人生初のライブで、ぴょんぴょん跳ねる
8月、人生初のライブへ行った。
これまでコンサートとかライブとかに無縁だった私に、
「母さん、ファンモンのライブが名古屋と大阪のふたつとも取れたんやけど、どっちかに行きたい?」
と、息子がスマホを片手に誘ってくれたのだ。
「行きたい、行きたい、わー、行きたい!ぜひぜひ一緒に行ってください。」
と、拝みながら即答した。
ライブやコンサートに縁が無かった私の約半世紀。
熱烈なファンがいなかったとか、そもそも興味が無かったとかではなく、たまたまそのチャンスが無かっただけだった。
大学時代はバイトと部活動に追われ、就職したら仕事に追われ、結婚して子どもが生まれたら育児に追われた。
優先順位的に、私にとって「ライブに行く」のは、やりたいことの下の方だったのかもしれない。
けれども、ライブへの憧れは、ずっと持っていた。
20歳になったばかりの息子は、『FUNKY MONKEY BΛBY'S』の大ファンだ。
彼が、再結成したファンモンのライブに私を誘ってくれなければ、私は生涯ライブっていうものを経験せずにいたかもしれない。
ライブを知らずに育った(すっかり熟していますが…)残念な母を俺が引率してやろう、と思ってくれた息子の気持ちがありがたい。
もう、ライブのお金は母が全部出します、って気持ちだ。
*****
気合いを入れすぎた私たちは、当日、超早く会場に入った。
物販で嬉しそうに買い物する息子につられて、私もタオルを購入した。
なんとなく、「っぽい感じ」を装って、買ったばかりのタオルを首に巻く。
ライブ会場は4階まで客席があり、ステージから見たらきっと崖のようだろうな、と思った。
私たちは3階の最後列、一階を見下ろすと、命綱が欲しいくらいに高い。
しかも、めちゃくちゃステージから遠い。
でも不思議と、ステージ上のすべてがちゃんと見える。このホールを作った人、賢いな、と思った。
ライブってどんな雰囲気なのか、私でもノリノリになれるのか、おばちゃんも立ち上がるのか、まだ見ぬ光景に胸が高鳴る。
スッカラカンだった会場に、だんだん人が入ってきて、席がテトリスのように埋まってくる。
始まる直前には、ちゃんと2000人のファンで満席になった。
私の右隣には、私と同世代のご夫婦が来て、すぐ横には妻さんが座った。
さぁ、いよいよ開演!
大きな音やまぶしい光とともに幕が上がり、ファンモンの2人が登場すると、「どどどど、どわ~」みたいな大歓声が上がった。
最初の曲が流れると、一階席の人が全員立ち上がり、波のように前から順に客席の人たちが立ち上がった。
「え?こんなに最初から立つ感じ?」
という私の声は、息子には聞こえていないようだ。
私も慌てて立ち上がる。
片手を曲に会わせて突き出すようにしている人、手拍子の人、身体を揺らしている人、飛び跳ねている人、思わず人々の背中を観察してしまう。
私はどのテイストで行こうか。
そのうちに、私も曲に会わせて手を突き上げて、ぴょんぴょん跳んでいた。
なんだろう、このワクワクは!
楽しいぞ!
自然にノリノリになっている私を、どっかで冷静に見ている私が「やっとる!やっとる!」って爆笑していた。
隣の女性と、おもしろいくらいに自分の動きがリンクしてる。
ステージからの「3階席~!」っていう呼びかけに同時に背伸びして手を振ったり、バラードの曲だとちょっと腰掛けたりして…。
「ふふふ、おばちゃんの反応は、こうよね。」って、肩を組みたいくらいの親近感を、一方的に右隣に感じたりしていた。
息子は私よりは冷静な顔つきで、それでも手を突き出して歌いながら揺れていた。
「あんたの好きなファンモンだね、会えてよかったね。」と思いながら、あんまり彼を見ないようにしてあげようと思った。
日常を吹っ飛ばせるような貴重な時間の中にいながら、ちょっと家で留守番している家族のことも考えたりし始めた頃、最後の曲が来てしまった。
ラストの曲では、全員がタオルを回している。
私も、物販でゲットしたばかりのタオルをぐるぐる振り回して、大声で歌って、汗だくで思いっきり飛び跳ねた。
電車で帰っている間も、祭りの後の余韻でまだ自分が跳んでいるような気がした。
いい汗をかいて、化粧がすべて落ちている自覚もある。
「母さん、なかなか飛び跳ねとったな。」
「めちゃくちゃ楽しかったから、ついつい。ケツメイシとか、back numberとか、ヒゲダンとか、母さん好きなんだけど。また行きたいなぁ。」
には、彼は応えてくれず。
翌日、五十肩で困っている肩の調子が久しぶりに快調で、びっくりした。
動かすって大事!
ライブって最高!
ほんとに、ほんとに、良い時間だった。
ファンモン、ありがとう!
母と一緒に行ってくれた息子にも感謝!
あの夢の世界へ、いつかまた行きたいな。