図書館本 借りるのをやめて買った本 ①をやっと読める。文庫版『ヒトごろし 上巻』783P 京極夏彦
積ん読になっていた本をやっと読み出しました。
図書館蔵書のハードカバー版のデカさ、重さに恐れをなして、文庫で購入していたものです。
主に通勤電車でのちょこちょこ読みで、上巻を読み終えました。
上巻だけで783Pもあります。(下巻は解説入れて798P)
京極夏彦さんの新選組、面白いです。
ここの土方歳三は、「人を殺したい、斬りたい」」というを嗜好を心に秘めています。
絞殺は汚らしいので刀で斬りたい、けれど武士ではないから刀を持てない。
武士であれば、合法的に刀で人を殺せる。
「人を殺したいなぁ。良く切れる刀で斬りたいなぁ。欲しいなぁ、刀。いいなぁ、武士。」こんな感じの思考回路です。
刀がないから、頭の中で近藤道場の面々を殺すことをシミュレーションしていたりもします。
「原田ならこうやって、永倉ならこうして、近藤もいける、井上や近藤の父、近藤の妻子なら簡単に…、沖田、山南はちょっとやっかい…」な風に。
馴染みの人間とか、恨みとかは関係無しです。
この本の中では、沖田も「殺し好き」です。
幼少期に虫を殺すのから始まって、犬、猫殺しを繰り返し、刀を持てる環境であったので、人も斬ります。(幼いうちから)
笑顔でサクッと切ったり、突いたりしてる感じです。
この沖田の描かれ方が、司馬遼太郎・著『燃えよ剣』での、天使のような沖田とは全然違っていて面白いです。
『燃えよ剣』でも沖田の笑顔が度々出てきましたが、「くすっ」とか「うふふ」とか「かわいらしい唇」など、句読点の代わりにハートマークが付きそうな、愛らしい笑顔がいっぱいでした。
こちらの『ヒトごろし』でも沖田の笑顔がよく出てきますが、「薄ら笑い」とか「卑屈な笑み」などで表現され、「微笑んでいる」と書かれていても、もう天使の笑顔ではありません。
土方も胸糞悪がって、草履を投げ付けたりしてます。
土方の人殺し願望を嗅ぎ取り、同じ嗜好の者同士のように絡んでくる沖田を土方は徹底的に嫌っています。
「殺してやりたい。膾(なます)のように切り刻んでやりたい。」
「薄汚い鼠(沖田のこと)の顔を見ると吐き気がする。」
「見るだに嫌な顔だ。飢えた溝鼠(どぶねずみ)のような、卑しげな顔つきだ」等々…
溝鼠扱いです。
土方は、人を殺したい自分のことも、殺し好きの沖田のことも「人外」であるとは認識していますが、「沖田に同類扱いされるのはムカつくーっ!!あいつと俺は絶対に違う!認めんぞーっ!大っ嫌いだーっ!」な感じです。
そんな土方が機会を得て、念願の刀を持つようになりました。
折角、帯刀できる立場になったので、ここは合法的に行きたいと考えます。
大嫌いな「サイコパス辻斬り沖田」とは一線を画することを望んでいます。
(冷静に手順を踏んで殺す方がサイコパスでしたっけ…)
はたから見れば同じ一派である、芹沢鴨を殺すに至るまでがお見事。
「お上からの命令で」という流れになるように、焦らず、急がず、着実に、相手の悪評が高まるのを待ち、度を越えた悪行を重ねるのに任せ、同類扱いにならないように距離を保ち、芹沢も期待を裏切らない男、いくらでも大問題行動を起こし続け…
(沖田は、その間もサクサクと、突いたり斬ったり、首をはねたりと呼吸するように人を殺してます。あ、ここで初めて『HUNTER×HUNTER』のヒソカを思い出しましたっ)
ようやく「内密に始末せよ」との命を賜ったのです。
「歳三、Good Job!」と思ってしまいましたね。
暗殺スケジュールを立てるのは楽しかったでしょう。
「原田は庭で槍持って待機な、山南は玄関からな、で、沖田が雨戸破って障子開けたら、俺が芹沢やっちゃうから。近藤さんは本当に寝といてね。」
本文まとめるとこんな感じ?
血しぶきいっぱいの話でしたが、面白かったのが、真選組名物とも言えるあの、袖口が ”だんだら” に染め抜かれた浅葱色の羽織への酷評…
歳三、心の声…
「みっともない。酷過ぎる。」
「まるで飴売りか山猫回しのよう――」
「間抜けな浅葱色の羽織を着て無邪気に笑っている近藤は莫迦にしか見えなかった。」等々…
芹沢の「公務の時だけ着ればいいだろう。」の言葉に対しても、歳三は心の中で「公務にこそ向かないだろう」と思っていたり…
(パジャマにするしかないやん…)
ネットで画像検索しましたよ。" 浅葱色のだんだら羽織 "
「あ、これな…」
袖のだんだら部分がちょっと、ガッチャマンを連想しましたね。
あと、土方はやたらと人のことを心の中で「莫迦(ばか)」と言ってるのも可笑しかったです。
私は、歴史物に疎く、漫画・アニメ『銀魂』の「真選組」からの「新選組」なので、この『ヒトごろし』に出てくる沖田は、『銀魂』の沖田さん(こっち、さん付け?)で脳内再生されています。ピッタリ合います。
近藤さんも、『銀魂』の近藤さんになっちゃいます。
上巻は、芹沢鴨暗殺後、めっちゃ関西弁で腹黒そうな山崎が、監察として新選組に入隊したいと土方に接近してきたところで終わっています。
下巻、どうなっていくんでしょうね。
楽しみです。