長女4世代秋物語
リビングの窓から見える庭木が、すっかり秋の色になった。
お散歩したくなるような澄んだ青空。
朝からワクワクするのは孫が遊びに来る日だからだ。
孫は週に2、3回、パパが仕事でいない平日に我が家へ遊びに来ている。
一回目の離乳食が終わって、だいたい午前11時くらいにやってきて、午後からの二女の訪問リハビリがない日は夕方まで遊んでいく。
先日は、孫が来る日に合わせて母が我が家にやってきた。
母にとっては初のひ孫になる。
私にはすっかり慣れている孫も、あまり会ったことがない曽祖母の母には最初だけ泣き顔になった。これは夫がいる時も同じだ。孫が世界一ラブなおじいちゃんの夫に、とりあえず、孫は泣き顔をする。
ちょっと私は優越感。
それはさておき。
すぐにひいおばあちゃんにも慣れて、孫はニコニコしながらコロコロと暴れ出した。
子どもが大好きな私の母は、「まぁ、可愛い!まぁ、すごい!」と、ずっと、歓喜の声をあげて孫に話しかけ、孫の動きの実況中継をしている。
その様子を見ながら、よかったよかったと思って私もお茶を飲んでいた。
母は長女だ。
私も長女。
私の長女はもちろん長女で。
孫も長女。
つまり、4代の長女大集合みたいな状態になった。もちろん、我が家の大事な二女も一緒です。
だから何?なんだけど、この長女4代の集まりもなかなかおもしろいやん!って思っていた。
そんな時に、母が孫に「私は、ばあばよ。」って自分を『ばあば』と言い出した。
ちょ、ちょっと待って!
私でも『おばあちゃん』と自分で自分を表現しているのに、母が『ばあば』なんて、それはダメダメ。
「母さんに『ばあば』は可愛すぎるやん!私だって『ばあば』は私には恐れ多くて、遠慮して使ってないんだから、母さんは『大ばあちゃん』か『ひいばあちゃん』でいいやん!」
って言ったんだけど、母は譲らない。
自分を『ばあば』と言い切って、「ばあばだよ、ばあばだよ。」と孫に刷り込み始めている。
自分の孫たちには『おばあちゃん』と呼ばせてきたのに、ひ孫には『ばあば』と呼ばせちゃうなんて、なんかずるい!
でも長女は「そんなの、どうでもいいわ」みたいな顔で見てくるし、孫にはこれから曽祖母のことを、『大ばあちゃんだよ』って私がゆっくりと刷り込み直せばいいんだから、今だけはまぁいいかって自由に言わせておいた。
私は可愛らしい孫の全部をお取り置きしたくなって、孫のいろんな様子の動画をいつも必死になってスマホで撮る。
基本的に孫の動画は、孫がママに甘えているところを撮るように意識している。いつも撮る側の長女に、「ママと赤ちゃんの今しかない瞬間」を残してあげたいからだ。
うまく撮れているかが気になり、ちょっと見返してみたら、母の声がずっと入っていた。
ラジオみたい!
とにかく母はよく喋っている。ひ孫を見ているのがよほど嬉しいんだなぁって笑いが込み上げた。
「抱っこする?」って私の長女が母に赤ちゃんを渡そうとすると「落とすと怖いからちょっと待って!産んで返せないから。」と言って、母は慌ててソファに腰掛け、手を伸ばした。
「ひ孫ちゃん、長女ちゃんの赤ちゃんの時にそっくり。」って言いながら、赤ちゃんを抱きしめていた。
私の長女はおばあちゃんが大好きで、小さな頃は「おばあちゃんがいい!」って、母にいっぱい抱っこしてもらっていた。
その長女がママになり、赤ちゃんを曽祖母になった母に抱っこしてもらう日が来るなんて、私は胸がいっぱいになった。
長女4人+二女1人のまったりした時間が流れ、ひたすら話し続けた母は大満足しながら帰って行った。
長女が撮っていたスマホの動画も見せてもらったら、赤ちゃんをニコニコしながら見ている新米おばあちゃんと熟練おばあちゃんが映っていた。
あぁ、客観的に見たら私もしっかりおばあちゃんだな、って思った。
しかも、母以上に私も歓喜の声をあげながら「わぁ、上手!まぁ、可愛い!」と、ずっとしゃべっている。
自分が撮る側なら黙っているのだが、いったん気が緩むと、私もかなりはしゃいで、嬉しい感情が口から漏れ出しているようだ。
あらら、私も母と一緒、ラジオだわ!
長女4世代が揃う、またこんな機会もあると思う。
次は長女の幼い頃のアルバムでも引っ張り出してきて、新米ママや新米おばあちゃんだった頃の懐かしい話をみんなでしてみようかな。
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