自分からのSOS
銀の包装紙にくるまれたクリームチーズ。
チョコレートをふんだんに使ったケーキ。
ぶどう、いちご、レモンを閉じたゼリー。
焼き菓子、マドレーヌにちんすこうまで。
ふと、普段使っていない戸棚を見上げたら
ありとあらゆる私の大好きなお菓子が
これでもかってくらい詰まっていた。
あっ、しまった!
これ以前大量に買っておいたんだった!
どうしよう!?冷蔵庫にも入れないで…
チーズとか絶対にやばいじゃん!
半泣きでクリームチーズの銀紙を剥がすと
そこまで異臭はしない。セーフ?
恐る恐る口に含んでみるも嫌な味はしない。
これは・・・セーフだな。うん。
少しほっとしたところに後ろから声がかかる。
「あら次郎、なにやってるの?」
振り返ると母がいた。
事の顛末を話すと少し笑ってくれた。
よしよし、母にもこのお菓子をあげよう。
あらこれ美味しいね。とまた笑う母。
ん?
「なに?クリームチーズもあるの?」
どうやら母はクリームチーズをご所望だ。
戸棚の上部にあるので手を伸ばすと
積みあがったお菓子が崩れて床に落ちた。
床に散らばるお菓子を二人で拾い上げる。
んん?
そこに小さい男の子が入ってきた。
これは見つかったらヤバい!隠さなきゃ。
不思議がる男の子に母が優しく対応する。
男の子は母の頬にキスをして部屋を出る。
あれ、そういえば・・・
そこでようやく気付いた。
母はずいぶん前に亡くなっていたことに。
つまりこれは夢であると。
夢を見ている最中に
「あ、これ夢だ」と気付くことがある。
明晰夢(めいせきむ)と呼ばれるもので
慣れたらけっこう面白い現象だ。
ウチの母はまあ、亡くなってはいるが
こうして夢にちょくちょく現れるので
あんまり亡くなっている感じがしない。
ある時は夢の母に向かって
「あれ?生きてるよね?そうだよね」
と問いかけてお互い爆笑していた。
生きてるに決まっているだろうと。
だから母は生きていると思ってる。
まあ母の話はおいといて・・・
問題はお菓子の夢を見たことですよ。
これってきっと
私が私にSOSを出してるんだと思うんです。
なぜかってそりゃあ
健康診断で引っかかりまくりの私が
お菓子断ちをすることにしたんですね。
お菓子断ちといっても軽いもので
「自主的にお菓子を買わないようにする」
自分に課したルールはこれだけです。
だから、嫁が買ってくるお菓子はセーフ。
いっしょに美味しく食べています。
そんなこんなで一か月経ったころ
なんと体重が3㎏も落ちていました。
いくら夏場で痩せやすいとはいえ
お菓子を買わなくしただけでこれ?
どんだけ私はお菓子を食べていたんだ。
つまり、めちゃめちゃお菓子好きなのに
ものすごく我慢をしている私に対して
「弾幕(お菓子)薄いよ!何やってんの!」
と私から叱咤されているのではなかろうか。
げに恐ろしきは糖分。蜜の味。
うーん、そういうことなら
夢の中のお菓子をもっとバクバクと
食べておけばよかった。ちぇっ。
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