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小説「棺桶少女」

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短編小説「棺桶少女」を更新・掲載していきます。不思議な、でもほんのり温かい雰囲気をお楽しみください。
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記事一覧

エピローグ 終(つい)の街・丘の上の家へ

 少女は門を見上げていました。  町の入り口の、大きくて重そうな鉄の門です。開かれた扉を…

海月大和
2年前
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5.森の中で/女性騎士

 あ​るとき、少女はゆらゆら揺れる焚き火を眺めていました。 ​ 街道を少し外れた森の中。…

海月大和
2年前
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4.街道の真ん中で/傭兵と盗賊

​ あるとき、少女は街道の真ん中にいました。 「​やぁやぁ、お嬢さん。一人でどこへ行くの…

海月大和
2年前
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3.工房の中で/木工屋の男

 あ​るとき、少女は木工屋の工房の中にいました。 ​ 棺桶に付いていた木の車輪が、荒れ道…

海月大和
2年前
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2.テントの中で/ナイフ投げの娘

 あるとき、少女はサーカスの一団とともにいました。  団員用テントの隅っこで、椅子代わり…

海月大和
2年前
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1.馬車の中で/老夫婦

 あるとき、少女は乗合馬車の中にいました。 ​ 心優しい老夫婦が、一人きりで道を歩く少女…

海月大和
2年前
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プロローグ 旅の途で/露店の店主から

 がらがらと車輪を転がし、少女は歩きます。 ​ 小さな体の倍はありそうな棺桶を後ろに連れて、木の車輪をがたがたと鳴らしながら、少女は歩きます。 ​ くりっとした大きな銀色の瞳を真っ直ぐ前に向け、歩きにくそうなドレスの裾を引きずって、少女は歩きます。 ​ 毛先の跳ねた長い金色の髪を揺らし、手にはしっかりと棺桶を引くための紐を握り締め、少女は歩きます。 ​ 行く先々の町で、少女は好奇の目に晒されました。 ​ しかし、少女はそんなものは気にしません。ただ前を向き、ひたすら