【23】 自己充足的予言
自己充足的予言(self-fulfilling prophecy)という言葉を聞いたことはありますか?
自己充足的予言とは、未来について予測あるいは予言をすると、その予測が実際に現実となってしまう現象のことです。
自己充足的予言について、コーチングの理論に基づいて具体的に考えてみたいと思います。
たとえば、「今日は良い日になる」と思って1日を過ごすと、様々な出来事のうち「悪いこと」にはスコトマができ、「良いこと」だけがRASを通り抜けて認識されます。
また、「今日は良い日だ」という信念を証明するように、「良いこと」を実現する行動を無意識にとります。
その結果、自分の「予言」通り、実際に良い1日を過ごすことになります。
もちろん、「今日は悪い日になる」と思っても、ちゃんと「悪い日」を実現することになります。
これが自己充足的予言です。朝のテレビ番組の占いであっても、「今日は運の良い日だ」「今日の運勢は最下位だ」といった結果を信じれば、ちゃんとそのような1日になります。
これは、信念と現実を一致させようとする創造的無意識の働きによるものです。創造的無意識は、リアリティ、自己イメージ、信念を維持しようとします。そのため、リアリティや自己イメージを証明するような情報だけを取り入れようとするのです。
たとえば、外出しようとしたときに玄関で鍵が見当たらない場面を思い浮かべてみてください。その場面で「鍵がない!」と強く思ってしまうと、ちゃんと鍵が見えなくなります。
もちろん、意識としては鍵を見つけたいと思っているのですが、無意識では「鍵がない」という信念を証明しようとします。
鍵が見つかってしまえば、「鍵がない」という信念と現実が矛盾し、認知的不協和の状態になるからです。
創造的無意識は認知的不協和を解消するために、鍵をスコトマにします。その結果、目の前に鍵があったとしても、認識できなくなってしまうのです。こんな場面では「鍵は近くにある」といったセルフ・トークをしてみるのが良いかもしれません。
私たちが経験している世界は、良くも悪くも私たちの信念や「予言」に強く影響をうけたものです。どっちみち予言の影響をうけた世界を生きるのですから、自分の望む予言をして楽しく幸せな日々を過ごした方がよいでしょう。
「人生はそんな都合よく思い通りになんてならない」という信念を持っていれば、その信念通りの世界を実現するように創造的無意識が働きます。
「世界は自分の思い通りにならない」と思って生きるか、「自分の信念や思考が世界に強い影響を与えている」と思って生きるか。
それも自分がどのような信念を持つかという選択の問題なのです。
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