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動物園の中の動物になる
仕事を辞めてからどれくらい経ったか、すっかり忘れてしまった。
最近気づいたことなのだが、人間、意外と働かなくても生きていける。しかも東京都近郊(23区内は無理だ)で、一人暮らしで。
私にその手順を教えてくれた人とはdiscordで知り合った。とあるオンラインゲームのコミュニティサーバーだ。どんなネットコミュニティもそうなのだろうけれど、大手のそこは登録メンバーだけでも千人を超えていて、アク
ささやきいのりえいしょうねんじる
元同居人が携わっている成果物がセールになっていたので、購入した。
生きるのが不器用な人だったからか、なんだかあの人はどのプロジェクトでもワリを食っている気がする。
職人かたぎな性質だから、それでも本人は構わないのかもしれない。損な人だなと思う。でも、そんなところも含めて好きだった私がいるのだ、振り返れば。
世渡りが上手い人ならたぶん好きにならなかった。不器用でまっすぐで、でも「自分はこざかしい
かつて「運命の女(ファム・ファタール)」だったひと
僕は初老のイラストレーターだ。ゲーム会社勤務を経て、四十を過ぎて退職し、副業として請けていた絵の仕事を本業とした。
裕福とはいえないが、日々の暮らしに困るわけでもない。毎日朝七時には起床し、ストレッチ。そして朝食を作ってインスタにアップし、ゆっくりと食べる。一人暮らしなのですべてが自分のペースだ。今日は和食にした。生卵に納豆、もちろんねぎをいれる。昨夜漬けておいたきゅうりの浅漬け。それから土鍋で炊
正しい呼称について悩む子供だった僕へ
僕は友達のお母さんをどう呼んでいいのか、ということに戸惑ってしまう子供だった。
偏屈だったのか、理屈っぽいのか、あるいは馬鹿なのか。つまりはちょっと世渡りが下手だ、三十路過ぎた今もそうだ。むしろ俗にいうコミュ障だ。
何も考えずにすむ、簡単な呼び名があるのはわかっているのだ。他の友達みたいに『〇〇くんのお母さん』『〇〇くんのおばさん』『〇〇くんのおばちゃん』と無邪気に呼べばいい。何も考えずに。
で
ウツに無理解な彼氏bot
「躁うつ病の彼女」に困り果てていた彼が、最近見違えたようにぴかぴかしている。ぴかぴか。そう、つき物が落ちるというのはこういうことなのだな。先々月の飲み会で彼はひどく疲れていて、倦んでいた。膿んでいたともいえる。
「何かいいことあったの、最近」
ランチから戻ってきた彼に声をかけると、彼はちょっと目をきょろきょろさせ周囲をうかがってから、小声で答えた。
「例のメンヘラの彼女と別れたんで」
「メンヘラ