農福連携についての整理 モデル図など
農福連携について調べていると、多様な連携の仕方があることがわかります。いろいろな連携の形があり、多様であることはとても素晴らしいことだと思います。
一方で多様であるがゆえに「農福連携」という言葉を使うとき、お互いが想定する連携が異なっていることもあるのかなぁ、と思いました。
そこでどんな連携があるか、誰が対象となっているのか、農福連携はどういう良い点があるのか、整理しました。
<目次>
対象となる人
それぞれが求めていること
どのような連携があるか
(1)雇用
(2)業務委託
(3)自社農園
(4)コミュニティ農園
農福連携の課題と提案
(5)体験農園を利用
他にも色々
対象となる人
農福連携は誰と誰の連携かというと、障がいを持たれた方と、農家さんとの連携が多いように思えます。働く場所(機会)がない障がいを持たれた方と、人手不足の農家さんをつなぐ活動のことを農福連携という、といった説明をよく見かけます。
また、それ以外の方を対象にした連携もあります。生活困窮者や引きこもり状態の方など、働きたくても働けない方々。また、仕事などで消耗し疲れた方、退職後居場所がない方たちと”農”(畑や農作業)をつなぐ活動もあるようです。
それぞれが求めていること
農福連携の意義が語られるとき、様々な良い点が挙げられます。障がいをもたれた方の賃金(工賃)の上昇、気持ちが疲れた人の心の回復、といったものから、耕作放棄地の増加を防ぐ、農業界の人手不足解消などです。
農福連携に関わる人は様々なので、それぞれの良い点は一体誰にとって良い点なのかを以下表にしてみました。
どのような連携があるか
いろいろな人が関わり、各々が求めていることも多様です。では、どのような連携の仕方があるのか。それらを図にしてまとめました。
まず、障がいを持たれた方と、農家さんとの連携は主に二つの仕方が主のようです。
(1)雇用
農家さんが障がいをもたれた方を雇用するといった形です。
神奈川県ですと、藤沢市でにこにこ農園さんが取り組まれています。
活動内容や思いはこちらの記事にまとまっております。
他にも、全国では静岡県浜松市の京丸園さんの事例がよく取り上げられております。
(2)業務委託
農家さんが業務を委託し、障がいをもたれた方が利用している福祉事業所がその業務を受託するといった形もあります。
就労継続支援事業所などが農家さんから依頼を受け、そこに通う利用者さん達が農家さんのもとに出向き、農作業を行うといった形です。
神奈川県ですと、横須賀市が力を入れている様です。
これらは主に、農家さんにとっては人手不足の解消、障がいをもたれた方にとっては賃金(工賃)の上昇や就労の場、就労訓練を得る手段として利用されているのかと思います。
他にも農家さんとの連携ではなく、
(3)自社で農園を持つ
という農福連携の形もあるようです。
福祉事業所などが自らの農場で利用者と一緒に野菜を育て、そこで育てた農作物を販売することで賃金(工賃)の上昇に役立てるという形です。
神奈川県ですと、社会福祉法人開く会さんなどが行っているようです。
上記(2)(3)、農家さんの所に行って農作業を手伝うにせよ、自社で農園を持つにせよ、直接賃金(工賃)を得ることに重点を置いていない取り組みもあるようです。
リワークプログラムを行っている会社などに通う方が、野菜やお米を育てる中で、生活を整えたり、働くことについて学んだりするようです。
うつからの復帰・再就職トレーニングを行うLIVAさんなどがそうしたプログラムを提供されています。
賃金アップや就労訓練などだけでなく、農作業を行うことは気持ちのリフレッシュになったり、良い運動になったりするため、働くことに焦点を当てていない取り組みもあります。
(4)コミュニティ農園
など、畑に集って農作業をすること自体を目的にしたものも広い意味合いで農福連携と言えるのではないかと思います。
これは、集ってみんなで農作業を行うことで畑が居場所となり、生活の質を高めることを目的にしているようです。また、自分の食べるものを自分で育てるといった形で生きる糧を得ることができます。
神奈川県ですと、横浜の今宿コミュニティガーデン友の会さんが取り組んでいるようです。
農福連携の課題と提案
いろいろな連携の形がある中、多くの福祉事業所様が興味を持っているが、取り組んでいるところはまだ少ないとのニュースもありました。
記事によると農福連携に興味はあるが、提携先を見つけたり、農業を教えてくれる人を見つけるのがハードルになっているのかなと。
そこで、「こんな連携はどうか?」という提案なのですが、
(5)「体験農園」を利用する
のはどうでしょうか?体験農園とは、農家に野菜づくりを学びながら自分たちの利用区画で野菜を育てるといったものになります。
賃金(工賃)の上昇にすぐにつながることはなく、売れるほどの野菜を育てられるものではないのですが、以下のような良い点がございます。
・すぐに始められる
農地を借りるのはハードルが高いですし、一度借りると運用が大変です。まずは小さく畑を始めてみて、感触を見るのはいかがでしょう。契約をするとその日から始めることができます。
どの程度の広さの農地でどのくらいの作業量が必要そうかなど参考になります。また、適度な運動になり生活を整える場となりますし、自分たちで育てた野菜を食べるのは格別です。
・野菜づくりを教えてもらえる
体験農園では実際の農家から野菜づくりを学ぶことができます。自社で農園を持つにしろ、体験農園で何年か野菜づくりを学べば、指導者を探す必要なく自社農園を始めることが可能です。
農福連携に興味がある福祉事業所などで、職員の方がそこで学ばれたり、利用者の方と一緒に来たり、といった利用の仕方ができると思います。
当園の体験農園サービスにご興味ありましたら、見学無料ですのでお気軽にお越しください。
他にも色々
また、当園のスタッフが空いた時間と畑を使い、働きたくても働けない人と人手不足の農業界をつなぐプログラムを行っています。NPO法人農スクールと言います。
農林水産省の「福祉分野に農作業を」という事例紹介にも2015年に掲載されました。以下URLのP6
http://www.maff.go.jp/j/keikaku/pdf/2710_nofuku.pdf
その農スクールが平成31年度藤沢市のまちづくりパートナーシップ事業で「農福連携トレーナー育成プログラム」を行います。
主に福祉事業所で働く方を対象に、農業の知識や技能、制度などについて学ぶことができます。こちらも興味ありましたら、ぜひご参加ください。
他にも我々は自治体や企業様より「農作業を用いた就労支援プログラム構築・提供」「農福連携に関する現場トレーナー研修」などのご依頼もお受けしております。農地に出向き、野菜づくりについて講義や指導を行うこともできますので、農地はあるけど指導者がいないなど、ご要望ございましたらお気軽にご相談くださいませ。
それでは、良い農福連携を!
書いた人:山田直明
北海道大学卒業。ブリヂストンサイクル株式会社でマーケティングの仕事を行ったのち、趣味で始めた野菜作りにハマり、農業界へ。藤沢市の有機農家相原農場で1年間研修した後、株式会社えと菜園に入社。NPO法人農スクール農福連携トレーナー。
自治体様向けの農業を使った就労支援プログラムの講師を務める。
講演歴:「農業界で働くこととは?」(就労移行支援所にて)
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