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図書館本48冊目『残月記』小田 雅久仁 381P

去年、新聞広告でこの本を目にして「読みたい!」とメモっていたところ、数年前の「読みたい本リスト」帳を開いたら、すでにこのタイトルがメモされていた…
忘れてた…

帯には「この三編を読んだ後では、もうこれまでのように漫然と月を見上げることはできない。」と書かれている。

私はこの本を読む直前に、たまたま見事な満月を見ていたので、「ほっほー、これは次の満月を見るのが楽しみだぁ」などと思っていた。

実際のところ、元々仕事帰りは月を見上げながら歩いていたのだけれど、もう、釘付け状態だ。

アンディ・ウィアー『火星の人』の映画を見て小説を読んだあと、火星を見つけてはドキドキしていた感じを思い出す。
「あんな所に独りぼっちで…」とか。


3編とも月に絡んだ物語で、読み始めた当初は「全部、最後には繋がるのか?」と思っていたけれど、そうではなかった。
全部つながってたら、その世界の月はえらいことだ…


最初の『そして月がふりかえる』
これは、テレビの「世にも奇妙な物語」のBGMが浮かんでしょうがなかった。
「ええーっ、やだ、これからどうなっちゃうのよ~」
♪ちゃりらりらんっ、ちゃりらりらんっ、ちゃりらりらんらん、ちゃりらりらーん♪


2つ目の『月景石』
月面から地球を眺めたような光景が浮かび上がっている「風景石」。
それに導かれたのか、月世界と地球世界を行ったり来たりしてしまう主人公。

月世界がえらいことになってるやん、と思ってたら地球世界もえらいことになっていた。

「風景石」というのが気になって、そういうものが実際にあるのかとネットで検索してみたら、いろいろ出てきてびっくりした。

Amazonで、『不思議で美しい石の図鑑』というのが「一時的に在庫切れ」となっていて、この『月景石』を読んだ人達が次々と購入していったのではないかと思っている。

(私は思わず中古本をカートに入れたよ…)


最後、待ってました『残月記』

21世紀、「月昂」と言う感染症に世界中が脅かされていた。
そんな中、日本では西日本大震災が起こっていたり、独裁者による一党独裁政権が誕生していたりする。
帯に書かれていた「ディストピア」とはこのことか、と。

主人公の宇野冬芽(うの とうが)も月昂に感染し、捕獲され、専用収容所に隔離。
2度と外には出られない。死を待つだけの監禁状態。

冬芽、そこからの剣闘士ライフ、暗殺指令、逃亡…
まさかグラディエーターになるとは…
木彫りも得意とは…(ここでは円空を検索した。確か両面宿儺像を彫った人、ハルカスでやってたよなぁ、とか思いながら。見に行ってへんけど…)

そして、ここにも月世界が…

私は物語をよく理解できていないまま、ダイナミックな展開にグイグイと引っ張られて行くのみ。
月鯨、素敵過ぎる…

本を読む前に見た満月が、読書中、常に頭の中に浮かんでる状態。
しかも読んでる最中インフルエンザにもかかり、月昂の初期症状はインフルエンザに似ているということもあって、私自身が物語に近付き過ぎている、と変な感じの読書時間になっていた。

インフルエンザのおかげで、朦朧とした家読み読書を楽しめたというか…


『残月記』には年表が要る、と思った。
著者の方は、きっと年表を独自に作られただろうと思う。
あるならば、巻末に載せて欲しかった…
こんな感じで…

  • 2020年9月――宇野冬芽 北大阪市に生まれる

  • 2027年12月――下條拓政権誕生

  • 2028年3月――西日本大震災発生

  • 2048年3月――宇野冬芽 月昂感染者として捕獲、隔離される…


私は昨年12月の満月が、この本と重なってますます忘れられない。
明るい木星と火星を引き連れて、雲までも虹色に輝かせていた。

翌日には、同じ月とは思えない、ただの丸くて明るい月になっていたけれど、月に照らされて、しっかりと地面に映った自分の影がちょっと怖かった…

これからは「残月」――月齢26日前後の細く鋭い月――も気になるな。





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