【取材後記】舞台ハリポタを観て「私も魔法をかけたい」と思った話
「夢がひとつ叶いました」
舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』日本版でメインキャストを務めた俳優・橋本菜摘さんのインタビュー記事を公開したとき、ご本人からいただいた言葉だ。インタビューを受けることが、橋本さんの夢のひとつだったそう。
私がインタビューライティングを仕事にすると決めたのはちょうど2年前の2022年の冬。なんの実績もスキルもない中で、知り合いに協力してもらってせっせと自主企画の予定を立てていた。
私が舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』を鑑賞したのも、ちょうど同じころ。まさか公演時間が3時間40分とも思わず、鑑賞後に友人へのインタビューの予定を入れていて焦ったことを覚えている。記念すべき初インタビューの日。
その公演で、ハリー・ポッターの友人であるロンとハーマイオニーの娘、ローズ・グレンジャー・ウィーズリー役を務めていたのが橋本さん。生徒役のアルバス、スコーピウスとともに舞台上をエネルギッシュに駆け回る姿を見て、言葉にできないほどの感動体験を得た。
魔法って本当にあるんだ、と。
欲深い私は、「私も誰かに魔法をかけたい」とも思った。
細々とライターの仕事をして、細々とお芝居のオーディションを受け続け、深夜までアルバイトをする日々。自分の歩んできた道に自信を持てなくて、学生時代の友人に会いたくない。「こっちゃん今何やってるの？」と聞かれたくない。
そんな中で、「やってやるんや」と前に進む、行動力をもらった、宝物のような観劇体験だった。
それから、インタビューライティングを本格的に学び、舞台を観た日から1年半後、ついに橋本さんにインタビューさせていただくことになった。ちなみに、私にとっても公のメディアで初めて企画が通ったインタビューである。
ラブレターを書くような気持ちで企画書をつくり、「よろしくお願いしまぁぁぁす！」と祈るような気持ちでgmailの送信ボタンをクリックした。「ぜひとも」と返信が届いたときには、それはもう舞い上がった。
インタビューを実施したのは、2024年の夏のこと。当時、私は半年弱のお芝居のプログラムに通い始めたばかりで、橋本さんに聞きたいことがたくさんあった。（が、ぐっとその気持ちを抑えて、読者の聞きたいお話を中心に伺った）
私が一番印象に残っているのは、自分を信じることについてのお話。記事の主テーマとは離れてしまうのでなくなくカットしたところだ。
当時の私は、できないことばかりに目を向けて、自分を信じるとか、できたことを褒めるとか、とにかくそういったたぐいのことに難しさを感じていた。
「自分を信じて生きるって結構難しいと思うんです」と、素直に伝えたところ、「私の場合は、20代は常に目の前のやりたいことにフォーカスしてきたんです。『将来売れるため』ではなく『今やりたいから』という想いだけで自分を信じられて、突き進んでこられました」と返ってきた。
当時は、「なるほど……？」と思いながらも、やっぱり橋本さんはすごいんだ、とどこか他人事だった。でも、今なら分かる気がする。
自分を信じるには、まずは自分が望む状態を自分自身がちゃんとわかっていて、「これをやりたい！」に対して常に素直であること。その行動の結果に自然と落ちているものが自信なのだと思う。そう解釈し、そう実感している。
インタビューで橋本さんからいただいた言葉を両手いっぱいに抱えながら、一つひとつ「あの言葉はこうだったのかも、ああだったのかも」と紐解いていく公開までの日々。
インタビューをしたときの自分と、公開後の今の自分がまったく違っていて、公開した記事を読んで書き手なのにジーンときてしまう。
本当にいい言葉をたくさんもらってしまった、と。そしてそれを実感できるように、一つひとつの言葉に向き合ってきたのだ、と。
公開後、これまでにないほど大きな反響があった。特に知り合いの俳優からたくさん感想をもらって、本当に届けたい人たちに言葉を届けられた喜びを味わった。「橋本さんの記事を読みました」と新たなお仕事の相談をいただくこともある。
1本のインタビュー記事を通して、もしかしたら、私も誰かに魔法をかけることができているのかもしれない。そんな期待を抱きながら、今日も私は言葉をつむぎ続ける。
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取材にご協力いただいた橋本さん、編集のゆぴさんに心から感謝しています！
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photo by Nagi
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