4年ぶりに、車椅子の二女とショッピングする
もうそろそろ、二女と一緒にお出かけしてもいいんじゃないか、と、やっと思えるようになった。
この4年間は、娘を数回ほど実家や冠婚葬祭には連れて行ったが、外出といえば、病院か施設にしか連れて行ってやれなかった。
繰り返されてきた同じような日常から、彼女がちょっとはみ出せる日を、ずっと待ち望んできた。
あと数日で娘は26歳になる。
だから、誕生日プレゼントを買いに、夫と一緒に娘をショッピングセンターに連れて行くことに決めた。
プレゼントをいろいろ考えたが、例年通り洋服にしようと思った。
娘はこの10年くらいほとんど身体のサイズは変わらないし、あまり汚すこともないので、新調する必要はない。
けれど、イマドキの真新しい洋服を着せて、やっぱり可愛くしてやりたい。
私たちが向かったのは、ちょっと我が家から遠いのだが、数年前にできたイオンモールだ。
そこは、娘のような車椅子の人がとても利用しやすいように、よく考えられている。
駐車場は、屋根付きの障がい者専用のものが10台分ほどきちんと整備され、そこから店の入り口までずっと屋根が続いている。
だから、雨降りでも、直射日光が強過ぎる日でも、とっても助かる。
店内も広くて通路がゴミゴミしていないので、ストレッチャー式の大きな車椅子でも、まわりに気を遣わずに移動できるのが、ありがたい。
この商業施設は、コロナ禍前にも娘を連れて数回利用していた。
以前なら、フードコートの片隅で娘に栄養を入れながら、私たちも簡単にランチを済ませて、数時間ならぶらぶらとお店を巡ることもできた。
しかし、娘の体力も落ち、やっぱり感染症が怖いので長居はできない。
乗り降りも含めて、店内での滞在時間を1時間までと決め、目的の洋服屋さんにだけ行くことにした。
4年ぶりのお買い物。
娘はニコニコの目で、キラキラの店内の照明や、色とりどりの品物たちを、楽しんでいるようだった。
マスクの下の口は笑いっぱなし。
彼女は目が見えにくいので、音に敏感だ。
いろんな人たちの声、ずっと流れている音楽、あちこちから何かしら聞こえてくる音に、聞き耳を立てながらクスクス笑っている。
娘の嬉しそうな顔が見られただけで、来た甲斐があったなぁって思った。
時間が限られているので、よそ見をしないで、目的のお店へ直行する。
このブランドのお店、子どもたちが小さな頃から、よく利用してきた。
この店の商品は、そもそもお値段がお手頃で、色目もデザインも可愛らしい。
わりとシンプルで着せやすく、150のサイズまで揃っていることが、私の気に入っている理由だ。
店に到着すると、片っ端から娘に合いそうな洋服を探し始めた。
私より、夫が必死に。
私は店の中に入れない大きな車椅子の横で、夫が持ってきた服を娘に当てながら、首の開き具合や足の長さ、腰の緩さや生地の柔らかさをチェックする。
娘は130センチくらいの身長。
大人の女性なので、かなり腰回りが子どもよりもふっくらしている。
頭は大人並みに大きいが、肩幅は本当に狭い。
そして気管切開をしているので、首元が詰まった服は着られない。
大人の服ではぷかぷか過ぎるし、子ども服ではパツパツ過ぎる。
だから、ゆったりした感じの150のサイズの子ども服が、一番ぴったりとくる。
また、ずっとベッドに側臥位になっているので、背中や腰回りに飾りがあると当たって痛い。
だから、シンプルなデザインしか着せられない。
もちろん、スカートではなく、常にズボン。しかも総ゴム。柔らかい素材で、長めのもの。
上の服も、丈が長過ぎると胃瘻からの栄養が入れにくいので、程よい長さのものしか着せられない。
肩まわりが硬くて動かせないので、着せやすいようなストレッチの効いた素材が好ましい。
真夏でも七分袖で冷えすぎを防ぎたいし、真冬でもセーター類は着せない。
毎日じゃぶじゃぶ洗えて、清潔を保ちたいからだ。
そしてやっぱり、ちょっと今っぼく、おしゃれもさせたい。
迷いに迷って、結局、良さそうなものは全部買うことにした。
お会計を済ませると、タイムリミットをちょっと過ぎていた。
娘からは笑顔が消え、疲れが見え始めている。
せっかく来れたのだから、もう少し見て回りたいけど、長居は禁物。
欲を出したらダメダメ。
娘の誕生日プレゼントが買えたからミッション成功!って納得して、急いで帰ることにした。
帰宅して、買ってきた洋服を並べたら、全部ボーイズの品だった。
着せてみたら、裏起毛であったかく、サイズ感も柔らかさもバッチリだったので、娘の誕生日プレゼントは大成功だったと思う。
また娘を連れ出す機会を作りたい、と思ったし、まだ行けるぞ!っていう自信も少し取り戻した。
お出かけを娘が望んでいるのか、家でのんびりする方が彼女はいいのか、それはわからない。
出かけることは親の自己満足なのかもしれないし。
でも、この短い時間の外出が、私はとっても、とっても楽しかったから、娘も楽しかったんじゃないかな、と思う。
一日の終わりに、
「今日、私は娘に何をしてあげられだんだろう。」っていつも思う。
もっともっと、彼女の日々を彩あるものにしてやりたい、と切に願っている。
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