「ない本、あります。」
煮詰まっているときには、軽妙なタッチの本がいい。図書館で何かないかなぁとうろうろしていた日に見つけた『ない本、あります。』(能登崇)。
著者の能登さんがTwitterで募った写真をもとに、タイトルを決め、それっぽく表紙(装丁)とあらすじ、架空の作者のプロフィールを作成し(これだけでも相当おもしろい)、単行本化に合わせてショートショートを書き下ろしたという一冊。
IPPONグランプリの「写真で一言」とか大喜利っぽいのかなと思って借りてみたら、もっと複雑ですごいことになっていた。
そもそも、小説家の皆さんはタイトルから先に物語を考えていくものなんだろうか。大体、いちいち違う作者の名前とプロフィールを考えるなんて、なんてクレイジーなんだろう。
そしてその発想力、うらやましい!
わたしが好きだったのは、「ゆで卵のカラを割ろうとしてひびが入っている写真」から生まれた『泥酔探偵』。著者(架空)の羅門志麻奈さんは元バーテンダーで、プレッシャーに耐え切れず失踪するも、連載原稿だけはきちんと送り続けたまじめな人。2020年に急性心不全で急逝というのがちょっと切ない。
※最近、泥酔探偵がKindle化したらしい!
「チーズトーストの写真」から生まれた『今日だけは、とろける布団で眠りたい』も好きだった。
とろけたスライスチーズって、確かに布団みたい。
ちょっと星新一っぽいなと思いながら読んでいたら、何かの著者インタビューで小学生の頃から星新一を読み漁っていたとありました。
なるほどなぁ。子どもの頃に読んだものが、こんな風に人を育んでいくのだな、とちょっと感動する。
いつかわたしの写真からも「ない本」作ってもらいたいなぁ。