第29章 うらないし の たーん
勇者は、不安障害の症状がでてから3ヶ月、ようやく不安障害のメカニズムを知るに至った。時間がかかったが大きな一歩だった。勇者の経験談は続く。
勇者「メカニズムを理解することができましたが、この時点では、まだまだ、決め手となる対策には到達できていませんでした。睡眠や栄養に関しては改善をはじめていたので、少なからず回復はしていたかもしれませんが、"環境"も、"考え方"も、"脳内の危機対策マニュアル"も変えられていない状況でした。」
僧侶「この間、ずっと苦しい状況が続いていたのですか。たしか、ギルドの業務は休まず続けていたのですよね。よく耐えられましたね。」
勇者「薬草を服用し続けていたのでなんとか耐えられたのだと思います。」
僧侶「あ、そうでしたね。でも大丈夫だったのですか?薬草はやめようとすると、不安障害の症状と似た禁断症状のようやものが出るとおっしゃていたかと思いますが、、」
勇者「離脱症状ですね。」
僧侶「勇者様は離脱症状には襲われなかったのですか。」
勇者「微妙ですね。薬草を辞める事に挑戦しようと思ったのは、たしか、11月頃(発症から4ヶ月、薬草摂取開始から2.5ヶ月)だったと思います。その頃、さとりの書に記述された大賢者アドラーの理論を学び、他人の目を気にせず、自己受容と他者貢献を目的とする考え方を身につけ、強靭な防御力を手に入れたタイミングでした。(08章〜16章参照)」
僧侶「ちょうど昨日の私の状態ですね。防御力は身につけても、実は、体力がほぼゼロの状態。」
勇者「そうです。私ももう大丈夫と過信してしまいまして。なお、離脱症状の存在は知っていたので慎重には対応したんですよ。まずは、朝昼晩1日3回接種していたのを、1日2回に減らしました。」
僧侶「いきなりゼロにすると良くないのですね。」
勇者「そうです。1か月ほど慣らして、比較的調子が落ち着いていたので、12月中旬頃(発症から5.5ヶ月、薬草摂取開始から4ヶ月)に、さらに、朝1回の摂取まで減らしてみました。すると不安障害の症状が強く出る日がありました。今思えば、これは離脱症状ではなく、純粋に回復ができていなかっただけかもしれません。」
僧侶「なるほど。」
勇者「そこから2週間くらいは、朝夜の2回に戻したり、1回にしてみたりを繰り返して、1月中旬(発症から6.5ヶ月、薬草摂取開始から5ヶ月)くらいからは、1回分を朝夜にを分けて摂取するようにしました。ですが、さらに減らすには、まだ確信が持てない感じがしていました。」
僧侶「確信を持てたのは、いつ頃ですか?」
勇者「今日お伝えした"脳内の危機対策マニュアル"の書き替えを身につけた時ですね。2月(発症から7ヶ月、薬草摂取開始から5.5ヶ月)に試しはじめ、3週間程度で、これは、効果ありそうな気がすると思えました。そこから、1日の摂取量を1/4回分ずつ減らしながら4月末頃(発症から10ヶ月、薬草摂取開始から8.5ヶ月)、ついに、薬草に頼らずに過ごすことに成功しました。」
僧侶「おぉ!そうすると、全てのテクニックを手に入れてからであれば、3ヶ月くらいで薬草を頼らない生活を実現したとも言える訳ですね。」
勇者「そうですね。あなたの場合、発症から間もないですし、薬草も使っていない。きっと、私より早く、自信がもてるようになりますよ。」