アウトサイダー 2024/08/04(3-p.312)#82
H•P•ラヴクラフト『アウトサイダー』を読みおえる。南條竹則編訳によるクトゥルー神話傑作選の三冊目だ。新潮文庫の100冊。
「アウトサイダー」「無名都市」「ヒュプノス」「セレファイス」「アザトホート」「ポラリス」「ウルタルの猫」「べつの神々」「恐ろしき老人」「霧の高みの奇妙な家」「銀の鍵」「名状しがたいもの」「家の中の絵」「忌まれた家」「魔女屋敷で見た夢」の以上十五篇。掌篇や短篇が多く、サクサク読めるが、これだけでは何を云っているのか分からない作品もあって、作者の世界観やクトゥルー神話に慣れていないと、やや読み難いかもしれない。
夢と現実を行ったり来たり、境目が曖昧だったりどちらが現実か、と云った主題が繰り返し描かれる。僕も本を読んでいると時折、この現実が創作で、小説の中にこそ真実があるんじゃないか、と想うこともあるから、作者の考えに共感する。
気に入ったのはやはり表題作。やや長めのさいごの二篇「忌まれた家」と「魔女屋敷で見た夢」も良かったし、「無名都市」「ウルタルの猫」「恐ろしき老人」「家の中の絵」も面白く読んだ。短篇の小気味良さは芥川に通じる読み心地があり、また幾つかのお話には、敬愛する森見登美彦らしさもようやくかんじることができた。「魔女屋敷で見た夢」なんて『四畳半神話大系』そのものと云っていいし、ホラー成分強めに振れれば『きつねのはなし』や『夜行』に向かうのだなあ、とおもったりする。またモリミーを読みたくなる。
さてこれで2024年の新潮文庫の100冊もようやくはじめることができたし、ラヴクラフトの傑作選も読みおえることができた。他のレーベルで全集もあって気になるものの、やや食傷気味でもありまたいつかの機会にとっておこうとおもう。
つぎは川端康成を読んでいく。が、そのまえに金田一を一冊挿んで小休止、である。