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ぬけがけ夜ふかし

最近、困っていることがある。

双子の娘たち(7歳)が深夜に起きてこようと画策しているのである。枕もとにおまじないの紙を置いたり、わたしに隠れて目覚まし時計の針を早めたりして、なんとか0時前後に起きてやろうと頑張っている様子。

ふだんの彼女たちは眠りが深く、長時間寝てくれる。21時に就寝すると、翌朝7時まではだいたい眠っている。たまに長女が23時なんかに目を覚ます夜があるけれど、すぐに再入眠してくれる。

しかし、この「長女がたまに目を覚ます」のが争いの種になった。ある日、22時半に起きた長女はリビングへトコトコと歩いてきて、わたしと夫としばらくおしゃべりしてからまた眠りについた。その後は朝までぐっすり。おかげでわたしはゆっくりお風呂に入れ、パックもできた。夫は焼酎のお湯割りを飲みながら映画鑑賞としゃれこんでいた。

ただ、翌朝、長女は次女に対して自慢を炸裂させたのだ。

「長女ちゃんさーあ、昨日の夜、一人で起きてママとパパと仲良ししたんだよーん」

なんですと?! 次女の顔にはそんな台詞が浮かんでいるように見えた。一度眠ったらなかなか起きない次女にとって、眠りが深い時間帯に起きて何かをやるなんて、どうしてもできない芸当なのである。しかも、一人だけママとパパに甘えただなんて! 「きぃー」という次女の心の声が、わたしには聞こえた気がした。

以来、娘たちは、夜中に起き出してママとパパと特別な時間を過ごしてやろうと躍起になっている。なぜか長女も次女も、である。

先日は、おまじないの効果が現れたのか、めったに起きない次女が深夜に本を読んでいたわたしのところにやってきた。そして、ひとしきりわたしとのおしゃべりを楽しんだあと、ご満悦の様子で子ども部屋に戻っていった。

もちろん、翌朝は次女による自慢の応酬が繰り広げられた。

「次女ちゃんも昨日起きて、ママとおしゃべりしたもんねー!」

こういうことを繰り返し、最近の娘たちは夜ふかしがしたくてたまらなくなっている。母親としては、もうゆっくり寝てほしいと心底思っているのだけれど、二人の様子を見ているとかわいくもあって複雑な心境である。

彼女たちが赤ちゃんの頃は、よく眠ってくれる娘たちにとても助けられた。夜泣きがひどかった一時期を除いて、わたしは夜に仕事を進められたし、ささやかなリフレッシュもできた。

だから今くらい、娘たちの夜ふかしに付き合ってみてもいいかもしれない。お互いにぬけがけしてやろうとムキになっている二人の姿は愛おしい。こんな時期を楽しまなくてどうする、という気もしてくる。

そのうちに彼女たちは親が起きていてもいなくても夜ふかしをするようになるだろう。中学生の頃のわたしがMBSラジオの夜番組『MBSヤングタウン』、通称ヤンタンに夢中になったように、彼女たちも自分だけの夜の楽しみを見つけるだろう。

だから、ぬけがけの夜ふかしはたぶん今だけのお楽しみなのだ。

さあ、今夜はどちらが起きてくるだろうか。早めにお風呂を済ませて、リビングで待ち構えよう。


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