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ラクロスに必要なフィジカル 2

(最終更新日:2023年7月21日)

どうも2022年&2023年ラクロス男子日本代表のS&Cコーチをしていました、佐々木です。

今回もラクロス選手、特に男子プレーヤー、に必要なフィジカルを書いていければと思います。前回のポストでは”どれだけ質の高いスプリントを続けられるか?”、つまりスプリント断続的な持久力である"Repeated Sprintability"が試合に勝つ鍵を握っていると書きました。

今回はこの能力と同じぐらい大事な要素である、試合に向けてのリカバリーのステータスがいかに重要性かを書いていきたいと思います。


リカバリーと疲労

リカバリーとは?

リカバリーの定義としてはKellmann M et al.(2017)の定義を使います。リカバリーとは”様々な要素を含んだ(身体的、心理的)時間の経過ととも起こる回復プロセスである。”としています。さらに”個人のリカバリーステタス(つまり、当人の生物学、心理学的、そして社会的バランス)が崩れるのは、身体的&精神的な活動がより激しさを増し、何らかの外的、もしくは内的要因、つまり、だるさ/倦怠感という疲労によって現れるからだ。”としています。つまり、リカバリーとは競技スポーツをすることで崩れた心身の状態をもとに直していくプロセスと言えます。

疲労とは?

 Mujika I et.al.(2013)は疲労を”身体的、そして精神的な負担が大きくなり身体的・精神的パフォーマンスに低下が生じた状態”としています。

なぜリカバリーステータスを知ることが大事なのか?トレーニングや試合との関係は?

Mujika I et.al.(2013)はアスリートのリカバリーニーズを理解せずに、そのままにしていると疲労が蓄積され、トレーニングに耐えられなくなり、(思った強度でトレーニングができないので)パフォーマンスの低下に結果としてなるだけでなく、怪我のリスクや知覚能力(判断能力など)やムードの低下(イライラする、集中できない、睡眠が取れないなど)が起こります。これはアスリートをオーバートレーニングの状態にしてしまいます。

ここで大事なのは”思ったトレーニング強度でトレーニングできない”ということです。自分はきつい練習もするべきだと思います。なのでどれだけきつい練習をしてもいいと思います。ただしそれにリカバリーがなければいけません。日本代表の選手達に常に伝えていたことは”パフォーマンスの向上=トレーニングxリカバリー”という公式です。ここで注意したいのはパフォーマンスの向上はトレーニングとリカバリーの掛け算であると言うことです。つまり、リカバリーが全くなければパフォーマンスの向上は0になり今までの努力が水の泡にるだけでなく、リカバリーが全くなく疲労が蓄積した状態でトレーニングし続けたときはマイナスに掛け算でマイナスになっていくことになります。

しっかりと考えられたきついトレーニングは大事です。勘違いしてほしくないのは、ちょっときついぐらいで”オーバートレーニングになる!!”と思うことです。オーバートレーニング症候群は数か月、数年パフォーマンス向上しないことを言いますし、その前にOverreachingという現象が起きます。このOverreachingとオーバートレーニングを勘違いしている選手や専門家が多いので注意が必要です。

オーバートレーニング症候群に関してもっと知りたい方はこちら。

日々の計画だった練習と同じぐらい戦略的に考えられたリカバリーは大事になってきます。相手は世界です。打倒ホーデノショーニーを掲げていましたが彼らはすごくデカかったです。デカくて、上手くて、そして速い。そんな選手を相手にするので質の高い練習を何度もしていく必要があります。そして、その質の高い練習というものはリカバリーによって担保されます。

また試合にはスターター陣を中心にリザーブも含め全選手が出来るだけフレッシュで準備ができている状態で臨みたいと言うのが本音だと思います。(準備ができている=Readiness/Preparednessなどと言われていて、また別の機会に書ければと思います。)

2023年にはこの考えがうまくいき稼働率100%を達成しました。そのやり方に関してはこちらを参考にしてください。(有料です。)

ラクロスにおけるリカバリーの難しさ

日本代表の活動中にすごく気にしていたのは、どれだけ選手達が疲労しているのか?出来るだけ数値も取り、選手達やコーチ陣、そしてもう1人のS&Cコーチの秋山さんと話をしてウォームアップやコンディショニングをどうするべきか?適切な修正はどんなものか?などを自分なりに考えていました。

練習量の多さ


まず難しいのはラクロス日本男子代表に所属する多くの選手達が自分達のクラブチームでの練習も参加していることです。これによって週末が4部練になります。(この時点で日本代表に残るためには肉体的にも、精神的にもタフでないといけないということがわかります。そして、社会人であれば月曜日からは仕事があります。家庭のある選手は家庭との両立もしないいけません。)一回の練習はおよそ3時間。これも非常に長いです。スポーツサイエンスを少しかじった人であれば、”これは非効率だ!”というと思います。自分もそう思いました。ただ”長い練習が非効率だ”と言えるのは大抵の場合、自分達のクラブハウスがあり、練習フィールドが確保されているごく一部の”恵まれたチーム”にいる人の言葉なんだなと気づきました。クラブハウスがあれば、必ずロッカーはあります。そして、練習場が目の前にあれば午前に45−60分ほどの激しい練習を2回して、食事を取った後に午後にも同じように2回練習できるかもしれません。でも、ラクロスではそれは不可能です。まず日本代表には専用ピッチがない。なので借りないといけない。そして、やるべきことはたくさんある。となると出来るだけ長く借りて、やるべきことを詰め込まないといけない。正直選手達は本当に頑張ったと思います。

試合間隔の短さ

国際レベルでのラクロスの試合は本当に試合の間隔が短い、というか無いに等しいです。前回のポストでも書きましたが、欧州インドアラクロスチャンピオンシップでは8日間に7試合、今回のWorld GamesではSIXESの試合を5日間で5試合です。このフォーマットはフィールドスポーツでは本当に稀です。どれだけ役に立ったかはわかりませんが、どうやってリカバリーの時にどうすることがいいかを伝えました。サッカーという文脈ですが、基本的に(ヨーロッパの)プロ・代表レベルの試合に出場した際は次の試合に完璧にリカバリーした状態で出場するために、最低でも4日間かかります。もちろんこの4日間はリカバリーに必要なことを全てしたという前提があります。

では、どうすればリカバリーをすればいいのか?それはこちらの記事に書いてあります。


最後に(次回予告)

どんなリカバリーを頑張っても、質のいいトレーニングもしないいけない。では、どんなフィジカルトレーニングをしたらいいのか?次回はそれを書きたいと思います。

では、また次回

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