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映画“返校”と小児科医

あらすじ
1962年、台湾では国民党による独裁政権のもと、市民に相互監視と密告が強制されていた。ある日、翠華高校の女子生徒ファンが放課後の教室で眠りから目を覚ますと、周囲から人の気配が消えていた。誰もいない校内をさまよう彼女は、政府によって禁じられた本を読む読書会メンバーで、密かにファンを慕う男子生徒ウェイに遭遇。一緒に学校からの脱出を図るが、どうしても外に出ることができない。やがて2人は、学校で起きた政府による迫害事件と、その原因をつくった密告者の悲しい真相にたどり着く。

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言葉を失い、自由を失い、重いトラウマを負った人間は生と死の狭間を彷徨い続ける。繰り返される悲劇によって永遠に苦しみ、救われることのない魂がほんのわずかでも救われるにはどうすればいいのか?苦しみの中で他者への優しさや施しの気持ちを表した時、彼らが一瞬だけ救われた表情をしたように見え、僕は少し救われました。それが彼らの救いになるのかはわかりませんが…。そんなことを感じた作品でした。

設定が曖昧で、夢なのか現実なのかもよくわからないまま鑑賞を続け、途中から設定のことはどうでもいいやとさえ思うような作品でした(少し観づらいです)。しかし、終盤にある人物が過去の出来事を思い出せなくなっていたことがわかった瞬間、作品世界が重大なトラウマを負った人の心象の世界を表しているのだと感じ、設定の不自然さや訳のわからない出来事の連続に納得が行きました(違うかもしれませんが・・)。混沌とした生き地獄のような世界、このような世界に生きているのは、現代にも沢山いらっしゃることを思えば、他人事とは思えない作品です。


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