さりげなく、いなくなれたらそれがいちばん幸せ。『ミトンとふびん』
もしもわたしがいま、この場で召されるとしたら、心残りは何だろう。
ふと、そんなことを考える。
吉本ばななの『ミトンとふびん』に登場する主人公はみんな、家族を亡くしている。
お母さんだったり、おばあちゃんだったり、弟だったり、親友だったり。
心のどこかにぽっかり空いた穴を無理に埋めるのではなく、金沢や台北、ヘルシンキなど、日常から少しだけ離れた場所で、湯治のようにじんわり癒していく物語を集めた短編集。(と私は思っている)
私が好きだった『カロンテ』は、しじみという女性がロー