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「読書酒紀」 11回目 放送後記 テーマ:病気
※番組が終わるたびに、パーソナリティが番組の感想を語り、番組中に取り上げた本のリンクと紹介をしていきます。
11回目リンク
どうも、読書酒紀第11回話し手を務めました瀬山です。
最近、積読が以前の倍近いペースで増え始めています…。なんで?
このラジオを継続していくことで読書量が増え積読が消化されていくはず、という私の完璧な計画には既に崩壊の足音が迫っております。
毎回割と雑にトークテーマを決めて語るという本ラジオの形式は、パーソナリティ2人の「ちょっとずつで良いから勉強を継続しなければ」という強迫観念の表れです。(少し話がずれますが、「強迫観念」って言葉、私は結構好きです。大抵の人はこれに生かされていると思っています。)
個人的には、毎月知らないジャンルの書籍に触れることができて、大変気に入っている形式です。
ただ今回、設定したテーマに引き付けようとするあまり、自身の記憶の中から関連する記述を探し過ぎてしまうことがあるなぁ、と反省しました。
というのも、本編で触れた吉村萬壱氏による小説『ボラード病』がコロナ禍のようなパンデミックを扱った作品ではなく、東日本大震災に深く関連付いた作品だったためです。
編集しながら合間に読み返してみたら、記憶していたイメージと内容が全然違っていて目玉が飛び出ました。
本編では堂々と読み違っていましたね、恥ずかしいヤツ!!
如何に雑多に語る根拠薄めラジオだとしても、取り扱う本の内容はある程度正確に伝えねば、と猛省しております。
気を取り直して、今回のトークテーマは「病気」でした。今までのテーマと比べてかなり卑近でありながら、語ることがタブー視されているとても興味深いテーマだったように思います。
パーソナリティの2人は20代半ばということもあり、友人との会話の中で「病気」が共通の話題として挙がることはほぼない、ものでした。コロナ禍までは。
本編でも触れていますが、私自身はあまりコロナ禍について積極的に語りたいとは思いません。私のような専門性に欠ける人間が語ってしまえば、コロナに突飛な記号を付け足すことになるか、逆にコロナそのものを記号として矮小化(コロナ=ただの風邪のように)することに繋がってしまうと考えているからです。
それでも「病気」というテーマを設定した以上は、コロナに触れないというのも適切な態度とは思えず、選書に苦労した覚えがあります。
昨今の病気、特にコロナに関連した書籍は豊富かつ混沌としています。本ラジオがこれから関連書籍を読もうとしている方の一助になれば幸いです。
今回紹介した3冊の本
①『隠喩としての病い エイズとその隠喩』スーザン・ソンタグ 著 富山太佳夫 訳
本ラジオ二度目の登場となったスーザン・ソンタグ。1年経って振り返ってみても残った爪痕が多い。
結核・梅毒・癌・エイズといった時代を代表するような病には様々な隠喩が付随する。それらは時として病とその患者を神話化し、単なる病としての枠を超え、絶対的な死刑宣告・生きる活力の欠落(あるいは暴走)といったスティグマとして機能し始める。
著者自身が癌を発病したからこそ書けたであろう、エネルギッシュな記号論的病の分解。
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②『疫病と日本文学』日比嘉高 編
「日本書紀」以来、日本文学は感染症とどのように向き合ってきたのかを記す論考集。
個人的には論考間に入るコラムの1つ「疫病と日本語」が興味深かった。
コロナ禍において登場した既存の語彙に「対面」や「オンライン」が接続されることによって登場した新しい語彙に関連したコラムである。
「コロナ禍」という言葉自体も含め、我々は多くの新語を獲得したように思えるが、既に「オンライン飲み会」などの語彙は使われなくなって久しい。
本書を読むことで、生活と言語、ひいては文学がどのように相関しているのかを考えるきっかけになるだろう。
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③『教養としての「病」』佐藤優 片岡浩史 著
老境に至って病を患う。凡庸な表現だが、現代医学はその病を様々な手法で乗り越えてきた。ただ、素人目には魔法の如き医療行為は患者と治療者との断絶を生む。漫然と治療を受け続けることに不安を感じる患者もいることだろう。
本書は患者と医者の関係性としての1つの模範解答を示している。人生哲学や自分の身体に対しての保守性が固まり切る前に読んでみてほしい一冊。
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*『読書酒紀』番組URL
https://open.spotify.com/show/36X5GlyHQcAavgvrcUvIf2
*お便りフォーム(いただいたお便りは必ず番組で紹介します)
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