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聴く喜びで世界を変える エール株式会社
1、「働く楽しさがつながる世界」を作り出すために存在している会社
聴かれた体験は、 聴きたい気持ちを生み出します
ぜひエールに聴かせてください
聴くの連鎖が、多くの組織に広がっていくために
中古車販売大手ビッグモーターの損害保険金水増し請求事件では、車をわざと傷付けるなどして保険金を水増し請求していたことなどが問題となった。
その背景には違法な働かせ方(パワーハラスメント)や、上司の気に障っただけで「明日から地方支店に転勤!」など不当な人事が横行していたことが指摘されている。
経営陣からノルマ達成の圧力があったり、街の公共物である街路樹を枯らしたりするいびつな企業風土があったとも報じられている。
このニュースに触れた人たちの中にも、仕事上の人間関係が「命令する者」と「従属する者」といった一方通行な形になりがちだったり、仕事が辛いものだと感じていた方々は、「程度の差こそあれ我が社でも」と思われた方もいるかもしれない。
数値目標を達成することだけを強いられる組織のあり方は、組織の構成員に「不信感」と「やらされ感」を生む。
そうした働き方・働かされ方の対極にある姿としてエール株式会社(以下エール)は、
「働くことが楽しくなる世界」
を作り出すことを社のビジョンに掲げている。
そのビジョンを達成するやり方は極めてユニークだ。
エールは、「聴くこと」を通じて「働く楽しさがつながる世界」を創りだそうというのだ。
誤解を恐れず端的に言ってしまおう。
そのやり方は「聴くだけ」なのである。
エールが擁する2,700人余りのサポーターに、話を聴いてもらうことなのだ。
この背後には、
「聴かれた体験は、聴きたい気持ちを生み出す」というエール独自の信念がある。
なにか「愛された体験は、愛する気持ちを生み出す」とでも言いたげな、ふわふわした印象を与えるかもしれない。
こんな反論も聞こえてくるかもしれない。
「話を聴いてもらっただけで、働くことが楽しくなるなんて、そんな簡単な話じゃないでしょ!」と。
だが、それを信じるのがエールの独自性である。
「信じるって、あなた! 宗教法人じゃあるまいし。利益の最大化を最善の価値とする株式会社において、それはないでしょ」
と思われたかもしれない。しかし、しかしである。
「理」の前に「信」を置く。
これこそが、他の会社とエールを隔てる根本的な違いなのである。
一般の会社なら、話を聞いた後に、上司から目標設定の数値が下賜され、部下はそれを恭しく拝受するしかない。
そして、目標達成に必要な心構えや注意点などが指示され、親切な上司であれば達成の助けとなる有益なアドバイスなどもするかもしれない。
しかし、エールはそれをしない。
ただ「聴くだけ」である。
人を仕事に駆り立てる方法論が、目標の共有や、目標達成の手順、やり方のアドバイスといった教育的指導ではないのだ。
ただ「聴くだけ」なのである。
エールは、「聴いてもらった体験は、聴きたい気持ちを生み出す」
と信じている。
こうして、聴いてもらった体験を持つ人が、今度は聴く側に回ることをエールでは「聴く連鎖」と呼んでいる。
「聴く連鎖」がいくつも連なり、その先に立ち現れるのが
「聴き合う組織」である。
その具体的なやり方としてエールは、企業が上司と部下とで行う業務上の1対1の面談「1on1 を社外リソースに任せてみませんか」と提案する。
2、「聴き合う組織を作る」ことをミッションとする会社
聴かないと何が起こり、聴くと何が起こるのか
「働く楽しさがつながる世界」
を作り出すことをビジョンに掲げるエールが、社のミッションとして謳っているのが
「聴き合う組織を作る」ことである。
企業にお勤めの方は、1年間の目標達成度を確認するためや、業績評価を聞くために、面談を経験されている方も多いと思う。
しかし、そのほとんどは、上司が部下へ、評価や判断を伝えるための場だったり、目標達成度をチェックし、目標が達成されていない場合には叱責を受けたりする場になってはいないだろうか。
エールは、そうした企業内での個別面談(1on1)を外注してもらうことで、その組織の中に「聴かれる」体験を提供し、社内に「聴く連鎖」を生み出し、「聴き合う組織」を作り出そうとしているのだ。
せっかく上司と部下が、聴く聴かれる体験をする場が定期的に用意され、制度化されているというのに、その面談で、上司からの指示や命令、場合によっては叱責、人格否定が行われることで、部下の自主性や自発性が削がれ、仕事にやらされ感が生じてしまうケースがあることを、あまりにもったいないと考えているのだ。
1on1という制度がいけないのではなく、1on1のやり方がいけないのではないか?
そう考えたエールは、面談で目標設定、目標達成といった「理」を扱うのはなく、部下の状況や考え、思いを聴く「信」を置くことが重要だと考えた。
「理」を「信」に置き換えるというと、白いシャツを青いシャツに着替えるかのようなカジュアルな印象を持たれるかもしれない。
あにはからんや、これは組織文化のパラダイム転換なのである。
この転換を担うのがサポーターたちである。
この1on1を代行する2,700名のサポーターが旨とするのが
「Without Judgement」である。
部下の仕事ぶりをジャッジして、教育的指導を行ったり、やり方を修正したりするのが上司の仕事だとすれば、サポーターが行うのは、一切のジャッジを行わず、「ただ聴くだけ」なのである。
「聴かれた組織」に何が起きたのか、同社ウェブサイトから体験者の声を拾ってみよう(社名など固有名詞は割愛しています)。
「企業と個人が良い関係性を築き始められているし、カルチャーができ上がってきていると感じています。また、取り組みを継続する中で、社内では上司の方から『メンバーの行動が変わってきている』と声をもらうことが増え、積極的に関わる社員も増えるといった成果も出始めてきています」
一方で、面談を行う上司が聴かれる体験をした企業からは、こんな声も聞かれるようになった。
「ミドルマネジャーと呼ばれる部長クラスが、「1on1」を通じてメンバーの多様性に触れ、受け入れ、強い組織づくりについて真剣に考え、自主的に行動を取るようになっていきました。これはまさに私が目指していた「組織開発」の形の一つでしたね」
上司と部下がそれぞれに聴かれる体験をすることで、自己理解を深め、他者の話を聴く側に回る心の準備ができ、自発的に行動するようになる。
これが、「ただ聴くだけ」で組織に起きた変化である。
3、エールが作り出した世界
聴いただけで関係性が変わり、人が主体的になる
まだ、信じられない方も少なくないだろう。
無理もない。これまで数多の企業が、社員の職能開発、自発性の発現、組織開発を目的に、ありとあらゆる施策を実行してきた。
そのために行った集合研修、合宿研修、座学だけでなく体験型研修にどれほどの時間とコストを費やして組織開発を行ったきたことか。
それが、「ただ聴くだけ」で実現したと聞いても、納得しがたい気持ちが湧き上がるのも理解できる。
「聴いただけで関係性が変わり、人が主体的になる」ために、エールが何をしたのか、別な角度からスポットを当ててみたい。サポーターの在り方という視点である。
企業から発注を受けて1on1を代行する2,700名のサポーター集団。
エールが誇る「聴くことのプロ」とは、一体何者なのか?
その多くは副業としてサポーターを請け負う有職の人々である。
それぞれに仕事を持ち、組織がうまく回らないとか、部下が指示待ちだとか、普通の悩みを持つごく普通の人々である。
サポーターたちの最大の特徴は、
「聴き合うことで、働くのが楽しいと感じる組織を作りたい」
というエールの理念を聞きつけ、「面白そうだ!」とか、「そうか、聴くのか!」とか、「聴いた先に起こるであろうポジティブな変化に心惹かれる」と想像を膨らませ、勝手に集まってきた人たちだということだ。
集まった時点でワクワクし、ここには何か面白いものがありそうだ、とか聴くことの先にまだ見ぬ金の鉱脈があるに違いない、などと勝手に思い込んで集まって来ているのだ。
その「志」を持った上で、ある種のトレーニングを受ける義務がある。
「ジャッジせずに人の話を聴く」というトレーニングである。
他にもslack上にさまざまに展開されたコミュニティで、多種多様な勉強会が企画されている。
エールの現状をサポーターと共有する説明会。
聴くことにプラスになる読書会。
プレーヤー役、サポーター役、オブザーバー役に分かれてセッションを体験するトライアングルセッション。
プレーヤー・サポーターの聴く聴かれるを生放送に乗せる「ラジオ聴く連鎖」。
サポーター同士を出会わせる縁結びの会。
サポーター体験を語り合い共有するシェア会。
などなど。
サポーターになった後からも、サポーターとしての在り方や技術を磨く場が設定されているのだ。
エールがクライアントに提供する1on1セッションは、音声のみで行われる。しかもオンラインである。相手がどんな人なのか分からないまま話を聴くのである。
私たちは、高度情報化社会を生きている。情報は梅雨時の雨のように降り注いでくるし、その情報を受け取るかどうかも含めて、1日中判断をし続けている。
そう、たった一瞬であろうとも判断を怠れば、情報の洪水に流されてしまうから。
そんな社会を生きているのだから「ジャッジせずに聴く」ようになるには、ちょっとしたコツと経験が必要なのだ。
そうしたトレーニングの場を経て、好奇心の赴くままに集いし人々は、ジャッジせずに人の話を聴ける「エールサポーター」になっていくのだ。
そして、サポーターは話を聴かせていただけることに感謝と喜びを感じるようになっていく。
そうした体験を積み重ねるうちに「聴く喜び」を感じるようになり、エールという沼にはまっていくのである。
4、詰まるところ、聴くとは何か
聴くとは、人を対等な人間として受け入れ言葉ではなくメッセージを受け取ること
「聴くとは何か?」を考える上で、有用な書籍がある。
エール株式会社取締役の篠田真貴子氏が監訳した『LISTEN』日本語版(ケイト・マーフィ著、日経BP刊)は、聴くことの諸相を描くことで、聴くことの本質に迫った本である。
18章からなる大著で、第1章は「聞くことは忘れられている」から始まる。
話すことに比べて、聞くことはおまけのように扱われているという現状を指摘する。
第2章では「私たちは、きちんと話を聞いてもらえた経験が少ない」と、いきなり核心を突いたかと思えば、第8章では「ビッグヒットは消費者の声を聴くことから生まれる」とマーケティングのセオリーを今更ながらに説くのだ。
「聞く」と「聴く」とが使い分けられていることにも注目してほしい。
本書の中でも特にサポーターの心を掴むのが第12章「アドバイスをしようと思って聞くと失敗する」である。
見出しを追ってみよう。
「聞き上手は人を惹きつける」と、良いサポーターになれば人を惹きつけることができるのだと坂の上の雲を指差したかと思えば、「ずらす対応は人と繋がるチャンスを逃す」とリスクの指摘も忘れない。
「ヘタな聞き手はずらす対応を、優れた聞き手は受けとめる対応をしている」とストライクゾーンを示し、「自分はすごいとみられたいだけの質問に気をつけよう」と豪速球を放るのもいいが、すごいピッチャーだと思われたくて投げているとスタンドに運ばれるよ!と警句を送る。
「アドバイスをしだす人は、きちんと相手の話を聞いていない」と避けるべき投球とその理由を明かす。
ならば理想のピッチングとは? に答えるように「いい質問のウラには救ってあげよう、助言してあげようがない」と、そもそも投手としての在り方が違うのだと述べ、「シンプルな質問は、本人も気付いていない答えを浮かびあがらせる」、「耳を傾けると相手の問題解決能力も上がる」と十重二十重に聴くことの効用を説く。そして「その人が変わっていく過程に耳を傾ける以上の愛があるでしょうか?」とトドメを刺すのである。
聴くとは相手の成長を見守ることであり、聴くことは愛なのだと看破する。
ここでも、「理」ではなく「信」なのである。
聴く(LESTEN)というのは、聞こえてくる(HEAR)声を聞くのではなく、相手の声に耳を澄ますことであり、相手の現状を良いとか悪いとかの評価抜きに受けとめることなのだ。いや受け取ると表現した方が正確かもしれない。
アドバイスは、一見親切な行動のように見えるが、実は経験のある者(上)から経験のない者(下)への情報伝達で、遠回しな指示と言えるかもしれない。
確かに、アドバイスとは相手の現状に不足があるから行われるのであって、「その調子で頑張ろう」という現状肯定ではなく、足りない点を指摘する相手の現状への否定なのである。
したがって、アドバイスした方は「ベストなソリューションを教示してるのに、実行してないの?」的な上から目線で見下ろしているやもしれぬのである。
個人的な経験値にすぎないが、アドバイスは実行されないケースが多いと思う。薦めた本が必ずしも読まれないように。
エールサポーターは、言葉によって行われるジャッジの代わりに、言葉の奥にあるメッセージを受け取ることで愛を伝えているのである。
5、人と人との関係性を良くして世界を今より一歩でも素敵な場所にする会社
問題は、人を人として扱わないこと、人を拒絶するところから始まる
受け入れる(聴く)ことで
人が作る社会、人の集合体である世界を、今とは違った場所にする試み
人と人との関係のスタート地点について意識したことはあるだろうか?
組織というのは多かれ少なかれヒエラルキーを形成しており、指示は上位下達という形で降りてくる。
残念なことに、その形式自体に主体性を削ぐ要素が内包されていて、指示を受け取った側にモチベーションが掻き立てられるという状態を生み出しにくい。
その構造はそのままであっても、エールではジャッジはせずに、相手の現状を必ず肯定する(受け取る)というフラットなスタート地点に立てば、相手の思考や主体性を活性化していけると考えた。
組織の心理的安全性を維持しようとする努力とも共通する考え方である。
サポーターは第三者であり上司ではない。
確かに、上司とは出発点が違うと言えば違うのだが、その上司すらも対等な立場で「聴いてもらう」体験をすることで、自分の主体性や責任感がこれまで以上に立ち昇ってくる体験をするのである。
「部下のとコミュニケーションは対等な地点から出発しましょう」などと説明されるよりはるかに説得力に富んだ形で、フラットな組織が構成員を自発的にすることを理解するのである。
こうして、相手を否定(ジャッジ)しないコミュニケーションは、組織内に「聴かれる喜び」と「聴く喜び」を生み出し、「聴く連鎖」が広がっていくことで組織文化を変えていく。
社員を、利益を上げるために雇ったコストとみたり、営業成績の芳しくない社員を売り上げ拡大の障壁と見るのではなく、自分と同じ、仕事や人間関係に悩みを抱える一人の人間として見ることは、社員のウェルビーイングを上昇させ、最終的に会社が掲げたミッション・ビジョンに自分のビジョンを重ね合わせ、生き生きと楽しく働くようになるであろう。
相手の行動や業績・能力に焦点を当てるのではなく、相手が感じていること悩んでいること、つまり相手の心を占めている関心事に関心を示すように聴くことを、エールでは「縁側に並んで座って沈む夕陽を見る」と詩的に表現する。
人を見るから、その人への評価・判断という見方が動き出してしまう。
ならば、人そのものではなしに、その人の関心事に関心を寄せ、耳を済ませてみようという意味だ。相手の関心は、自分への評価ではなしに美しい夕陽にあることを理解して共感を示しながら聴いてみようということだ。
社員をコストではなく人として扱う。
成績の上がらない社員を「ダメなやつ」とジャッジするのではなく、まず受けとめることで、会社のみならず、会社が存続を許されている社会全体や、それを包摂するものとしての世界を、今より素晴らしい場所にしていくことができるとエールは信じているのである。
同じことを信じるエールサポーターの一人として、私はこの会社を推すことをいとわない。
聴き方を変えることで、人と人との関係の作り方は変えられる。
それが変えられるなら、きっと世界は変えられる。
エールはその起点にいると確信している。