大阪の実家に帰った。
少し時間があったので、
久しぶりに生まれ育ったまちを
ブラブラしてみる。
都会の真ん中で、
時を押し留めたように、
昭和のにおいが残っている。
私の35年間の思い出も、
路地の角かどに染み付いている。
*
子どもの頃、
走り回っていた場所
居場所だった図書館
家族で行った馴染みのお店
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改めて歩いてみると、
昔からあったはずなのに、
知らなかった風景に驚く。
当たり前で、見過ごされるもの。
私がよそ者になった証でもあるのか。
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そして、
かつてお世話になったお店は抜け殻となり、
通い慣れた場所は、過去を脱ぎ捨てていた。
一見変わってないようで、
目を凝らしてみると、着実に時は流れていた。
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私が少し目を離した間に、
私の知らないまちになっている。
思い出が洗い流される。
そんな寂しさが込み上げてくる。
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今は父がひとり暮らしているまち。
このまちとつながる糸が細くなっていく。
そして、いづれ切れてしまう時がくる。
やむを得ないが、切なくもある。
*
「ふるさと」と呼ぶには、
懐かしさを留めてくれないまち。
今いる場所に、私は根を張るしかない。