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ホラー映画は時代を映す鏡?! 20年来のファンが語る、その深層にひそむ魅力

こんにちは、広報担当のさおりすです。
今回は、ホラー映画ファン歴20年の森さんに、ホラー映画の魅力やトレンド、おすすめのホラー映画について語っていただきました。「ホラー映画=怖い」との印象しかなかった私ですが、今回森さんからさまざまな視点でホラー映画を解説していただいたことで、ホラー映画の印象が変わりました。今度、森さんおすすめのホラー映画をまずは一本観てみたいと思います。
ホラー映画が好きな人もそうでない人も、ぜひ読んでみてくださいね!

大学時代の同級生とリレーマラソンに出場しました

*プロフィール*
森 篤史(もり あつし)
SDT株式会社/Chief Strategy Officer
日本IBM、デロイト トーマツコンサルティングを経て、2021年よりSDT株式会社のChief Strategy Officerに就任。生成AIや量子技術といった先端テクノロジーを活用するための戦略立案と実行を統括している。 プライベートでは、シングルマザーを支援する非営利団体にプロボノとして参画しており、ITの幅広い知見を活かして ITチームのリーダーとして活動している。


ホラー映画の魅力とトレンドの変遷

ーーいつ頃から ホラー映画を観ているんですか。

小さいころから金曜ロードショーなどで「13日の金曜日」や「エルム街の悪夢」を観ていたのですが、意識して観始めたのは社会人になってからです。2004年公開の「ソウ」を見た時に、すごい作品だと感じたのがきっかけで、ホラー映画を観るようになりました。監督はジェームズ・ワンという有名な方です。もう20年以上、ホラー映画を好んで観ています。

ホラー映画の世界では、どんどん新しい表現方法やトレンドが生まれ、古いフォーマットから進化しているジャンルだと感じています。

ーーどんどん新しいトレンドが生まれてくるんですね、IT業界と似ているようにも感じます。

ただ、IT業界と映画業界では少し事情が異なると思っています。

基本的にITの世界では、新しい技術は完全な上位互換として登場するため、常に最新のものを使うのが得策なのです。一方、映画の世界では、古い作品の持つ魅力や原点の良さが存在すると私は考えています。

例えば、かつてのマウスといえば、ケーブルで接続する有線タイプが主流でした。しかし現在では、無線接続のマウスが当たり前になっており、有線タイプに戻ることは考えられませんよね。これはテクノロジーの進化によって、完全に新しい方式に移行した一例です。

ITの世界では、一度新しい技術が登場すると、もう昔の方式には戻れないのです。

しかし、映画の世界では違います。そのジャンルの原点とも言われる作品が持つ力強さや魅力は、時代が変わっても色褪せないものがあるのではないでしょうか。

ーー最近のホラー映画のトレンドはありますか。

最近のホラー映画のトレンドは、悪霊など恐怖の対象の姿を直接見せないことです。観客の想像力を刺激し、見えないことによる恐怖を煽るような手法が用いられています。間や空間の使い方がうまい作品が、高い評価を得ています。

優れた映画作品を生み出すためには、監督、脚本、撮影などの要素が高いレベルで融合していなければなりません。日本では、監督や俳優が注目されがちですが、本当に素晴らしい作品を作るには、脚本家や撮影クルーも監督と一丸となって機能する必要があります。これは映画に限らず、あらゆるモノ作りに共通することだと言えます。ビジネスの世界も同じですよね。監督や経営者の役割は非常に重要ですが、監督や経営者だけでは良い作品やサービスは生まれないと考えています。

話が外れましたが……(笑)
ホラー映画は、新しい表現方法や斬新な切り口を取り入れながら、常に進化を遂げています。今後も、新しく世に出てくるホラー作品から目が離せません。

ーーホラー映画の魅力はどんなところですか。

映画やドラマは人の物語を作り、人の心に訴えかける素晴らしいものだと思っています。その作品を作る行為自体をリスペクトしているんです。

作品には作り手の人生経験や個性、好みが反映されていて、どのような作品を好むかは人それぞれに異なります。私は恋愛映画が苦手ですが、ホラー映画とあとはゾンビ映画には惹かれます。

ホラー映画は単に怖いだけでなく、常に新しい表現方法やトレンドを取り入れながら進化を続け、その時代の価値観や社会情勢を反映しつつ、観客の心を揺さぶり続けます。ゾンビ映画のように、ジャンルの中でもトレンドの移り変わりが見られ、現代的な解釈が加えられていく点も興味深いです。

ゾンビ映画の変遷を見ると、以前はゾンビ自体の怖さに重点が置かれていましたが、近年では、ゾンビを取り巻く人間ドラマにも焦点が当てられるようになりました。ゾンビ映画にも、しっかりとしたストーリー性が求められる時代になったのです。ドラマになりますが『ウォーキング・デッド』は、ゾンビが蔓延し荒廃した世界を生きる人々の物語であり、世紀末系ゾンビ作品の代表例と言えるでしょう。

私は、Ciatrの「ホラー映画おすすめランキング」などのWebサイトをこまめにチェックし、新作情報を入手しています。改めて見ると2021年から2022年はホラー映画が豊作の年であったことから、このジャンルの人気の高まりが伺えます。

ーー歴代No.1のホラー映画はありますか。

ホラー映画は新陳代謝が早いので、ナンバーワンを選ぶのは難しいですね。でも、強いて言うなら「レザーフェイス 悪魔の生贄」でしょうか。チェーンソーを持って仮面をかぶった男に追われ、針で天井にぶら下げられるシーンなど、圧倒的な恐怖を感じさせる作品です。

基本的に私は石橋を叩いて渡るようなタイプなので、ホラー映画のように物語の世界に刺激を求めているのかもしれません(笑)

ーーホラー映画には、国ごとの特徴があるとおっしゃっていましたね。

アメリカ系のホラー映画は、比較的分かりやすい怖さを押し出す傾向にあります。一方、アジア系のホラー映画は多神教の影響だと考えていますが、土着的で独特の雰囲気があり、じわじわと怖さが迫ってくるような特徴がありますね。最近ではアジア系のホラー映画が熱いです。7月に公開される台湾初の「呪葬」もかなり楽しみにしています。

ーー森さんのおすすめのホラー映画を教えてください。


〈配信で観ることができる最近のおすすめ映画〉
アジア
2018年 コンジアム(韓国)
2021年 哭悲/THE SADNESS(台湾)
2021年 女神の継承(タイ)
2022年 呪詛(台湾)

サスペンス 
2021年 LAMB
2022年 X  
2022年 バーバリアン

台湾の「哭悲」は、非常に鮮烈な描写が特徴で、ここでは言えないようなショッキングな内容が盛り込まれています。行きつけの美容室の担当の方が、私とおなじく熱狂的なホラー映画ファンなのですが、これまで相当数の映画を観てきた人でも「あの描写はすごかった……」と話すくらい印象的でした。


おすすめの監督と代表作
ジェームズ・ワン ソウ、インシディアスシリーズ、死霊館シリーズ
リー・ワネル アップグレード、透明人間
ヨン・サンホ 新感染 ファイナル・エクスプレス、地獄が呼んでいる、寄生獣 −ザ・グレイ−



ジェームズ・ワン監督は、「ソウ」の監督と脚本を務めており、彼の輝かしい経歴はこの映画から始まりました。限られた空間で繰り広げられるシチュエーションスリラーです。男2人が手錠で拘束され、地下室に閉じ込められるシーンから物語が始まります。つい最近も改めて観てみたのですが、この映画を初めて見たときの衝撃は強烈で、今でも忘れられません。


客観的思考と感情表現の狭間で 

ーーホラー映画について客観的に分析されているように感じます。ホラー映画を観て感動することはありますか。

 映画を観て感動することは、ないですね。好きな作家の村上春樹の作品を読んでも、いい作品だったなと思うことはありますが、感動して泣くことは基本的にありません。ーーそもそも感動したり、心が揺れ動いたりすることがあまりない気がします(笑)

例えば、「女神の継承」を見たときも、本当によくできている素晴らしい映画だと思いました。しかし、物語の中に入って主人公の気持ちになって感動したりすることはありません。

映画や作品について、私はあくまでも客観的に観ているんでしょうね。ホラー映画に感情移入していたら、心の中で死にまくっていることになりますからね(笑)

ーー感動したり、感情移入することってないですか。

本を読んで心が動くことはありますが、感情移入や共感というのは、理解できないですね。だから、私は感動しないのかもしれませんね。基本的には、人は人、自分は自分だと思っています。自分の感情をなにかの形で表現することが不得手なのかもしれませんね。

ーー最近、嬉しかったことは何かありますか?

特別なことではないですが、家族3人で笑い合えることが何より楽しいですね。

ーー今日、初めて森さんの気持ちを聞けた気がします(笑)

私は人生においてできるだけ山谷を作りたくないんです。感情の波や行動の波をできるだけ避けて、平穏に過ごしたいと思っているんです。

ーーホラー映画は、すごいアップダウンがあるイメージです(笑)
 ホラー映画はあくまでも物語の世界ですからね。人生においては、過度な刺激は必要ないと思うんです。だから、ホラー映画を人生のほどよいスパイスとして捉え、様々な変化を楽しむような感覚で観ているんでしょうね。

ーー自分を見る視点も客観的ですね(笑)物事を客観的に見るのは、子どもの頃からですか。

子どものころは大変でしたよ(笑)20代前半の頃も、若かったですね……。コミュニケーションが苦手だったんです。就職して社会に出て、いろいろな経験を積みました。仕事で成果が出てくると、ようやく自分のコミュニケーションにも自信がついてきましたましたね。そうして、今の自分ができてきた感じです。

ーー仕事を通して身につけられたことがあるのですね。

そうですね。新卒でIT企業へ入社して、2社目で大手コンサルティング会社へ転職しました。そこで7年ほどコンサルタントを経験するなかで、多角的に物事を見て、分析することを徹底して身につけました。

コンサルタントの仕事は、お客さんがやりたいことや課題を紐解きながら、それを実現するために必要な手段やツールを一緒に話し合い、実装していくようなイメージです。

それ以来、なにごとも多角的に分析する癖がついているように思います。家庭でコンサル思考が発動すると嫌がられるので……(笑)できるだけ脱力するようにしています。

ーーコンサル思考が標準装備されているのですね(笑)コンサル思考を実装するために手放したものはありますか。

新しいものを得るためには、必ず一定のアンラーニングをした上での、ラーニングが必要だと思っています。新しい職種や環境へ入っていくタイミングでは、古い考えを一旦置いて、新たな知識やスキルを実装し直すことを繰り返してきました。その過程で置いてきたものはあるのだと思います。でも、得たものの方が大きいですね。

SDTで新しい事業やサービスを作っていく上でも活きています。

乾さんと一緒にビジネスをやると決めて良かったなと心底思います。自分たちでサービスを作っていくことが楽しいし、面白いですね。なによりも、新しい経験ができるので。

ーー自分たちで作る楽しさがあるのですね。

そうですね、楽しいですね。私は昔から自分で何かを作ることが苦手だったんです。だから、映画監督にしても、作家にしても、なんでもひとりで作ってしまう素晴らしいエンジニアの乾さんにしても、めちゃくちゃリスペクトしています。

自分ひとりでは事業もサービスも作ることができないのですが、ホラー映画のように新しい表現方法やトレンドを取り入れながら、たくさんの人に喜んでもらえるものをチームで作っていきたいですね。


日本科学未来館を訪れた時の写真です