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【積読書記録】壇蜜日記

昔断念した本がある。
書店で手に取って、そっと本棚に戻した本がある。
そして、10年経った今、その本が読めるところまで自分の精神が成熟したのかもしれない。

今回の書は壇蜜著「壇蜜日記」だ。
絶賛私の”推し”の壇蜜の日々が短い文章で綴られたエッセイだ。

当時の私にも壇蜜ブームの時期があり、この本を手に取ったが、この短い文章の何が面白いのかがよくわからなかった。
ただ日々の感想を書いているだけで、特に深まりがないように見えた。また、少しオチがついているものも、自分の中にどのように収まりをつければ良いのかがわからず、モヤモヤしていた。つまり、どこが面白いのかがわからなかったのだ。私もまだまだ青かった。

壇蜜がこの小説を書いていた頃、当時は33歳だったようだ。
いわゆる「熟女」枠なような気がしていたし、とてもお姉さんに見えていたが、実はそんなにお姉さんでもなかった。自分が30を超えたからそのように思うのかもしれないが。
そして、当時の壇蜜の年齢に近づくごとに、当時の壇蜜が書いていることの面白さを感じることができるようになってきた。

日々の生活の話やスーパーの話は、グラビア界隈を賑わすセクシーお姉さんが普通にドンキに出没して買い物をしている事実に驚き、親近感をもつ。
数日に一度出てくる猫や熱帯業の話題は、連載のように読むと面白い。

日によって文章量はまちまちだが、短い日だとこのようなものがある。

チキンカツ弁当を食べ終わった後でソースの袋を見つける。味付きだと信じていたかった。

「壇蜜日記」

この、つい共感してしまう感じがたまらないのだ。大爆笑ではないが、ほくそ笑んでしまう感じがたまらない。行間を読まざるを得ないこの感じが、非常にハイコンテクストだ。

本人の生活はあくまで庶民的にしているが、演者として出演する時には自分のキャラクターを分かった上で、あえてセクシーなお姉さんを演じている。そのプロ根性も好きだ。そして、プロセクシーお姉さんが、日常では庶民的に地味に生きているというギャップがまたそそるのだ。プロセクシーお姉さんなのに「こちら」側の人間だと思うと、私も頑張ろうと思うことができる。

とはいえ、大相撲の話が出てくることを鑑みると、やっぱり33歳にしては熟女みがある。33歳にしては、趣味が成熟しすぎているような気がするのは私だけだろうか。もしかしたら、そこはかとない未亡人感は、彼女の特殊な職業遍歴だけでなく、そのような趣味からも醸し出されるものなのかもしれない。

思いっきり腹を抱えて笑うような内容ではないものの、ほんのり優しい気持ちになることができるエッセイだった。


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