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「後世桜という桜を知っていますか。」

ごせざくら、ですか。それはどんな桜ですか。 「どこにでも生えていて、死者にしか見えない桜です。」 そうなのですね。その桜はさぞきれいなのでしょう。 「はい、とてもとても、きれいです。あなたも見に来ませんか。ちょうど満開ですよ。」 ええ、いずれ見に行きます。ですが、今年はあいにく忙しいもので。 「そうですか。それでは来年、お待ちしております。 はい、またいずれ。一緒に見物しましょう。 「……。」 ……。 「いや、そういえばあなたは、去年も、忙しいから見に来れな

    • 戦略級魔法少女のための村で「日常の親友」役として生まれ育った。

      私に与えられた役目は、ひとりの戦略級魔法少女――以下では「A」と呼ぶ――の「親友」を務めることだった。私はそのためだけに産み落とされた。自由恋愛で引き合う男女ではなく、計算機がはじき出した「戦略級魔法少女の親友を務めるに足る能力を持つ可能性が高く想定される」精子と卵子の組み合わせから。 ・ 戦略級魔法少女の運用で各国が何より腐心するのは、「いかに彼女の情緒の安定を確保するか」だ。戦略級魔法少女はヒトの身体を持っているから、他者との交流を排除した環境で兵器として管理すること

      • 『屋根裏のラジャー』が面白かったです(※嘘記事じゃない記事)

        私はこういうファンタジーが好きので私と同じようなファンタジーが好きっぽそうな方は好きだと思います。 ほとんどの映画館で公開終了してますが、1/28(日)でもみれる映画館として、青森県つがる市のシネマヴィレッジ8・イオン柏と、神奈川県横浜市のTOHOシネマズららぽーと横浜と、静岡県三島市のジョイランドシネマみしまと、大分県大分市のTOHOシネマズ大分わさだがあるようです。 「屋根裏のラジャー」の映画館(上映館)を検索 - 映画.com (eiga.com) 予告:映画『屋根

        • 文芸部の部長を見ていたせいで、「自分の趣味が小説です」と言えなくなってしまった

          部長は趣味を聞かれると、映画鑑賞か料理と答えていた。部長にとって小説は、たぶん食事や呼吸と同じカテゴリーだったからだと思う。 部長は放課後になるとすぐに部室に行き、図書館から借りた小説を開き、あまり厚くなければ一時間ほどで読み終え、それからノートPCを開くと、今度は下校のベルがなるまで休みなく小説を書いていた。「家に帰ってからも同じことを繰り返しているはずだ」という推測に部員全員がベットし、アイスを奢るその賭けは成立しなかった。 休みの日は部長は、祖父の古本屋でバイトをし

        • 「後世桜という桜を知っていますか。」

        • 戦略級魔法少女のための村で「日常の親友」役として生まれ育った。

        • 『屋根裏のラジャー』が面白かったです(※嘘記事じゃない記事)

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          『宇宙図書艦ビブリオン』の好きだったエピソードを挙げてく

          『宇宙図書艦ビブリオン』の紹介動画を昨日見て全力で懐かしくなったので、小学校時代の記憶を思い起こして書きました。サブスクに無いので、一部、Wikipedia・ツイッター・ニコニコ大百科・ピクシブ百科事典等で記憶を補完した箇所があります。 概要2008年4月-2010年3月までテレビ柬京系列で放映されていた『宇宙図書艦ビブリオン』。当時の筆者は、ドラえもん・ポケモン・BLUE DRAGONなどとともにこれを見るのが毎週の楽しみでした。(※ なお2007年公開の映画は見ておらず

          『宇宙図書艦ビブリオン』の好きだったエピソードを挙げてく

          鴫川等間隔の間隔を測りに行ったときの話

          「鴨川等間隔の法則とは、等しい斥力の場を生む多数の質点が両端固定の線分上を運動する系では初期状態にかかわらず質点相互の感覚が等しくなる定常状態に至る現象を記述したものであり巨視的に観測される例として鴨川の岸辺が」――という具合に奇を衒って書き出そうかとも思ったのですが、このような言い回しに寒さを感じる人にはブラウザバックされ、寒さを感じない人には筆者が理系的なものについて一切無知だとバレて結局ブラウザバックされる、まさしく諸刃のこぼれた剣だと気づいたので辞めておくことにしまし

          鴫川等間隔の間隔を測りに行ったときの話

          私の四畳半,私の四畳半,私の四畳半,私の四畳半

          (k)『四畳半神話大系』に私が出会ったのは、京都で一人暮らしを始めたばかりの大学一回生の春、大学生協の書棚でのことでした。 「大学三回生の春までの二年間、実益のあることなど何一つしてないことを断言しておこう。異性との健全な交際、学問への精進、肉体の鍛錬など、社会的有為の人材となるための布石の数々をことごとくはずし、異性からの孤立、学問の放棄、肉体の衰弱化などの打たんでも良い布石を狙い澄まして打ちまくってきたのは、なにゆえであるか」 ――冒頭のこの文章を読んだ頃は、笑って受

          私の四畳半,私の四畳半,私の四畳半,私の四畳半

          「租唖」についての授業(比尾山第二小学校六年二組)

          さて今日の社会科では、誰もが知っている「租唖(そあ)」について、改めてきちんと勉強しましょう。まず、以前に教えた「国民の三大義務」について皆さんは覚えていますか? 今日は23日ですから、23番の田中君に答えてもらいましょう――いえ、失礼しました、田中君は今日は「租唖の日」なんですね。出席簿を見ていたので田中君の「租唖マスク」が目に入りませんでした。決して田中君に脱唖(だつあ)を促したわけではないので、先生のことを通報しないでくださいね。では田中君の代わりに、後ろの席の安達さ

          「租唖」についての授業(比尾山第二小学校六年二組)

          湖水線に乗って繧ソ繝�県に行った話

          四月五月と、大学もサークルもバイトも何もなく、また「日本もいずれ大変な状況になっちゃうのでは」「風邪がやたら長引いてるけどもしかするともしかするのでは」みたいにビビり散らしていたこともあり、ほとんど自宅と最寄りスーパーを往復するだけの買い出しマシーンと化していました。昔のRPGの町によくいる、毎日飽きもせずに同じルートを徘徊し続けるNPCの住人、まさにアレでした。 せっかくの機会だし、浮いた時間を有意義に活用するぞと意気込んでいましたが、けっきょく何も生産的なことができず、

          湖水線に乗って繧ソ繝�県に行った話