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図書館本50冊目『月ぬ走いや、馬ぬ走い』(ちちぬはいや、うんまぬはい)豊永 浩平 150P

新聞の本紹介で見たときには、勝手に分厚い本を想像していましたが、図書館で見つけてみると、「あ、うっす…(薄い)、表紙がなんかポップ…」な見た目の本でした。

作家さんは、2003年那覇市生まれ。

”  新たな戦争の時代に現れた圧倒的才能!21歳の現役大学生、衝撃のデビュー作 ”
と帯で紹介されています。

14の語りが、リレーのように進んで行きます。

語るのは…
母親の目前で赤子の首を絞めた日本兵、
孤島で自殺艇の出撃を待ちながら終戦を迎えた特攻隊隊長、
「ハメ撮り」動画が流出している女子中学生、
米国に渡った戦争花嫁、
仲間達とガマで肝試しをした高校生、
ベトナムに向かう米兵相手に体を売り、刹那的な快楽を求め合う「ぼく」、
などなど…

重量的に軽くて、見た目も軽めな本ですが、中身はずっしりと重いです。

戦時中、終戦直後、だけが「戦争」ではなく、この約80年間ずっと続いてるのだと思い知らされ、胸がギュッとなります。

実際にあること、あったことなんでしょう。

この14の語りが単発の記事だったら、獄中の活動家の語りなど、私が読むことのない話ですが、次々と語りが連なっているので、語りが変わる度、文体が変わる度、「あ、変わった!次はなんの話?誰の話?いつの話?」とか思いながら一気に読み進んでいました。


「この子はあの語りの人と繋がってる…?」
「この人は、あの子と繋がってるよね…?」
「あぁ、だからそうなのか…?」

と、正解かどうかは解らないけれど、語り手や語りに登場する人物たちを、勝手に関連させて読めるようになっていて、読み終わった直後(いやいや、読んでる最中から)自然といろんなページを読み返していました。
パラパラ読み返す度に「あっ!」と何かに気付く感じ…
見落としている所がいろいろありそうで、これで読み終えていいのか、と気になって、なかなか本を閉じられません。

最後の小学生女子の語り、素敵な締めくくりに希望が感じられ、目頭が熱くなってしまいました…
こんなにジワーッとくるとは…

『クレーの天使』(パウル・クレー/谷川俊太郎)
を見てみようと思います…






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