしてみる
無事家に着きました
心配事が少し片付きました
僕は良かったねと返事する

あなたからの返事はない
夕飯を食べているのかも
猫と遊んでいるかな
もう少し話したかった
でももう時間がない
首が落ちる時間だ

僕はがんばったよ
威張ってる奴と喧嘩した
泣いている若者と肩を組んだ
嫌いな人の看病もした
俯いている奴の背中を伸ばした
なけなしの金を寄付もした

もしもいま目の前に
あのときと同じテーブルと
あのときと同じコーヒーがあれば
きっとあなたは美しくほほえむだろう
そして僕は眉を寄せて
静かにコーヒーをすする

僕は失敗したな
友だちの物を壊した
手紙に返事を出さなかった
才能を無駄遣いした
愛をどぶに捨てた
大きな声を出し過ぎた

あなたからメッセージだ
ああ間に合った
猫が甘えてるの
というより怒ってるみたい
出かけていたから
ご機嫌ななめね

ご機嫌ななめか
猫のにおいを思い出す
いつも間にはいってきたね
やきもちをやいているの
だいじょうぶ
おまえはとくべつ

おまえはとくべつ

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