「デザインのひきだし52 表紙全面エンボス加工」
コスモテックの青木です。
前回コスモテックにて 『 デザインのひきだし51 』 の表紙加工をお手伝いさせていただいたばかりですが、 なんと!連続! 今回発売される 『 デザインのひきだし52 』 の表紙加工にも携わる機会をいただきました。
少し前に 「 よし! 今まで難易度の高い表紙加工を10回も成し遂げることができた! 」 と ほっとしていたのも束の間。 今回加工に携わらせていただく52号も すさまじい難易度の表紙加工となっているため、気持ちを新たに、前へ前へと向けて挑みました。
◉ こ、これはすごい! 全面エンボス加工! そして型抜き
上のデザインイメージは表紙の製作過程の真っ只中、『 デザインのひきだし 』 編集長の津田淳子さんが表紙の製作チームに共有してくださったものです。そして、下の写真は、上のデザインイメージを紙面上に加工するとどうなるかを表現した 3Dデータによるシミュレーション画像です。
『 デザインのひきだし52 』 の表紙は、印刷はせず全面にエンボス( 浮き出し )と型抜きの2つの加工の合わせ技でつくるデザインなのですが、上の表紙イメージを見るだけでも今回の加工の難易度の高さを感じられるのではないでしょうか。
気になる表紙の製作チームは?
ちなみに、今回の製作チームの布陣は、型抜き加工は 東北紙業社 の加藤清隆さんが担当。東北紙業社はコスモテックもメンバーの一員である 印刷加工連 にも所属しているため普段のお仕事でも大変お世話になっており、すばらしい型抜き技術はデザイナー・印刷加工会社からも一目置かれております。
エンボス( 浮き出し )加工に使用する 「 版 」・型抜き加工に使用する 「 型 」 の製作は今回 ツジカワ さまが手掛けてくださいました。上に掲載している 『 デザインのひきだし52 』 表紙の 3Dデータはツジカワ さまが制作してくださったものです。複雑な 「 版 」「 型 」 製作の前段階で、このように 3Dデータ化していただくことで視覚的にも加工のイメージがぐっとし易くなり本当に助かりました。
実は 『 デザインのひきだし 』 内で 東北紙業社( 抜き ) × コスモテック( 押し )でコラボレーションしたことが過去にも一度だけあります。それは 『 デザインのひきだし12 』( 2011年 )の付録 - 切手( 風 )づくりに挑戦! です。
13年という月日を経て、今回は表紙加工に共に挑ませていただくことになったのです。
◉ 通常エンボスと彫刻エンボスの同時押し
ツジカワ さまから表紙加工に使用する金属版が出来上がってきた際、一番インパクトがあったのは、ずっしりとしたその重さです。
表1・背・表4と… エンボス加工によって盛り上げる図案がところ狭しと配置され、加工の範囲は広く表紙全面におよびます。それゆえにエンボス版そのものがとてつもなく大きいのです!
また、今回の版の特徴は通常腐食のエンボス版と彫刻のエンボス版が一版になっているということです( 普段は腐食版で1版、彫刻版で1版の計2工程必要 ) 紙を盛り上げる高さや繊細な浮き出し感など腐食版部分と彫刻版部分では、「 版 」 を見ても表現が異なっているのがよく分かります。
※ 『 ニュークリアダイ 』
『 ニュークリアダイ 』 ( 型取成型凸版 )は、ツジカワ さまの 3Dモデリング技術を使用して製作した凸版です。こちらは腐食製作による樹脂版ではなく、元型をつくり樹脂を流し込んで製成する樹脂版で、複雑な高低差のあるエンボス表現の際に特に力を発揮します。
加工で使用する 「 版 」 の凄み
腐食版よりも彫刻版の方が重量がかなり重いのですが、特に今回 『 デザインのひきだし52 』 の表紙加工で使用する金属版は今まで味わったことがないほどのずっしりとした重さを感じました。そもそもここまで広範囲に複雑な図案をエンボス( 浮き出し )加工すること自体が稀な出来事です。
また、加工で表現する図案のテーマも相まって、版上に表現された星座や神話の世界がとても美しく、目の前にある金属版自体が一つの作品のように感じました。まさしく、ため息が出るほどの美しさなのです。
そして、ここにツジカワ さまの版づくりのノウハウや技術がぎゅっと凝縮されていることを考えると、言葉では言い表すことができない感動が私の胸に押し寄せてきたのでした。
◉ 紙の性質と加工の特性が合わさった時
『 デザインのひきだし52 』 の表紙で使用している紙は ヨシモリ さまの 『 ノスタルジー・メランコリー230 』 です。 はじめてその名を耳にする方も多いかと思います。私は今回の表紙加工を通して、この紙が大きなポテンシャルを秘めていることを確信しました。
『 ノスタルジー・メランコリー230 』 は紙の表面にパール調の偏光があり、裏面は白い紙です。ややメタリック感も感じるパール調の光沢は、まるでオーロラのよう。言葉で表現するのが非常に難しいのですが、視覚的にとてもインパクトがある紙です。
加工は 『 ノスタルジー・メランコリー230 』 の表紙一枚一枚を手作業で機械にセットし、ツジカワ さま特製のエンボス版を用いて、がっつり強圧で図案を盛り上げます。今回は加工の面積がとても広いため、加圧時の圧力が分散化されてしまうおそれがありました。
そのため、細やかな図案の一つ一つをしっかりとエンボスで表現できるように、加工に取り掛かる前段階の具合出し( 機械の調整含めて加工のコンディションを整える準備作業 )にしっかり時間を掛け、念入りに調整した上で難易度の高いエンボス加工に臨ませていただきました。
紙の偏光性が際立つ! すごい!
『 ノスタルジー・メランコリー230 』 の特徴ある表面が、エンボス( 浮き出し )加工することで盛り上がった部分の丸み・曲面でより顕著に偏光具合が増しました。この効果によって図案の星座や神話の世界観がぐっと引き立つようにも感じ、紙の持つ特性と魅力を加工と図案がグッと引き出した瞬間を目撃しました。
たとえ紙色が夜空を想像させる黒色や紺色ではなくとも、そして星々を表す金箔・銀箔やホログラム箔を使わずとも、 紙 × エンボス加工だけでプラネタリウムのような美しい星空のイメージを彷彿させてくれる表紙となりました。
コスモテックの加工現場で一点一点、慎重に加工し終えた後は 東北紙業社 加藤さんの手によって型抜きされて表紙は完成します。エンボス( 浮き出し )加工同様に型抜きの図案も複雑です。 ぜひ、完成した 『 デザインのひきだし52 』 の実物をお手に取っていただき、エンボス加工と型抜き加工の匠の技を、そしてすばらしい ツジカワ製の 「 版 」 と 「 型 」 の精度をご堪能いただければうれしいです。
コスモテックではこれで11回目の 『 デザインのひきだし 』 表紙加工。
今までと変わらず、新鮮な気持ちでチャレンジャーとして挑ませていただきました。
「 津田さん、お声がけくださり本当にありがとうございました! 」
【 連絡先 】
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有限会社コスモテック 青木政憲
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