目で見て、肌で感じたシリコンバレー vol.3
こんにちは。Colyzonのかげすーです。
今回もシリコンバレーでの体験や学びについてシェアしていきたいと思います。最後までお付き合いいただけると嬉しいです。
Day3~シリコンバレーを知る1日~
この日から本格的にプログラムが始まりました。
手書きメモ派なので、今回もノートを持参したのですが、一言一句…はさすがに追えていないものの、約1週間でかなりのメモ量になっていました。
周りの人から、よく「メモの量が半端ない」と言われるのですが、書かないと忘れる+その人が発する「言葉」に興味や関心があるらしく。子どもの頃から割とそんな感じではあったのですが、就活生くらいからその傾向がより顕著になって、ここ数年で更に進化したようです。
レクチャー:シリコンバレーをどのように日本人が活用すべきか
プログラムの1本目は座学から。前回の記事でも少し紹介した、本プログラムの主催者であるHiro(桝本博之)さんから、シリコンバレーやアントレプレナー思考についてのレクチャーを受けました。
Hiroさんは、1996年からシリコンバレーに移住し、ベンチャー企業での勤務を経て2000年に独立。以後、自身で創業した会社を複数社EXITした経験のある起業家。
今回のプログラムを主催しているSVJCも連邦政府に認められているNPO法人で、その発起人でもあります。他にも、出身地である富山県の行政に関わる仕事や大学教員を務めるなど、日米双方でマルチに活躍されています。
そんな様々な経験を経て、今もなお第一線で活躍されているHiroさんの話には、単に説得力では簡単に片付けられないような”言葉のチカラ”がありました。本当はそのすべてをお伝えしたいところですが、個人的に印象深かった言葉をその他の内容と絡めながらいくつかピックアップできればと思います。
イノベーションとは「世の中の常識を覆すこと」
日本語では「技術革新」と訳されることが多いイノベーション。もしくは、シュンペーターが提唱した「新結合」という言葉にピンとくる人も多いことでしょう。私自身もそう思ってきた1人です。
でも、どこかで独り歩きしている印象が強いのもイノベーションという言葉ではないでしょうか。いわゆる大企業や新進気鋭のスタートアップが大規模な投資あるいは資金調達をして、世の中に革新を起こす時に使われる言葉。なんとなくそんなイメージがありますよね。
しかし、シリコンバレーでは「イノベーション=非常識」と捉えられているそうで、単なる技術的な革新だけではなく、トレンドの変化も包含して広く解釈されているそうです。それゆえに、イノベーションは企業だけがやるものではなく、一人一人が身近なところで起こすことができるものだと言います。
これをもう少し平たく言うのならば、イノベーションとは「前例のないことにチャレンジすること」。そして、そのマインドこそが「アントレプレナーシップ」そのもの。これも日本では、「アントレプレナーシップ=起業家精神」と訳されているためか、一見起業家だけが身に付けるべきマインドだと思われがちですが、世の中あるいは自分や周りを少しでも良くするために全ての人が持つべきマインドだと言えます。
イノベーションやアントレプレナーシップってなんとなく、すごい人にしか起こせないものだと思ってしまいますが、全然そんなことは無いんですよね。とはいえ、年齢が上がるにつれて変化が億劫になってしまうこともまた事実。だからこそ、今回のプログラムでも「プロアクティブに、自分の周りからどんどんイノベーションを起こしていこう」というのが全ての起点になっていたのだと思います。
Silicon Valley is a mindset, not a location.
シリコンバレーは場所が良いのではなく、”考え方”が素晴らしい
世界中の起業家やエンジニアがこぞって集結する場所がシリコンバレー。
そのルーツは、1800年代後半のゴールドラッシュに起因するとのことで、「開拓者精神」を持った人たちが世界中から集まったそう。その中には多くの日本人がいて、「ワイン王」と呼ばれた長澤鼎さんのほか、農地開拓で活躍された方もたくさんいらしたとのことでした。
※参考:サムライから「ワイン王」へ 薩摩藩士・長澤鼎が築いたカリフォルニアワイン伝説:朝日新聞GLOBE+ (asahi.com)
そんな開拓者精神を持つ人が多く集まるこの街は、世界中からお金と技術が集結し、世界屈指の起業家を輩出する地域となりました。
それもあってか、シリコンバレーに行けば…と考えて海を渡ってくる人も多いそうですが、それは幻想に過ぎず、”失敗を失敗と捉えないマインド”だったり、”一人ひとりの考えを尊重する文化”だったり、様々な国や人種の人が集まるからこそ生まれる空気感こそが集う人のマインドを醸成しているとのことでした(住民の4割弱は移民で構成されているそうです)。
ところで、マインドがそこまで重要視されているのはなぜでしょうか。理由は明確で、どれだけ優れた技術や知識(スキルセット)があったとしても、強い心や自分の考え(マインドセット)を身に付けていないと、そのスキルは宝の持ち腐れになってしまうからだと言えます。
これは、スポーツ選手で考えると分かりやすいと思いますが、誰にも負けないようなスキルを身に付けていたとしても、本番で思うような結果が出ずに苦しんでいる選手を見たことがあるかと思います。数か月前に、2023年のWBCでヘッドコーチを務められた白井一幸さんの講演を聞く機会があったのですが、そこでも同じようにメンタルの重要性が説かれていました。
話を戻すと、シリコンバレーにはそんなアントレプレナーを育成するためのエコシステムが確立されているので、誰もがやりたいことに、しかも何度でも挑戦できる環境があると言います。だからこそ、どんどんチャレンジできるし、失敗もする。合言葉は「Fail Fast(さっさと失敗する)」。
この話を聞きながら、これまで過ごしてきた環境とつい比較してしまったのは言うまでもありませんが、改めて今後の自分自身のスタンスややりたいことについて深く考えるきっかけとなり、とても良い時間になりました。
ロサンゼルス発祥のハンバーガー店「In-N-Out」でランチ
そんなアツい話を聞いた後のランチは、アメリカと言えばハンバーガー!ということで、ロサンゼルス発祥のハンバーガー店「In-N-Out」でランチ。
ハンバーガー自体は3種類とシンプルでありながらも、そこから様々なカスタマイズが行えるとのことで、その日の気分によってアレンジできるのは面白い仕組みです。また、現地の飲食店としては珍しく、チップが不要というのにも驚きました。
この日はチーズバーガーをチョイス。カスタマイズにはチャレンジできなかったのですが、次回こそは必ず…!
フィールドワーク:シリコンバレーめぐり
この日の午後は、シリコンバレーの企業めぐりでした。
まずは、Intelの本社施設に併設されている「Intel Museum」へ。
…行ったのですが、この日は「プレジデントデー」と呼ばれる、アメリカの祝日にあたる日だったらしく施設はお休み。それでも、せっかくならばとIntelロゴとともに記念の写真を。(ちなみにマガジンのサムネイルに使っているEXPERIENCEという写真もこのロゴのすぐ近くにあったものです)
リーバイス・スタジアム
ということで、思いの外時間が空いてしまったこともあり、Intel本社の近くにあるNFL「サンフランシスコ・49ers」の本拠地である「リーバイス・スタジアム」を見学(施設自体はこちらも休館)。
49ersといえば、昨シーズンのスーパーボウルで準優勝し、アメフトについては無知の私でもチーム名は聞いたことがある強豪チーム。午前中のレクチャーの中で49ersの話が上がっていたこともあり、スタジアムを見れたことはラッキーでした。
スタジアム正面の入口では、いたる所でTOYOTAの名前を見かけ、なんだか誇らしい気持ちになりましたね。ちなみに、現地では基本的にUberを使って移動していたのですが、TOYOTA車に遭遇する確率が結構高かったように思います。
そんな寄り道を挟みながら、目的地の一つであるGoogleへ。まずは一般の人でも訪れることができる「Google Visitor Experience」を見学。
昨年の10月にオープンしたばかりとのことですが、オシャレな内装とともに歴代のGoogle pixelが展示されていたり(その場で購入も可)、GoogleやYouTubeグッズが販売されていたりと、大人も子どもも楽しめる施設でした。
その後は敷地内を散策し、建設中の新社屋も横目に眺めてきました。さすがにオフィスには社員や一部の関係者しか入れないとのこと(昔は社員と一緒に一般の人も一部の施設には入れたとか)ですが、それでもオフィス内の敷地を開放しているなんて、日本ではなかなか体験できないですよね。
Googleでひとつの街が作られていると思えるくらい広大な敷地には、Googleカラーの自転車が無料で貸し出されているほか、ビーチバレーのコートがあったり(社員が実際にプレーしていることもあるそうです)、子どもが思いっきり走り回れそうな芝生があったりと、とにかく開放的な気分になるような空間設計がなされていました。
Apple
そして、Googleを一通り見学した後は、同じくGAFAの一角をなすAppleへ。こちらもさすがにオフィスへは入れなかったのですが、本社施設に併設する「Apple Park Visitor Center」に向かいました。
全面ガラス張りの施設には、Googleとは違う洗練されたオシャレさがあるのに、それでいて遊び心も感じられるという見事なつくりになっていました。(トップ画像の楽譜のようなものも実はAir Pods)
施設内では様々なプロダクトに触れることができ、2月2日に発売されたばかりの「Vision Pro」も展示されていましたが、予約制とのことで残念ながら装着できず…。それでも、祝日ということもあり、館内は老若男女様々な人たちで賑わっていました。
インタビュー:Apple本社勤務 秋場さん
施設内を一通り見学した後は、併設されているカフェコーナーにてApple本社でエンジニアとしてご活躍されている秋場さんとの対話の時間。秋場さん自身のキャリアやAppleのこと、そしてこれからについてたっぷりお話を伺いました。ちなみに、シリコンバレーにあるAppleでは、120人ほどの日本人が働いているそうです。
こちらでも印象に残った言葉を1つだけご紹介。
”良いプロダクトをつくる”ことに特化
マーケティングに携わった経験のある人なら、一度は聞いたことがるであろう「マーケットインorプロダクトアウト」論争。ビジネススクールの講義の中でも散々議論になりました。
Appleはこの議論で引き合いに出されることが多い企業の一つです。
実際にどういったプロセスで製品開発がなされているのかを伺ってみましたが、その答えは「マーケットインかプロダクトアウトはプロセスの違いであって、やりたいことをやる(作りたいものを作る)のがAppleのモノづくり」というものでした。そして、そのためにUI(ユーザーインタフェース)やデザイン性を徹底的に追及しているとのことでしたが、それらは全て「良いプロダクトをつくる」という社員間の共通認識があるからこそ。
スティーブ・ジョブズが亡くなった後でもその信念はずっと受け継がれていて、技術の話が分かる人がマネジメント職にも就いているそう。そのために、役職者であっても常に知識のアップデートは怠らないという社風があるとのことでした。
私がこの話を聞いて率直に感じたのは、Appleの「顧客価値の追求に対する圧倒的なこだわりの強さ」です。裏を返せば、エンドユーザーに価値を提供するためには、マーケットインやプロダクトアウトなどという型に捉われるよりも、目的の達成に最も有効なプロセスをその時々で選択していくのが大事ということだと理解しました。
これはつまり、「手段を目的化せず、目的達成のために最適な手段を使う」ということ。戦略の基本であり、頭では分かっていながらも、徹底できていない場面がまだまだ多く、改めてその重要性を認識させていただいた時間となりました。
まとめ
という感じであっという間に1日が終わったような気がします。
視界に入るもののすべてがとにかく新鮮で、それでいて自分がこれまでやってきたことやこれからやりたいこと、もっと良くできることなんかをひたすらグルグル回しながら考えて過ごす時間は貴重でした。
翌日以降分についても、長文にはなりますが・・・このような感じで(もう少し写真多めで)まとめていければと思いますので、最後までお付き合いいただけると嬉しいです。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。