映画『スリー・ビルボード』で、最も大切な構成ポイント
第90回アカデミー賞では、2部門(主演女優賞・助演男優賞)獲得。
2018年度キネマ旬報の外国語映画ベスト・テンで1位。
非常に評判の高い映画『スリー・ビルボード』を拝見しました。
あらすじ
最愛の娘が殺されて既に数ヶ月が経過したにもかかわらず、犯人が逮捕される気配がないことに憤るミルドレッドは、無能な警察に抗議するために町はずれに3枚の巨大な広告板を設置する。それを不快に思う警察とミルドレッドの間の諍いが、事態を予想外の方向に向かわせる。
(Filmarks映画情報)
https://filmarks.com/movies/75321
~~~以下、ネタバレ含みます~~~
少し前に、noteで『1917 命をかけた伝令』について、構成の「ミッド・ポイント」について解説を行いました。
「ミッド・ポイント」とは、物語のちょうど中盤で起こる出来事のことです。
序盤から主人公は、何らかの目的を達成するために頑張りを続けます。
しかし、中盤のミッド・ポイントの時点で、
・思いよらぬ挫折
・危機的な状況
・ひとまずの大成功
……などが起こります。
『1917 命をかけた伝令』でも、バディムービーのように進んでいたスコフィールドとブレイクに劇的な出来事が訪れます。
あっけなく、ブレイクが命を落としてしまうのです。
スコフィールドは劇中で、これまで頼りなく描かれていました。危機的状況です。
しかしドラマとしては、バディムービーではなく、このミッド・ポイントから、スコフィールド自身の成長物語になっていきます。
『スリー・ビルボード』では、警察署長の自殺がミッド・ポイントになりますね。
序盤から中盤までは、周りから理解を得られない主人公ミルドレッドの苛立ちが描かれます。
娘が悲惨な最期を遂げたのにも関わらず、周囲が協力的ではない。あまつさえ、嫌がらせも受けたりもします。
娘を殺したのは一体誰なのか?
警察の対応もお粗末なので、ミルドレッドが多少粗暴な振る舞いをしても、わりと感情移入ができます。
「怒れるママ」ものというジャンルもありますし。
しかし、警察署長の自殺が転機になります。
僕は途中まで、この署長が真の犯人なのでは? と邪推までしていたので、この自殺は衝撃的でした。
またミルドレッドも、署長の自殺により、警察や世間から更に厳しいバッシングを受けます。しかし、「目には目を歯には歯を」の精神で、やり返していきます。
ついには広告板を燃やされた代償に、警察署に放火までしてしまいます。
今までは、「母親としてのドラマ」がありました。
多少粗暴なところがあっても、心情は理解できます。
ところがミッド・ポイントを境に、「母親としてのドラマ」が「果てしない憎悪の連鎖のドラマ」になります。
誰が正しく、誰が悪いのか?
しばらくして、ミルドレッドに自殺した署長からの手紙が届けられます。
「警察でも、どうしようもない事件は存在する。憎しみで生きないで欲しい。警察に抗議する広告板の費用に、5000ドルを贈る」と書かれてありました。
人間、誰もが良い面も悪い面もあります。
お互い理解しながら、何とか生きていくしかありません。
映画では、「希望」が最後に描かれています。
脚本的にも素晴らしいので、何度でも見返したくなる映画でした!
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