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”人に習慣を身につけさせる”仕掛けとは
大変おもしろいnoteを見つけました。
このnoteは、筆者であるM子さんが、お子さん(5歳児)に導入した”報酬型お小遣い制度”を通して「働くということ」について考えたものです。
もちろん読み物としてもおもしろいのですが、何より「人をその気にさせる」のが抜群にうまい。個人的に教育力ないし指導力とは、つまるところ「如何に相手をその気にさせるか」という演出力だと思っているので、そういう意味で大変勉強になりました。
今日は、このnoteを参考にしつつ「人に習慣を身につけさせる方法」について考えてみたいと思います。
①「難しいけれど、ちょっと頑張ればできる」という課題を設定する
M子さんの取り組みの中で最も素晴らしいのが、5歳児のお子さんに対して”おうちに帰ってきてお弁当箱をキッチンに出したら10円”というような「ちょっと頑張ればできる」課題を設定している、という点です。
以前、上記のnoteにも書いたことがあるのですが、人が長続きしない要因の一つに「”その行動”のハードルが自分にとって高すぎる」ということが挙げられます。
私たちは、新しい行動を始めたい!と思った時、気合が入っているのでどうしても
「よーし!毎日1時間英語の勉強をするぞ!」
「ダイエットのために毎日5キロ走るぞ!」
と自分自身に課すハードルを高く設定してしまいがちです。
こうした行動は、気合の入っている数日は何とかこなすことが出来るのですが、気分が乗らない時には、一転してとてつもない辛い苦行に感じてしまいます。
自発的に始めたはずの行動がノルマに感じるようになった頃、頭の中で「毎日は無理かも」と悪魔のささやきがよぎることがしばしばあります。
その結果
「いや、やっぱり週4日にしよう」
とハードルを下げてしまい、一度ハードルを下げてしまうと、どんどんハードルを下げ、最後には挫折をしてしまいます。
(私もこの輪廻に何度もハマってしまいました。。)
M子さんも冒頭のnoteでこのように書かれています。
当初、「お風呂を洗ったら30円」等、難易度を変えたお手伝い項目も作ったのですが、息子本人は、難しくてできないし、できないからやりたくない(笑) なので、結局「簡単」かつ「できるからやってあげてもいい」項目が残った、というわけです。
当然お風呂を洗ってくれると大人も助かる(=見返りが大きい)のですが、最初からこのレベルを要求すると、今度は実際にお風呂を洗う本人が続かなくなってしまう。M子さんはこうした葛藤をご経験されてお子さんが「できるからやってあげてもいい」レベルに再設定されているんです。
また、この「できるからやってあげてもいい」レベルへの設定というのは、その行動を行う本人にも重要な意味を持っています。
チクセントミハイが提唱しているフロー理論というものがあります。この理論は、下図のように自分が持っているスキルよりちょっとだけ難しい課題に取り組む時に”没入感”を得られる、というものです。
(画像をクリックすると元の記事に飛びます)
当然人によって能力に差があるので、その人に見合った課題を設定することが重要になるのですが、M子さんは報酬型お小遣い制において、5歳児のお子さんに見合った課題を巧みに設定されています。そのことで、お子さんも没入感を得ることができ、双方が楽しみながら行動を続けることが出来ています。
うーむ。すごい。
②行動のフィードバックを行う
また、M子さんは、5歳のお子さんに「報酬型」お小遣い制を導入するにあたって、このような事を書かれています。
今回1番のゴールにしたのは「行動」すること。とにかく、お手伝いという行動を起こせたら、OKなのです。お皿を台所までもっていくときに、割っちゃおうが、手がドロドロになろうが、何でもOK。やろうと腰を上げた、それだけで、まずは合格としました。
お母さんって普段かなり大変だと思うんですよ。その中で「それだけで、まずは合格」という考えを持てること自体が素晴らしいなぁと思います。M子さんによれば、「意識→行動」ではなく「行動→意識」というお考えが根底にあってのことだそうですが、私は、この「行動→意識」という関係性が成立するには条件があると思っています。
それは「行動を起こした時のフィードバックが必ずある」ということです。
例えば、小さいお子さんがお母さんのお手伝いをしたとします。その時にお母さんから何も言われなかった(=フィードバックがなかった)らどうでしょうか?
おそらく多くの子どもは
「え?これやってよかったの?ダメなの?」
とその行動の是非について悩んでしまいます。
(初めて高級フレンチに連れて行ってもらった時の私とほぼ同じ状態です笑)
褒める、叱るを問わずお母さんから何らかのフィードバックがあってこそ、「その行動が正しかったのか正しくなかったのか」を学びます。実際、M子さんはお子さんの行動に対して「お小遣い」や”ありがとう”という「お礼の言葉」でフィードバックを行っています。
そしてこのフィードバックは、行動を起こしてから早ければ早いほど良いとされているのですが、これらについても見事に実践されています。例えば下記の部分。
“お弁当をキッチンに出す”なら、
“鞄のところに一緒に行って”
“鞄を一緒に開けて”
👩「わ!全部食べたの?キッチンまで一緒に持っていこっか!」と”一緒にキッチンまで行って”
“お弁当袋やおてふきとお弁当箱やお箸入れを一緒に分けて”
“お弁当袋とお手拭きのタオルだけランドリーボックスに持っていく”。
とにかく、一つずつの行動を一緒に起こしました。保育園の間、親に甘えたい気持ちがあるのだと思います。一緒にやると、すごく喜んでやってくれました。
5歳のお子さんと一緒に同じ行動を取ることは大変なマンパワーが必要になると思います。しかしその一方で、行動ごとにフィードバックを与えることができる、というメリットがあります。
「全部たべたの!すごーい!」
「お!えらーい!お手ふきのタオルもしっかり洗濯かごに入れられたね!」
このような行動ごとのフィードバックは、お子さんの
「全部食べることは良いこと」
「お手拭きのタオルを洗濯カゴに入れることは良いこと」
という「やっていることは正しい」という確認作業につながり、結果として自信につながります。
よく「褒めて伸ばす!」という育児本が出版されていますが、その本質は、行動に対して正しくフィードバックを行う、ということです。そういう意味で言うと、叱る、という行為も立派なフィードバックであり、育児においては、重要な行為だと思います。
(当然、叱り方には十分注意しなければいけません)
これらを意識的に行っているM子さんには脱帽です。。
最後に
今回は、M子さんのnoteを参考に”人に習慣を身につけさせる方法”について書いてみました。
人に”習慣”を身につけさせる方法
①「難しいけれど、ちょっと頑張ればできる」という課題を設定する
②行動のフィードバックを行う
これらは課長や部長向けの会社研修でも言われることがあるのですが、M子さんは5歳のお子さんに実践しています。本当にすごい。。
この他にもnoteには書かれていない、お母さん独自の葛藤や仕掛けもたくさんあるのでしょうが、私はこのnoteを読みながら、地元の剣道クラブの指導者が仰っていたことを思い出しました。
「小さな子どもたちに”試合前のお辞儀には、相手に敬意を払う意味があるんだよ”と説明しても全く伝わらない。とにかく”先生のマネをしてごらん!”と遊び感覚でも良いのでまずはお辞儀をしてもらう。そしてしばらくして”みんなこれお辞儀って言うんだけど、これってどんな理由があると思う?”と後から考えてもらう。武道の心構えを最初に理解させることも大事だけど、私は別に逆でも良いんじゃないかな。」
教育場面において「”型”から入るか”意味”から入るか」という議論は十分意味があると思います。しかし個人的には本人が行動さえ起こしてくれれば、どちらから入っても良いと思っています。その行動の「意味」なんていくらでも後付けができますし、もっと言えば「意味」は時代とともに変わっていきます。
だからこそまずは”その気にさせる仕掛け”を考え、設定していく。そのことが重要だと思いますし大人としての役割なのかな、と思います。
色々なことを考えさせられるnoteでした。みなさんもぜひ!
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