
すごい漫画
「これ、よしながふみ先生の新作」
先日、嫁様から漫画を手渡された。
なになに…『環と周(たまきとあまね)』
このマンガがすごい!2025第1位
ほほう、これは面白そうな…
私たちは漫画を貸し借りする夫婦。
面白い漫画は夫婦の共有財産となります。
最近めっきりと紙の本は買わなくなったけど
やっぱり貸し借りするなら紙の本なんですよね。
電子書籍にはない「関係性」がそこに現れます。
しかし私、嫁様からのお勧め本といえど
なんでも無条件に読むわけじゃありません。
時には「ぼくは読まないよ」と突っぱねます。
私にも拒否することだってあるのです。
しかし今回の本は即“読みたい!”となりました。
このマンガがすごい!2025第1位作品だから?
それもありますが、一番の理由は作者。
よしながふみ大先生の作品だからなのです。
こう見えても私は
よしながふみ大先生の作品のファンです。
『きのう何食べた?』は全巻読破してますし
一番好きな作品は『西洋骨董洋菓子店』です。
ちなみに西洋骨董洋菓子店と書いて
アンティークと読みます。まあ素晴らしいルビ。
そんなわけで読んでみました。『環と周』。
今回は漫画感想回なのです。
・・・
半分ほど読んだところで手を止めました。
ううん、やばいです。
泣いてしまいました。
最近涙腺が緩くなってきて参っています。
鼻から水まで滴り落ちてきやがりますよ。
嫁ちゃんさぁ、年末になんてもの読ませるんだ。
私が思うに
よしながふみ大先生の魅力はキャラクター。
各キャラ一人ひとりに魂が入っています。
一見、モブのような風貌のキャラでさえ
秘めたる行動力を感じてやまないのです。
そしてそのキャラ達は、人間より人間らしい。
美しく、汚らわしく、善でいて、悪そのもの。
人の表と裏、安心と危うさを内包しています。
とにかく目が離せないほど魅力的なのですよ。
考えてみてください。
魅力的な人というのは動くだけで絵になります。
そんな人たちが絡み合ってドラマを生むのです。
短く、無駄がなく、苛烈で、それでいて優しく。
そんなの心を揺さぶられるに決まっていますよ。
よしながふみ大先生は構成も神がかっています。
とにかく余計なコマが無い。
違和感なく物語に没頭できる幸せ。
もはや職人芸とさえ私は感じているのです。
しかし、、、重い。
読み応えがありすぎるのです。
感情が処理しきれず、手が止まるのです。
もちろん、これは良いことです。
中身ペラッペラのマンガとは対極の存在ですが
楽しさを得るためには相応の覚悟も要るのです。
・・・
「どう?どうだった?面白いでしょ?」
嫁様が鼻息荒く問うてきたので
私は言ってやりました。
ちょっと待て、と。
まだ半分しか読んでいない、と。
すごく面白いから絶対にネタバレするな、と。
「あーネタバレしたい!早く読んでよッ!」
嫁様は残念そうに巣に帰っていきました。
ちなみに巣とはベッドルームのことです。
こう見ると勝手気ままな嫁様に見えますが
これで実はかなり、優しくなったのですよ。
だって私が嫌いなネタバレをしないように
口をつぐむ努力をしてくれているんですよ。
これは以前の嫁様にはなかった自制力です。
人は成長するのです。立派になったね(涙)
そんなこんなで時間をかけ
二日かけてようやく本一冊を読み終えました。
ものすごい読後感。恐ろしいほどの密度です。
その後すぐ、嫁様と感想会を開催したのは
言うまでもありません。
とても熱の入った良い感想会となりました。
・・・
さて、漫画感想回と言っておきながら
全く漫画の感想を書いていませんね。
これは一体どういうことでしょう。
それはひとえに…
私が感想を書きたくないからです。
なんかね、少し書いてみたけど、ダメ。
どうしてもノイズにしかならないのです。
もうホント、読んで見て欲しい。
それしか言えません。
といったわけで、感想が無いのが感想。
珈琲次郎も泣いた『環と周』。
顔面周りに湿り気を帯びさせたい方は
ハンカチとティッシュを用意して
まとまった空き時間に読んでみて下さい。