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「心理的安全性」を確保せよ|チームの初期段階における、リーダーの役割についてまとめてみた。
『タックマンモデル』というフレームワークをご存じでしょうか。
「チームの発達段階」として、1965年にアメリカの社会学者『ブルース・W・タックマン』が提唱したモデル。チーム成長には4つのステージがあり、大きな成果を創出するためには、これらすべてを乗り越えなければいけない、とされています。
4つのステージとは、
第1ステージ:【形成期】フォーミング
第2ステージ:【混乱期】ストーミング
第3ステージ:【規範期】ノーミング
第4ステージ:【実行期】パフォーミング
※パフォーミングをトランスフォーミングといったり、混乱期を騒乱期として表記しているものもありますが、大きな違いはないものとして議論をすすめていきます。
を指しており、どのチームも最初はフォーミングから始まります。その後、ストーミングを経て、ノーミング・パフォーミングと成長していきます。
ぼく自身、このタックマンモデルを意識しながら、これまでチーム・ビルディングをおこなってきました。その際、マネージャーとして意識していたことを書いていきたいと思います。
第1ステージ:フォーミングとは
まず、すべてのチームが必ず通るステージ「フォーミング」について。チームづくりのスタートラインがこのフォーミングというフェーズです。新しくチームが発足するときはもちろん、既存の組織に新メンバーがジョインするときもチームの状態は一度ふりだしに戻ってフォーミングから再出発するというのが、タックマンモデルの考え方です。また、チームのメンバーが同じでもリーダーが代わったり、プロジェクトの目的が大きく変わった場合もフォーミングから仕切り直しになります。
そんな初期フェーズのフォーミングには、このような特徴があります。
・メンバーが自分の役割をわかっておらず、指示待ちのスタンス
・チームへの愛着もないので、自分主体で他責
こういった特徴があるチームは、総じてフォーミングの状態です。逆説的には、各メンバーが自分の役割を認識した上で自発的に意見を主張するようになったり、自責でものごとを考えられるような状態になると、次のステージに進む準備ができたといえるわけです。ちなみに、どれだけ長い時間を一緒に過ごしていたとしても、一生フォーミングから抜け出せないこともザラにあります。時間が解決することもありますが、それがすべてではありません。新しくリーダーに就任した人の役割は、このフォーミングの特徴をきちんと理解し、次のストーミングのステージに移行させることだといえます。
フォーミングにおけるリーダーの役割
では、フォーミングにおいてリーダーは何をしなければいけないのでしょうか。ぼくは3つの役割があると思っています。
・なぜこれをやるのかといった【目的】を明確にすること
・いつまでに、どこまでやるのかといった【目標】を示し、進捗を管理すること
・チームの【行動規範(ルール)】をつくること
フォーミングにおいて、メンバーのスタンスは基本的に指示待ちです。なぜなら、自分が何をすべきかわかっていないからです。やる気がないだけの場合もあるかもしれませんが、たいていは「自分の役割が何かわからないから、どう動けばいいのか判断ができない」ことに原因があります。
ボトムアップでの積極的なアクションはほとんど期待できません。このような状態では、リーダーがトップダウンで明確な指示を出して、こまめに進捗管理をするほうが、チームはうまくいきます。
「リーダーとはどんな人物ですか」と聞かれたとき、多くの人が想像するであろう典型的な、牽引型(俺についてこい系)のリーダーですね。フォーミングにおいては、「声の大きさ」もリーダーに求められる資質のひとつだったりします(もちろん、絶対にそうでないといけない、というわけではありませんが)。
一番大事な「心理的安全性」を確保せよ
フォーミングをうまく抜け出すためにもっとも重要なのが「心理的安全性」の確保です。心理的安全性の重要性については、Googleのリサーチチームが、チームの生産性を高めるために圧倒的に重要な条件として発表したことでも有名ですね。
「Project Aristotle」と名付けられたこのプロジェクトの目的は、「効果的なチームを可能とする条件は何か」という問いに対する答えを見つけ出すことです。
(中略)
その結果、リサーチチームは、真に重要なのは「誰がチームのメンバーであるか」よりも「チームがどのように協力しているか」であることを突き止めました。
(中略)
Google のリサーチチームが発見した、チームの効果性が高いチームに固有の 5 つの力学のうち、圧倒的に重要なのが心理的安全性です。リサーチ結果によると、心理的安全性の高いチームのメンバーは、Google からの離職率が低く、他のチームメンバーが発案した多様なアイデアをうまく利用することができ、収益性が高く、「効果的に働く」とマネージャーから評価される機会が 2 倍多い、という特徴がありました。
(「Google re:Work 『効果的なチームとは何か』を知る」より)
ちなみに、この記事では、心理的安全性についてこのように説明されています。
心理的安全性
心理的安全性とは、対人関係においてリスクある行動を取ったときの結果に対する個人の認知の仕方、つまり、「無知、無能、ネガティブ、邪魔だと思われる可能性のある行動をしても、このチームなら大丈夫だ」と信じられるかどうかを意味します。心理的安全性の高いチームのメンバーは、他のメンバーに対してリスクを取ることに不安を感じていません。自分の過ちを認めたり、質問をしたり、新しいアイデアを披露したりしても、誰も自分を馬鹿にしたり罰したりしないと信じられる余地があります。
(「Google re:Work 『効果的なチームとは何か』を知る」より)
心理的安全性を確保するとは、メンバー全員が、「これ言っても(聞いても)大丈夫かな」や「あの人はどういう人なんだろう...」といった心配がない状態をつくることを指します。
「自己開示」と「コミュニケーションの量」がカギ
そして、そのためにカギになるのが、「自己開示」と「コミュニケーションの量」です。
フォーミングでは、トップダウンでのマネジメントのほうがうまくいくと前述しましたが、メンバーに指示を聞き入れてもらうためには、メンバーがリーダーをリーダーとして認めていることが大前提。
リーダーと認知されていない人の言うことなんて、誰も聞きませんからね。そのためには「自己開示」が欠かせません。この人はどんな人なのか、どういう経歴があって、どんなチームを志しているのか。どういったコミュニケーションを求めていて、好きな食べ物は何か。そういったことをリーダー自身から積極的に開示していきましょう。
みんなで性格診断テストを受けて、結果を共有するのも効果的です。
ちなみにぼくのチームでは、全員に「ストレングスファインダー」を受けてもらって、みんなで結果を共有しています。人ってこんなに違うものなのか、と最初は驚きましたね。。
で、ストレングスファインダーの受検とセットでお願いしているのが「トリセツ」です。
ぼくが小学生のころ「プロフィール手帳」といって、あらゆる個人情報を書かされる恐ろしいものが流行していましたが、それのオマージュ。ぼくのチームで使っているテンプレをのせておきますので、よろしければご活用ください。
トリセツのテンプレ
〇〇のトリセツです。〇〇って呼んでね。
◆○○のこれまで。
◆こんな趣味がありまーす。
◆ストレングスファインダーによるとこうらしい。
◆〇〇を漫画の登場人物で例えると、、、(自己評価)
◆いままでで一番嬉しかったことと言えばこれかな。
◆こんなときはモチベーションが下がりやすいから気をつけてね。
◆こんなことが得意だよ!!
◆これは苦手なんだー。。
◆これしてもらうと喜びます!
◆ごめんけど、ここは許してください!
そして、もうひとつの重要ポイントが「コミュニケーションの『量』」です。フォーミングでは、まず会話の量を増やしましょう。
ビジネス書では、「結論から話せ」とか「定量を交えて説明しましょう」といったことがよく書かれています。これらは基本的に正しいのですが、フォーミングでこれをやると、メンバーによっては萎縮してしまって何も話せなくなってしまいます。
こういったコミュニケーションの「質」を追求することは、フォーミングを乗り越えてからでも遅くありません。最初のうちは、目的のない雑談でも大歓迎。お互いのことをよく知る。このことに時間と労力を投資しましょう。
その一環として、ぼくのチームでは1on1ミーティングを積極的に実施しています。いまは少しやりかたも変わっているのですが、昨年ぼくがマネージャーに就任した当初は、このように1on1ミーティングを開催していました。
当時、チームのメンバーは7名で、ぼくのほかに2年目以上の先輩が3名、新卒1年目の後輩が3名という構成だったので、こういったやりかたで運営していました。懐かしい、、、
このほかにも、月に1度の読書交流会(チームのメンバーに読んでほしい本を贈りあい感想を発表する会)やオンライン飲み会も定期的に開催しています。
フォーミングで大切なことは、「自己開示」と「コミュニケーションの量」。新しくリーダーになったかたは、まずここからチームづくりをはじめるのが良いと思います。
フォーミングのまとめ
きりがいいので、いったんまとめますね。
◆チームの成長には4つのステージがある
・第1ステージ:【形成期】フォーミング
・第2ステージ:【混乱期】ストーミング
・第3ステージ:【規範期】ノーミング
・第4ステージ:【実行期】パフォーミング
◆フォーミングでのリーダーの役割とは、
・なぜこれをやるのかといった【目的】を明確にすること
・いつまでに、どこまでやるのかといった【目標】を示し、進捗を管理すること
・チームの【行動規範(ルール)】をつくること
◆フォーミングで重要なことは、
「心理的安全性」の確保
◆そのためにカギとなるのが、
「自己開示」と「コミュニケーションの量」
チームのメンバー全員が、思ったことを発言することができて、他己紹介ができるくらいにお互いのころを理解できている状態。フォーミングでは、まずここをゴールとしましょう。
次回は、フォーミングからストーミングにステージアップするときのリーダーの振る舞いかたや、ストーミングを乗り越えるための条件などについて書いていきたいと思います。
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最後に、ぼくがマネージャーとしてチーム・ビルディングをはじめる際、参考にさせていただいた書籍を一部記載しておきます。