ホラー短編「幽世・前篇」
森の入口に鳥居。奥に進むと昼間でも薄暗く異様な空気が漂っている。
最奥には古いお堂がポツンと建っている。お堂の扉が独りでにギーと開く。
お堂の扉の奥は真っ暗。この世のものとは思えない呻き声が響いてくる。そして、扉をガシッと掴む手。
美代子、透の隣に布団で寄り添うように寝ている。
美代子、透の頭を撫でながら、優しく微笑む。
「透、オソロシドコロには近づいてはダメだよ」
「どうして?」
「あそこは神聖な場所で、この世の場所ではないからだよ」
「そこに入ったら、どうなるの?」
「