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「推し」と「ごひいき」

この前行った寄席にまたいきたいと思っている。
日本の伝統芸能って、「一日いてもいい」というのがすごい。

あまりに人気の演者さんが出るときとか、特別公演意外は入れ替え制にはならない。落語を中心に、奇術とか粋曲とかいろんな出し物が入れ代わり立ち代わり出る。昼から夜までずーっと公演をしていて、それで席料3000円だ。

3000円というと、クラシックのコンサートはB席くらいの価格なのだけど、クラシックはがんばっても2時間。映画や芝居も2時間みたいに、現代の興行はどうしても「1公演につきいくら」みたいなのが決まっている。

ところが寄席にはそういう決まりがない。がんばれば昼から夜まで一日いて3000円。相撲も確かそうだったと思う。序の口から横綱まで、みーんなみて
いくら、とか。(相撲はちょっと高そうだけど)。

昔、二本立ての映画館というのがあって、ちょっとだけ前に流行した映画を入れ替えもなくずっと流しているというのがあったけど、あれににているのかもしれない。演芸場はずっと演芸をやっていて、ふらっといくのもふらっとかえるのも自由。そんな気楽さがほしい。

現代の推しはどんなに推したくても「定価」でしか推せない。AKBのCDを大量に購入してチャートを上げる、なんて手法はアクドいと言われた。毎週「推し」の応援にでかける人を知っているけど、「推し」のためにはるばるヨーロッパまで行くらしい。その旅行代をそのまま「推し」にあげればいいのに、と思ったけど、そういうものでもないらしい。

そう。そこで江戸時代のごひいきを思いついたのだ。

ぼくはクラウドファンディングのとき、「生活保護の人が応援でクラファンをする」ときいて、慌ててクラファンを止めたのだけど、お金がない人が出す5000円と、お金がある人が出す5000円では、まったく意味合いが違う可能性もある。

だからといって、お金のない人を「ただ」で講座に入れていたら、ぼくの持ち出しになってしまうし、受講者さんに不公平感が出る。

江戸時代の「芸にお金を払う」という意識を復活させようとしたら、人それぞれ出せるお金と、芸に見合うと考える対価がちがうことが問題だと思った。

現代に「ごひいきさん」という精神を復活させるために、「ごひいきさん」には余計にお金を出してもらうことで、それを補おうというのが、ぼくの最初の構想だった。

もちろん、「ごひいき」になったからと言って、お金の面意外に何かいいところがあるわけではない。ぼくは毎日パソコンに向かって、いい短歌はこれ、いい短歌はこれ、と呟いているだけだ。ぼくは他に芸がないから、それに価値を見出すのはむしろ受講者の方ということになる。

でもぼくの活動が、現代に「伝統短歌のタネ」を撒く作業になっていると感じる人が、余計にお金を出してくれれば、ぼくの持ち出しにはならずに「どうしてもその月にお金がない人」を講座に入れる理由づけになる。

ぼくは一生懸命芸を磨くけど、価値を感じる人は余計に出してほしい。伝統芸能を維持する「ごひいき」というプライオリティがあれば結構お金を出しやすいのではないか。

やがて、伝統的な短歌の良さをしらない若い世代の子たちへ、また、思い出すのが難しくて困っているおじいちゃんおばあちゃんへ、などと「伝統短歌の良さ」を広げていければ最高ではないか、という妄想も広がる。

それに賛同してくれる人が増えれば、大規模な布教活動もできるだろう。

はじまりの朝の静かな窓
ゼロになるからだ充たされてゆけ
海の彼方にはもう探さない
輝くものはいつもここに
わたしのなかに見つけられたから

詩:覚和歌子「いつ何度でも」

映画『千と千尋の神隠し』の主題歌「いつ何度でも」が感動的なのは、いろいろ世界を探しつくして、最後は自分のなかに輝くものをみつけるからだと思っている。

ぼくはずっと短歌を通じて、誰にとっても「『あなたのなかの表現』が一番輝いています。」と伝えたいのだ。それが「選ばかり」「賞の話題ばかり」の現代短歌への「批評」になるだろう。

多くの人に「ごひいき」になってもらいたいと思っている。結局、書く癖が抜けないので、「ごひいきシステム」の解説と称して、noteを書いてしまった。

こんな私ですが、ひとつどうぞごひいきに。


さて、11月からの短歌講座の募集です。

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西巻 真
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