レコードから流れる温かい音色と、涙 エッセイ#55
みなさんは、レコードプレイヤーで音楽を聴いたことがありますか?
昨日、夫がストレージ(倉庫)に保管したままになっていた、大量のレコードとレコードプレーヤーが、我が家にやってきました。
夫(アメリカ人)が、私と日本で出逢う前に、アメリカで愛用していたレコード&レコードプレイヤーです。
おばあちゃん子だった夫。
彼が大好きだったおばあちゃんの趣味が、レコードでJazzを聴くことだったそう。
小さい頃から、おばちゃんとレコードで音楽を聴いて育ったからか、
レコードの音に慣れ親しんでいた彼は、大人になってからも、レコードプレイヤーで音楽を聴き続けていたのです。
しばらく日本に住んだり、アメリカに移住してからも仕事が忙しかった彼が、
突然、ふと思い立ったように、倉庫に保管されていたレコードプレイヤーとレコードたちを思い出して、
昨日、我が家に届いたのです。
彼が嬉しそうに、大量のレコードを整理したり、真空管アンプを設置したりしている間、私はお昼寝をしていました。
すると、夢の中でビル・エバンス(有名なジャズピアニスト)の曲が信じられないほど美しい音色で聞こえてきて、
深みのある温かい音色に、宙に浮いた体が包まれているような不思議な感覚にまどろんでいると、
夫の声で目覚めました。
「この音、どう?」
私が夢の中で聴いていた曲は、彼が設置し終わったレコードプレイヤーから流れている音楽でした。
綺麗に設置されたアンプと背の高いスピーカー、整頓されたレコードに驚いていると、
「いつか、レコードで聴こうね。」と、
3,4年前に日本で一緒に購入したレコードに、夫が針を落としました。
ゆっくりと回りだすレコード、柔らかく光る真空管アンプ(トップ画像)、ジリジリと針がレコードをなぞる音、そして流れ出す温かい音色。
私には聴いたことのないサウンド。
深みがあって、奥行きがあって、何百回、いや何千回と聴いたことのある曲が、
まるで別物のように、生き物のように体全体に響き渡る。
今まで気づかなかった音が、たくさん聴こえてくる。
MDプレイヤーに始まり、音楽とはデジタルな付き合いをしてきた私。
日本ではミュージシャンをしていたので、自分が音楽を奏でること、生の音に触れることはもちろん生活の一部ではあったけれど、
なんともアナログな、レコードを通じて流れてくるサウンドとの出逢いは、衝撃的なものでした。
厚みのある音色から伝わるミュージシャンたちの息づかいや、魂が、私の芯まで響いて響いて、
押し寄せる感動と、
ポロポロとこぼれ落ちる涙。
そして、私の中のドット(点)が繋がってゆく。
私と夫を出逢わせてくれた音楽、そしてジャズ。
(夫がたまたま立ち寄ったジャズバーで、知人と私が演奏していました。それが彼との出逢い。)
私の母にジャズで胎教をしていた粋な祖母。
夫をジャズ好きに育ててくれた、いまは亡き彼のおばあちゃんの存在と、
目の前にある彼女が愛用したレコードたち。
愛おしいほどに味わい深く、優しく、温かいアナログなレコード。
それぞれの温かさが、とてつもなく心に沁みて、
それが涙となって私の目から溢れるのでした。
さまざまなものが温かさで繋がっている、偶然のようで必然。
そんなことを感じた一日でした。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました😊
Have a good one!