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記事一覧
『見てたから、ずっと』【140字小説】
「私が行きたい場所当ててみてよ」
「試すみたいなの苦手なんだ」
「いいからいいから」
食べたいもの。欲しいもの。君のことなど何も知りゃしないのに全てのクイズに正解する。
「凄い! 何でも知ってるんだね」
「僕のことは聞かなくていいの」
彼女は一等微笑んだ。
「大丈夫、全部知ってるから」
『スキー場にかかる橋』【140字小説】
「スキー」と聞くと、思い出す風景がある。
白銀の世界にかかる虹の橋。
「虹だ! 」という声があちこちから聞こえる。
皆一様に足を止め、空を見上げている。
一面の雪と吐息はどこまでも白く、まるであの橋に色を奪われたかのようだった。
色を持つスキーウェアは代わりに心を奪われたらしい。
『怖いおじさん』【第0回カクタノコンテスト】
「怖いおじさん、眼鏡白いね」
笑い声を向くと、母親らしき人が頭を下げた。
子供は内緒話のつもりのようだ。
隣の"怖いおじさん"は、無言。
「あの」
なんと言えば。迷った一瞬。
"怖いおじさん"はフーンと鼻息で眼鏡を曇らせる。
ああ、そうだ。
私もこの上司を"怖い"と思っていた頃があったなあ。