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9月に読んだ本

さて、クソ暑い9月でしたが、読書の秋でしたね!
この月はイヤミス祭りです。そんな祭りは嫌だ。


巌窟姫/近藤史恵

仲の良かったアイドル仲間の友人が自殺し、イジメの疑いをかけられている主人公の蓮美が真実を追うミステリー。イヤミス。

人間の汚い部分が見えて胸糞だったけど、事実が明らかになっていく過程がおもしろかった!

「芸能人としての蓮美は死んだのだ」、と主人公の蓮美が開き直って動いているおかげで(それも可哀想なんだけどね…)展開がサバサバと進んでいくし、途中から協力関係になるチホちゃんが良いキャラしているおかげで暗くてジメジメドロドロしていないのがよかった。

印象に残った台詞

「ドラマのお仕事だとさ。いい人はいい人で、悪い人は悪い人って決まってたじゃない。いい人が実は悪い人だったり、その逆だったりはあってもね。でも、現実は違うのね。日替わりなの」
「日替わり?」
「日替わりだよ。午前と午後で変わる日もあるけど」

巌窟姫

まじでそれ!!!

これを書くために1ページ目を読み返して、ハッとした箇所があった。2周目を読み返すのもいいかもしれない。


罪の余白/芹沢央

こちらもイヤミス。学校のベランダから転落した娘の死は真相を追う父親の話。果たして本当に自殺なのか?章ごとにクラスメイトの視点、娘視点、父親視点で語られるのでサクサクと読み進められた。

こちらも胸糞(というか直接的原因となったクラスメイトの女がただただムカつく)だったけどおもしろかった。

芹沢央さんの作品は長編の方が好きだな〜。
映画化もされてるみたいです。


斜陽/太宰治

綺麗な文章だった。
敗戦後の没落貴族の母と姉弟の革命のお話。

勝手に太宰の自伝かと思ってたら女の子が主人公だった。無知。

感想:お母さま一家がかわいすぎる

以下冒頭。

朝、食堂でスウプを一さじ、すっと吸ってお母さまが、
「あ」
 と幽かすかな叫び声をお挙げになった。
「髪の毛?」
 スウプに何か、イヤなものでも入っていたのかしら、と思った。
「いいえ」
 お母さまは、何事も無かったように、またひらりと一さじ、スウプをお口に流し込み、すましてお顔を横に向け、お勝手の窓の、満開の山桜に視線を送り、そうしてお顔を横に向けたまま、またひらりと一さじ、スウプを小さなお唇のあいだに滑り込ませた。

斜陽

もうお母さまのかわいらしさがこの冒頭で理解させられる…。

あと、物語後半に出てくる直治の文章が好きだった。

人間は、みな、同じものだ。
 なんという卑屈な言葉であろう。人をいやしめると同時に、みずからをもいやしめ、何のプライドもなく、あらゆる努力を放棄せしめるような言葉。
(中略)
なぜ、同じだというのか。優れている、と言えないのか。奴隷根性の復讐。

斜陽

なんか、主人公のかず子ちゃんも恋と革命!戦闘、開始。ってふんすふんすしててかわいいし、直治も試行錯誤と行動を繰り返して深みでもがいてる感じがかわいいし、一家かわいいな…と思った。

そして太宰治の文章って綺麗だなー。
人間失格もおもしろかったしもっと読んでみたいと思った。

青空文庫でも読めるのでぜひ。


昨日の海は/近藤史恵

爽やか:イヤミスが9:1のミステリー。

巌窟姫に続き近藤史恵さんです。

海辺の町で暮らす、高校生の男の子が主人公。
叔母とその娘の小学生の女の子が越してくるところから物語が始まります。

祖父と祖母が無理心中をした理由と、どちらが睡眠薬を飲ませて決行したのか?を探るミステリー。

ミステリーパートもそうなんだけど、クラスメイトの女の子と壁に絵を描いたり、越してきた女の子の双葉のトラブルを聞いて仲良くなったりするパートがおもしろかった…!ぜひ「海町の写真館シリーズ」のような感じで青い鳥文庫でシリーズ化してほしい。


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