【愛しきコスメに寄せるエピソード】②
コンテンツの説明
私が愛してやまない偏愛コスメに寄せて描いたエッセイや掌編小説と併せて
「コスメの紹介」を行なっています。
自由に気ままに、をモットーに
あれこれを書き散らしながら
偏愛コスメを愛でています。
BULY】イオナイズド・クレンジングウォーター(シングル)について
【BULY】イオナイズド・クレンジングウォーター(シングル)について
【アイテム紹介】
使った感想
【veritable EAU IONISÉE】
「心地好くて、もう手放せない」
その一言に尽きます。
他になにか無いの?と思われそうなんですが、もうそれ以外思いつかないんです。
本当に良いものって、本当にシンプル。
だからこそ、使った感想でさえ
シンプルに成らざるを得なくて、
“良いものは良い”なんて乱暴な言い方もありますが、そんな風にスパッと言い切ってしまっても何ら問題がない程に“良い”んです。
Simple is Best ならぬ
Less is more とは、まさにこの事。
あと、個人的には
BULY のコンセプトがとても好きで、
紹介したイオナイズドウォーターは
勿論のこと、すべてのBULYのアイテムには
様々に魅惑的な装飾が施されています。
そのあまりにもクラッシックな佇まい。
中世の面影を残したフォルムとラベルからは
何処なく妖しげな香りが湧き立ってくる様な気さえして…しかし「だからこそ」とでも
言うべきなのか、他のどんなものより正しく
効き目のありそうな雰囲気を漂わせています。
ちなみにフランスには至る所に
“ファーマシー(薬局)”がありますが
ホメオパシーとか、
そうした自然治癒への理解と関心が
日本とはまた違った形で
生活の中に息づいてる文化があるみたい。
蛇足(櫛について)
総評
数年間、
ずっと使い続けていてもう何本目かさえ忘れてしまっているのですが、とにかく「これが無いと始まらない!」という必須アイテムである「イオナイズドウォーター」
私自身は超敏感肌なので肌状態や季節などその時々で使用する化粧水を変えていくのですが、少なくともビュリーのこのアイテムだけは肌状態の如何に関係なくいつでも使うことが出来る、まさに魔法の水なのです。
Véritable とはフランス語で
「まさに」とか「本物の」「コピーでは無い」という意味。
その名に冠した通り、
紛うことなき本物のイオンウォーター。
コットンにたっぷりと含ませたイオン水は
少しひんやりしていて心地良く、
肌も私も凛となり、
おかげさまで
すっきりとした気持ちになって目が覚めます。
こんなに気持ちの良いものって
他にあるかしら?と思うくらい大好きなやつ。
肌タイプ別のおすすめは?
朝洗顔、変えてみたいなと思っている方は
是非一度、試してみて。
きっと虜になるはずです。
【掌編小説】
愛しきコスメに寄せる物語
『春待ちの朝、紛れも無い、水と粒子と真実は茶瓶の中に』
恋人と暮らし始めて、はじめて迎える朝のことだった。これまでと、少しだけ違う風景。
目が覚めた時、見えた景色が昨日とは何処となく何か違うものの様に感じられて、そんな風に思ったことが気恥ずかしくなる。誰に咎められるわけでも無いのにその恥ずかしさから無意識に俯いてしまった。
まだ眠っている恋人を起こさぬように、ゆっくりと音を立てぬようベッドを抜け出す。
まだ少し寒さの残る、春待ちの朝に相応しい空気感。軽く乾いた室内に漂う、甘い気配。
このままぼんやりしていると、また眠りについてしまいそうな気がして「よし」と小さく呟いて、洗面所へと足を向けた。
鏡に映る自分の顔を見ることなど無く、お気に入りの洗顔クリームを手のひらで泡立てて、ゆっくりと丁寧に顔を洗う。洗い流し、漸く我が顔を見ようかと視線を鏡に向けたとき、見えたのは私ではなく恋人の顔だった。
思わず驚き、声を上げる。
ーわ!なに?いたの?びっくりした!
ーえ、なに気づいてなかったの?
ー全然!気配消して近づくとか悪趣味だよ。
ーそんなつもりは無かったんだけど。
ーほんとう?
ーうーん、ちょっとウソ。びっくりさせようかなっては少しだけ考えてました。
ーやっぱりじゃん。
互いにふふふと笑い合い、少しの沈黙。
キスをした。
朝からそんな会話をしているなんて。
信じられない気持ちになる。
ー終わった?
ーうん、終わった。
ーじゃあ、変わって。
そう言った彼女は一回、二回、と水で簡単に顔を洗っただけで、二人のためにと先日買ったばかりの真っ白なタオルで簡単に水気を拭うと、そのままあっさりスタスタと出ていった。
ーうむ。
私は少しだけ驚いたのだった。
洗顔といえば、石鹸(各種ある洗顔フォームやクリーム)を泡立てて行うものだと思っていたので、彼女のそのあまりにもあっさりとした“水だけ洗顔”を目撃し、あまつさえ彼女の肌はいつだって美しいのだ。
何となく、さっき自分で使ったばかりの洗顔クリームをじとっと見てしまう。
だけども、キッチン横に鎮座しているアレクサが時刻を知らせて朝の支度を急かすので、そんな事は傍に寄せて慌てて洗面所を後にした。
そうして“はじめての日の朝”に得たわたしの驚きは2、3日そのまま単なる“発見”として何ということもなく静かに内に秘めていたのだが、偶然にも後日その答えを知ることとなる。“秘密”といのは些かオーバーではあるが、少なくとも今までは知らなかった彼女に纏わる真実をひとつだけ“発見”したのだった。
休日の遅い朝。
それは酷く乾燥しきった春待ちの寒さが強い日のことで、明るい日差しは粒子に光を反射させキラキラというよりもチカチカとしてあて、景色全体が白く霞んでいる様に見えるほどだった。
柔らかいが酷く眩しく、美しいが、気怠い。
わたしたちはまだベッドの中にいた。
未だカーテンの掛かっていない窓から見える空を見ながら、その気怠さに身を任せたまま何を話すでもなく、話し続ける。
ー乾燥して、肌がチカチカする。
ーわかる、乾燥もだけど花粉とかもありそうだよね。
ーそれ。春は好きだし花も好きなんだけど、何分この季節は肌に厳しい…
ーあはは、確かに!
そう言いながら笑い合う。
そんな時、彼女は「あっ」と小さく声を出すと「ちょっと待ってて」とベッドを抜け出し、リモートワーク様にも使用している自室へ行ってしまった。何だろうと思いつつ待っていると、彼女は数分もしない内に戻って来た。そしてその手にあったのは真っ白な真綿のコットンが入った透明のガラス瓶ともう一つ。美しくクラッシックな雰囲気の書体で描かれたラベルが貼ってある見慣れない茶瓶であった。まるで何かの薬品でも入っていそうな雰囲気だ。
ーこれ、使ってみる?
そう言ってVéritable Eau IONISÉE と書かれたその茶瓶を差し出した。
ー朝さ、顔洗うときに石鹸使っちゃうと乾きすぎるから、水でサッと拭った後はこれでスッと拭いてそれから化粧水とかつけてる。もし良かったら、どうぞ。
少しだけ、いたずらっ子の様な笑顔を含ませた彼女をわたしは少しばかりの驚きと共に見てしまう。
ーふふふ。ありがとう。
だけどわたしも少しだけ。
小さな笑い声と一緒にありがとうを伝える。
ー貸して貸して!
ちょっとだけ態とらしくはしゃいでみせる。彼女の手にあるコットン入りのガラス瓶と真実の入った茶瓶を受け取り洗面所へと向かって行った。
鏡の前で、柔らかい目をした子どもの様な己を見つめて思う。
「こうして、一緒に暮らしてはじめて知っていくことが沢山たくさんあるのだろう」
その事実は、ひどく私をわくわくした気持ちにさせたが、どうしたって常に抱えているもう一つの思いが去来している事もまた事実であった。
「例え一緒に暮らしていたとしても、知り得ない真実の方が多いのかも知れない」
そして、それは私自身を何より満足させる真実だった。
真実を全て詳らかにする関係程、詰まらない関係は無い。
秘密と愛情の間には相関関係など存在すべきはずも無く、だからこそ私たちは全てを分かち合う必要など感じない。
目に映るその人が、まさに紛れも無くわたしの愛する恋人その人である、ということが何よりも重要なのだ。
なんとなく、クリスティーを読みたくなったが一先ずは顔を洗ってしまおうと、蛇口から出る春の水に躊躇なく挑んで触れたその瞬間、
余りの冷たさにもう一度驚いた。
けいく