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自作詩をもそもそ上げていきます。 時系列ごっちゃ。
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詩「ロード・ショウ」

詩「ロード・ショウ」

伸ばしきった前髪を
掻き分け覗く日常は
全てが甘く色褪せて
白熱灯のようにちらつく

じぃ、ち、ちちち。ち。

やさしい夜と地続きの、
朝の冷えた空気が好きで、
甘露に肺を浸して、息を、
確かめながら、瞬き、暗転。

フィルムの継ぎ目の雑音を
指の腹でこじ開けてみれば
それが傷跡だったとも知らず
頭の中で、赤が垂れる

つぅ、た、ととと、ぱた。

耳を伝うは点滴の管、
脳幹を突く、祈りのことば

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詩「喘鳴」

詩「喘鳴」

 午前二時、息苦しさに目が覚める。
 月明かりで満たされた、青い青い夜、
 大好きな音楽が脳を焼き焦がして、
 美しい思い出だけを狂ったように再生し続けるせいで、
 僕の喉はくしゃくしゃに、
 丸めた紙屑を飲み込んだみたいに、ざらついて、痛む。
 痛む。

 白い錠剤を、生温かい、水道水で、飲み下す。頭が痛い。頭が、重い。僕はいつからこんな人間になってしまったのだろうか。そう思い起こそうとしても、

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詩「深海無線」

詩「深海無線」

 つう、つつう、つう。 

 ハロー、ハロー。
 こちら、しがない人間もどき。
 聞こえますか。
 僕はいま、成層圏二万マイル、
 酸素と窒素の、海底にいます。

 つうつ、つう、つう。

  辺りはいちめん、夜のいろ。
 タイヤの砂利を踏む音が、いたずらに鼓動を早め、
 粘ついた吐息が戸惑いがちに、空へと昇る。  
 ええ、ここは、地獄です。 
 風も光も届かない、地獄の底でございます。 

 

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