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鯛も一人はうまからず

鍋が食べたいな。生姜のうんと効いたやつ。

突然だけどぼくは鍋が大好きだ。
きのこ鍋、ハクサイ鍋、キムチ鍋、芋煮風鍋、
ミルフィーユ鍋、ゴマ豆乳鍋、なんでもござれ。

鍋の良い所は野菜をモリモリ食べれる所。
野菜の旨味が融け込んだスープが格別で
ただでさえ美味しい野菜が無限に喰える。
野菜の中で特に好きな具材が大根と人参。
熱々で味の染みた彼らの頼もしさたるや
鍋料理の立役者と呼んでも過言ではない。

冬とは、お鍋を一番美味しく頂ける季節。
最高の季節の一つと言ってもいいだろう。

・・・

さて
いまでこそ鍋料理を絶賛しているぼくだけど
実は子どもの頃は鍋料理が好きではなかった。
野菜を美味しく感じられなかったからである。

(野菜なんかいらない。肉が食べたい!)

ぼくはとにかく、「肉」が食べたかったのだ。
朝、昼、晩と豚肉の生姜焼きが食べたかった。
野菜なんて変な味がするだけで美味しくない。
両親の手前、口にこそ出さなかったけれども
子どもの頃のぼくは常々そう思っていたのだ。

大人になれば野菜の美味しさが分かるかなと
内心思っていたのだけど、簡単には変わらず。
二十歳を超えたぼくの食生活は肉中心となる。
ちょうど筋トレにハマっていた時期でもあり
ぼくの身体は縦にも横にも肥大化しまくって
やがて立派なガチムチ体型に仕上がったのだ。

やがて嫁様と出会ったぼくは衝撃を受けた。
嫁様が作る鍋料理が
お店のモノより美味しかったからである。

「なにこれ!どうやって作ったの?美味すぎる」

信じられないくらい美味しい。
好きな人が作ってくれたという
利点を差し引いたとしても
尋常ではないほど美味しい。

どういうことだ、この女。
他の料理もさんざん美味いのばっかり作るけど
鍋料理までこんなに美味しく作っちゃうのか?

間違いなくぼくの食事観は
嫁様によって大幅に塗り変えられていた。

嫁様と付き合って半年も経たないうちに
胃袋はガッチリと掴まれてしまったようである。

・・・

そんなわけで嫁様の作る鍋料理が
最高の鍋料理だと信じてやまないぼくだが
やっぱり鍋の美味しさの最大のポイントは
いっしょに食べる誰かではなかろうか。
鯛も一人はうまからずとはよく言ったもの。

鍋を囲んで弾む会話と火照る体。
心と関係性までぽっかぽか。

美味しいは正義であり真理。
少しくらいの溝なんて埋めてくれるパワー。

ぼくは思うのです。
みんなで鍋を囲めば幸せだと。
あ、いや、幸せだから鍋を囲むのか?
うーん、どっちだ。今年の課題にしよう。


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