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夏なのでマジホラー(長い話)
最初にいっておくけど閲覧注意。
怖いのが苦手な人はお戻りください。
これから話すのは私の体験談。
もしかしたら全く怖くはないのかもだけど
怖い人には怖い心霊チックな体験談です。
あれは私が二十歳のころの話。
最初にいっておくけど私は超ビビりだ。
小さい時からいままでそれは変わらない。
しかしそのくせ「心霊写真」とか「恐怖映像」
「肝試し」なんてものが大好き。
一人じゃ見れないし、怖い所にも行けないが
友達といっしょなら最高に楽しめる。
なんだろう、いっしょに怖がっているのを見ると
安心できるというか、共感できるというか。
形容しがたい絆のようなものができるのが
好きなのかもしれない。
さて、そんな自分勝手な二十歳の私は
不可解な現象に悩んでいた。
不可解な現象とは俗にいう金縛りである。
「身体が寝ていて脳だけが起きている状態」
そういう状態になることは知識としては知っている。
「幽霊とかそういったものと関係はない」と
頭では理解していたつもりだった。
だが、毎日である。
世間一般では夏休みにあたるこの期間
私は毎晩、金縛りに遭っているのだ。
あまりにも金縛りに遭いすぎて
寝ていると『あ、来る』という感覚が
分かってしまうくらいになっていた。
まあここまでなら、体が疲れているんだろう
ということで片付けられる話なのだが
ここから不可解ポイントが二つもある。
①体の向きが180度回転している
金縛りから解けると、おや?と気付く。
頭の位置と足の位置が180度入れ替わっていた。
うなされている間に体が回転しているのか?
毎回このような回転があるわけではないが
結構な高確率で体が回転していた。
もしかしたら毎晩回転をしていて
180度どころか360度回転した日もあるのかも。
とにかく不可解な現象だ。意味がわからない。
②金縛り中の動けない私を誰かが触ってくる
こっちが本命。詳しく解説していこう。
金縛りに遭うと全身が動かせなくなってしまう。
いや、恐ろしいことに瞼(まぶた)は動かせる。
誰もいないであろう暗闇を見ることだけは可能。
なんだよこのいらない特典は。勘弁してくれよ。
(動けないなぁ、困ったなぁ)と思い悩む私の
足の指を、ふと誰かが触っている感覚がある。
(はっ?誰?何触ってるんだ??)
じとりと足指に冷や汗をかいた感覚が分かる。
その湿りはじめた足指をこねる感触が分かる。
(いやお前!誰だよ?)
金縛り中は口が動かせない。声が出せない。
だから心の声をありったけ大きくして
猛抗議をするんだけどまったく効果なし。
ヤツはお構いなしに足指を触りまくる。
薄目を開けると足元の布団がめくれている。
姿は見えないがヤツは布団を上げて
むき出しになった足を触っているんだ!
と確信する。
・・・やがていつの間にか眠りに落ちる。
気を失ったのかもしれないがどっちでもいい。
こんなことが毎晩続いた。
実害がないのですごく怖いこともないけど
得体の知れない嫌な感覚が確かにあった。
ところが金縛りに遭って5日もすると
(あれ?)と気付く。
今日は触ってくる場所が違う。
ヤツは足の甲を触っていたのだ。
翌日の晩には足首を触っていた。
翌日の晩には脛(すね)を触っていた。
翌日の晩には膝(ひざ)を触っていた。
翌日の晩には腿(もも)を触っていた…
ヤツが触る場所はどんどん上がっている。
さすがに鈍い私も気づいた。
あれ、これってヤバいやつなのでは?
しかし気付いたところでどうにもならない。
夜は必ずやってくる。
その日のヤツは脇腹を触ってきた。
これはハッキリいってくすぐったい。やめろ。
動けない私をいたぶるかのようにくすぐる。
あまりにもくすぐられていた私は
プチっと変なスイッチが入った。
(てめえ!ふっざけんなよ!)
キレやすかった二十歳の私は怒ったのだ。
怒っても金縛りで身体は動かない。
なんとか動かせるところはないのか?!
怒りにまかせてもがいていると
口がパクパクと動かせることに気付いた。
声はでないが怒りにまかせて出そうとする。
「うぅ・・・」「おお・・・」と
唸るようなかすり声くらいは出せた。
これじゃだめだ、ヤツに怒りをぶつけられない。
やがてもがき続けていた私の両手が
少しずつ動くようになってきた。これはいける。
すぐさまヤツの手を抑え込みにかかる。
布団の中にヤツの手があるので見えないが
確かに私の両手はヤツの両手を掴んでいた。
掴んだがいいが、あまり力が入らない。
力が入らなくて抵抗ができないが、気付いた。
こいつ、両手だけの存在だ。
どう触ってみても
ヤツは手首から上のものがなかった。
両手首だけがそこにあって、私を触っていた。
それが分かったからどうというのでもない。
結局その晩はヤツの手にくすぐられまくった。
次の日には首(くび)を触ってきた。
次の日にはついに・・・
ヤツは私の顔を触ってきた。
しかも私の口をこじ開けて
口内に指が入ってくるのが分かる。
マジかこいつ。
しかしタダで触らせるほど私は優しくない。
むしろこれを待っていた。
この日がヤツとの最終決戦の日。
連日連夜金縛りに遭ったおかげで
「体のどの部分が動かせるのか」というのが
感覚的にわかっていた私。
口はけっこう動かせるのだ。
口が動くということは、顎(あご)も動く。
顎が動くということは、噛みつける。
私はヤツの指をおもいっきり噛んでやった。
たしかに手を噛んでいる感触。肉と骨がある。
しかしヤツはひるまない。
まるで痛みなんて感じていないかのように
その指先は私の口内をまさぐりつづける。
これには私も怒りMAX。
(ふざけんなこらああああ!)と
指を食いちぎる勢いで噛みつき力を上げる。
おそらく普通の手だったら大出血モノだが
ヤツの手からはまったく出血を感じない。
こいつ、血がかよってないのか?
いやまあ霊的なものといえばそりゃそうか。
そんなこんなで必死の攻防を繰り広げた夜。
ヤツの手を口から追い出したところで
私の記憶は途絶えていた。
・・・次の夜は金縛りに遭わなかった。
私は勝ったのか?
ていうか、何に勝ったんだ?
ヤツは結局なんだったんだ?
疑問は残るけど実害はないんだしまあいい。
私の勝利。ヤツの負け。
霊的なものが生きている私に
勝てるわけねーだろ!バーカバーカ!
と勝利宣言しておしまい。めでたしめでたし。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
後日談。
それから数か月経ったのちに
またヤツの手が触ってくることになるんだけど
それはまた別の話。