万病の妙薬
体を温め、気力や免疫力アップ「万病の妙薬」
ショウガ
(生姜) Ginger
○旬=夏◎効能=万病 (風邪、胃腸病、心臓病、高血圧、うつ病、肥満……)に効く
熱帯アジア原産の、ショウガ科の多年草。日本には稲作と共に弥生時代に渡来した。
学名Zingiber officinaleのofficinaleは「薬用になる」という意味。私たちが用いている医療用漢方薬の70%以上にショウガが用いられていて、「ショウガなしには漢方は成り立たない」といわれるほどだ。
漢方の原典というべき『傷寒論』には「生姜は体内のすべての臓器を活性化させ、体を温める。代謝を調節し、体内の余分な体液(水毒)を取り除き、駆風(ガスを排出)し、消化を助ける…」とあるし、『本草綱目』(李時珍)には「生姜は百邪(万病)を防御する」とある。
英語のGingerをある辞書で引いたところ、「[名詞]ショウガ、意気、軒島、元気。【動詞】ショウガで味付けする、活気づける、鼓舞する……」とある。例文として「There is no ginger in him.」という文章が掲載されており、「彼には気骨がない」と訳してある。言葉はその国の歴史や文化、習慣が入ってできることを考えると、イギリス人もショウガの効能を知っていたことになる。
6世紀にペストが流行し、ロンドン市民の1/3もが次々と死んだ時「ショウガを食べていた人は死ななかった」ことがわかり、当時の王、ヘンリー8世が、ロンドン市長に命じて「市民はショウガをしっかり食べるように」と奨励して作らせたのが、今もイギリスで食べられているショウガパン (ginger bread)である。
ショウガの薬効は、辛味成分のジンゲロン、ジンゲロール、ショウガオールや、芳香成分のジンギベロールなどの総合作用により醸し出されている。
寿司には必ずショウガが添えてあるが、ジンゲロンやショウガオールには強力な殺菌作用があり、寿司ネタの魚介類による食あたりを防ぐ意味がある。また、寿司を食べすぎても案外胃腸を壊さないのは、ジンゲロンの健胃作用によるものと考えられる。
その他、ショウガの効能として、発汗、解熱、去痰、保温作用の鎮痛作用、抗掻痒作用の鎮咳、鎮吐作用、だ液、胃液、胆汁の分泌亢進作用(消化促進)、抗潰瘍作用で腸管内輸送促進作用(消化不良、ガス=腹部膨満時に効く) 強心作用、血圧低下(高血圧に対して)作用、血圧上昇(低血圧に対して)作用、血栓予防、うつ病の改善、めまいの予防・改善などが、科学的に確かめられている。
その他、アポトーシス (ガン細胞の自殺)を促すことも明らかにされている。
ショウガには「意気、軒昂、元気」の意味があることは前述したが、科学的にも、副腎髄質を刺激して全身の細胞の新陳代謝を亢進させ、特に大脳や延髄の呼吸・循環中枢の働きを促して全身の機能を高め、気力、体力、免疫力を高める、という、まさに心身の万病の妙薬なのである。
食べすぎて、高脂血症、高血糖=糖尿病、高尿酸血症(痛風)、高塩分血症 = 高血圧、高体重(肥満)などの生活習慣病≒メタボリック・シンドロームで苦しんでいる日本人に対して「朝食をショウガ紅茶2杯、昼はそば、夕食は好きなものを何でも可」というダイエット法を提唱して、『プチ断食ダイエット」という本を出したところ、それを読んだ読者の方から「半年で3Kgも痩せた」「血圧が下がった」「肌がキレイになった」「頑固な便秘が治った」「尿の出がよくなってむくみがとれた」……等々、喜びのお手紙を多数いただいた。
ぜひ、後述の「ショウガ紅茶」を1日2杯以上飲む健康法をお試しいただきたい。
【民間療法】
むくみ・肥満・冷え・風邪をはじめ、あらゆる体の不調に……ショウガ紅茶を1日2~4杯飲む。
魚や肉の中毒……ショウガのおろし汁を、おちょこ1杯飲む。
風邪・冷え性・貧血・低血圧・胃腸病……親指大のショウガをすりおろし、急須か茶こしに入れて熱湯を注いで濾す。これを湯飲み茶碗7~8分目の量まで入れ、適量のハチミツか黒砂糖を入れたショウガ湯を、1日2~3回(2~3杯)飲む。
痛風・声がれ・精力低下・糖尿病・婦人病……ショウガ湯にすりおろしたレンコン約10gを入れ、1日2~3回飲む。
胃腸病(下痢・便秘・腹痛・腹鳴・吐き気など)・冷え性・風邪・気管支炎……梅醤番茶を1日1~2回飲む。
痛み・腹水・喘息・むくみ……ショウガ湿布をする。痛みがひどい時には、 ショウガ湿布を1日2~3回行う(痛みが軽い時には1回でよい)。この鍋に作ったショウガ湯は温めなおして2~3回は使用できる。なお、このショウガ湿布をする前後1時間ほどは、入浴するとヒリヒリするので、注意が必要だ。
この湿布は前述の痛み・腹水・喘息・むくみの他、こり、婦人病、膀胱炎、胃腸病、気管支炎や肺炎、咳など、あらゆる病気に対して著しい効果を発揮する。ガンによる痛みでモルヒネも効かない患者にこのショウガ湿布を施すと、鎮痛効果のおかげでスヤスヤと眠ってしまう、ということもよく経験するほどだ。
また、アトピー性皮膚炎にこの湿布をすると、はじめはしみるものの、2~3日
すると治癒が早くなる(ただし、かゆみや症状がひどくなるようなら中止すること)。
手にアトピー症状が出ている場合には、40〜42℃程度にしたショウガ湯の中に5分ほど手をつけても効果がある。