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『白いしるし』が描く世界、人間らしい恋の物語でした。

2022/1/18 読書記録no.67「白いしるし」西加奈子

今年4冊目の本はこちら。
読んでみたかった、西加奈子さんの「白いしるし」

先日、BOOKOFFに行った時に見つけて、すぐ手に取りました。と同時に、このタイトルと猫の絵にはどんな想いが込められているのか不思議に思いました。

私は小説を読む時、いつも思います。タイトル、表紙に込められた作者の想いはどんなものなのか、読み終えた時にその想いが繋がる瞬間が好きで、私は小説を手にします。

今回も、しっかり繋がりましたね。


あらすじ

女32歳、独身。誰かにのめり込んで傷つくことを恐れ、恋を遠ざけていた夏目。間島の絵を一目見た瞬間、心は波立ち、持ってかれてしまう。走り出した恋に夢中の夏目と裏腹に、けして彼女だけのものにならない間島。触れるたび、募る思いに痛みは増して、夏目は笑えなくなった。恋の終わりを知ることは、人を強くしてくれるのだろうか。ひりつく記憶が身体を貫く、超全身恋愛小説。


印象的な言葉

自分の好きなものだけ選ぼうって決めたんでしょう。あなたはただ、何を選んで、何を選ばなかったことに自身で責任を負わなければいけない。自分が決めたんやって、それが自分の意思なんやって、揺らがず、思ってんとあかん。それだけを強く持っていればいい。
彼だから惹かれた。理由がない。まったく。ただただ、対峙していると触れたい、と思うだけ。それだけ恋は圧倒的なものなのだ。
たった一年前のことを私たちは忘れてしまう。その瞬間は、目を伏せたくなるほど鮮明なのに、日を重ねるとぼんやりと遠い。
私の想いがどうか救われますように。その先に、光がありますように。願った、願った。


ページを閉じて

白いしるし。
間島が描く、真っ白い富士山の絵。指に残ってなかなか取れない白の絵の具。間島がよく使う色。

そして、帰らぬ恋人を待ち続けながら、たくさんの猫を飼う瀬田。

愛すること、愛されることに、執着して、自分自身と葛藤を繰り返す人たち。

人間らしい、言葉では表現できないくらい心の奥底にあるドロドロとしたものが描かれていました。でも恋愛経験が少ない私は、その中心を理解するのにもう少しだけ時間がかかりそうです。

でも、きっとこういう人たちって沢山いるんだろうなぁ、なんてことを思いました。

この作品を読んでいて一番に思ったのは、西加奈子さんの表現力です。人の気持ちや想いは、人の数だけあると思いますが、それを言葉で表現するとなると難しい。でも、この小説の中には、ぐちゃぐちゃした想いや、モヤモヤした想い、どうにもできないものなど、色んな感情が言語化されていて、作家さんって改めて言葉のバリエーションが素晴らしいなと思いました。

西加奈子さんの世界観に惹き込まれて、ほぼ1日で読み終わってしまいました。そのくらい夢中になりました。

感情を全て理解はできなくても、読んでいて苦しくなりました。誰かを思っても、その誰かには既に思っている人がいて、誰かをずっと待っていて、報われない想いがポツンと一人ぼっちになって、「あー、これは辛いな」と思いながら読み進めました。

何かを得たとか、何を学んだ、なんてことはないですが、読みたかって本を読めてよかったです。

西加奈子の描く世界観、とても惹き込まれます。


おりょう☺︎

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